資金繰りが良くならないのはなぜなのか?中小企業資金繰り対策のポイントもご紹介

企業経営において経営者の役割は多岐にわたりますが、そのひとつが資金調達です。いくら売り上げをあげていても、資金繰りがうまくいっていないと信用に関わる結果になりかねません。経営者の悩みのひとつでもある資金繰りの重要性や対策のポイントなどをまとめて紹介します。(2022年8月29日更新)
※経営者の悩みについて詳しくは「社員には言えない経営者の悩み、その解決のポイントとは」 をご一読ください。
資金繰りに苦しむ中小企業ーその3割は倒産危機を経験している
資金繰りはどの企業にとっても悩みのタネになりやすいものですが、具体的にはどのような方法で資金調達をしているところが多いのでしょうか。経営コンサルティングサービスを提供する株式会社社長のきもちがコロナ禍において中小企業の経営者を対象に行ったアンケートによると、「金融機関からの融資や借入(50.5%)」という回答が最も多く、次いで「経営者の自己資金(47.4%)」「補助金や助成金(32.1%)」という順番になっており、どの企業も資金調達の方法に大きな違いはないことが読み取れます。
一方で、資金調達について困っていることについて質問したところ、「補助金や助成金の申請書類の作成(30.1%)」という回答が最も多く、以降「金融機関からの貸し渋り・打ち切り(22.9%)」「担保できるものがない(22.7%)」「補助金や助成金の打ち切り・終了(16.2%)」などの回答があり、金融機関の対応や補助金の申請に大きな労力をとられていることが明らかになっています。コロナ禍での資金調達という情勢が、アンケート結果に反映されていると言えるでしょう。
また、「資金調達までの時間(21.2%)」という回答もあり、資金を調達できる見込みはあるものの、資金繰りの点で苦労があるケースも多いようです。
こうした状況下において危機的な状況に遭った経験のある経営者も多く、資金調達ができずに倒産や休業の危機に陥ったことがあるかという質問では、32.6%が「ある」と回答しています。この数字が多いと見るか少ないと見るかは個人の立場や感じ方によっても異なりますが、決して少なくない企業が資金繰りに悩んでいることがうかがえるでしょう。コロナウイルス感染の拡大が長期化する中で、業種や公的支援の有無にもよりますが、ますますその割合が増えているというのが実態ではないでしょうか。
資金繰りはなぜ悪化する?
「資金繰り」とは、現金や預金など会社の資金がマイナスにならないよう、収入と支出を管理することをいいます。資金がマイナスになると取引先への支払いや従業員の給与支払いが滞り、ひいては倒産の危機に直面するため、そうならないよう事前に資金の増減を把握することが目的です。もし近い将来にマイナスになることが分かれば、銀行からの融資で資金調達を行う必要があります。
資金繰りが悪化するというと、業績が悪化して売り上げが下がっているケースを想像しがちですが、必ずしもそうとは限りません。例えば大きな売り上げがあっても入金までにしばらくタイムラグがあり、その前に原材料費や設備投資費用の支払いがあれば手元の現金がマイナスになってしまうこともあります。そのため、急に売り上げが大きく伸びた場合は資金繰りが悪化しやすく注意が必要とされています。
また、意味が似ているため混同しやすいものとして「資産」にも注意が必要です。例えば企業において換金性の高い資産には定期預金、貸付金、売掛金などがありますが、これらはいずれもすぐに支払いに利用できるわけではないため「資金」ではなく「資産」という扱いになります。仮にこうした資産をたくさん持っていても、企業の資金がマイナスになれば支払いはできなくなり、多方面に迷惑をかける結果になります。このように、お金(資産)を持っているからといって、または売り上げがあるからといって必ずしも資金繰りがうまくいくわけではないことに注意が必要です。
資金繰り対策のポイント
資金繰りを改善するためには、具体的にどのようにすればいいのでしょうか。そのためのポイントとなるのが「資金繰り表」と「損益計算書」の2つです。
1) 資金繰り表を作成し、手元の資金を把握する
資金繰りを円滑にする方法としてはごく一般的でよく知られた対策ですが、やはり最も効果があるのは資金繰り表を作成することです。売り上げのような収入と、従業員の給与や家賃などの支出をまとめ、事業の継続に必要な資金が確保できているかを常時把握できるようにしておきましょう。
このとき注意しておきたいのは、社会情勢の変化や急なアクシデントにより売り上げが減少した場合、どのくらいの期間耐えることができるのかをしっかりと把握することです。特に最近は新型コロナウイルスの影響により社会情勢の変化が大きく、急激な売り上げの減少に多くの企業は苦境に立たされています。もし資金がショートするといった危険性がある場合は、借り入れや資産、債券の現金化など早急に資金調達の準備を始める必要があります。
2) 損益計算書をもとに、利益を確保する
資金繰りにおいて最も効果的な対策は、売り上げをあげて利益を確保することです。そのためには損益計算書をしっかりと確認し、何に費用を使ったのか、どれだけ売り上げがあり、どのくらい利益があったのかを冷静に把握することが重要です。
損益計算書を確認するメリットは、売り上げに対して原価や人件費は適切かを可視化できる点にあります。もし原価や人件費の割合が大きい場合は、社内でムダなお金を使っている箇所がないか、経費削減の余地がないかを検討し、利益が残るよう対策していく必要があります。
資金繰りはもちろん重要ですが、そればかりに気をとられていると本来やるべき利益の確保がおろそかになるケースもあります。そうならないよう、資金繰りを考える際には「資金繰り表」と「損益計算書」の2つを並行して確認することが大切なのです。
中小企業の資金繰りはなぜ難しい?
資金繰りを改善するための施策は数多くありますが、それを知っていたからといって必ずしもスムーズにいかないのが難しいところです。先に取り上げた中小企業の経営者を対象にしたアンケートで資金繰りの難しい点について質問したところ、最も多いのは「悩みを共有できる相手がいない(32.0%)」という回答でした。
特に中小企業の場合、会社の経営に関わっているのは経営者のみといったケースも少なくありません。そのため相談や悩みを共有できる相手がおらず、資金繰りだけでなく、会社の利益についても目を向けなくてはいけないことが分かっていても、ついつい目先の資金繰りだけに意識をとられることも多いようです。
また、中小企業経営者に会社の資金繰りに関してどのような人に相談しているかという質問で最も多かったのは「家族(22.1%)」という回答で、以降「税理士などの専門家(21.0%)」「友人・知人(15.6%)」「会社の役員(14.8%)」「銀行や金融機関の担当者以外にはいない(10.2%)」「会社の従業員(経理や総務など)(6.8%)」と続いています。会社の存続を左右する重要な決断にもかかわらず、専門家の助言を受けているのはわずか21%。つまり、それ以外の経営者は家族や友人、社員、銀行担当者など必ずしも会社経営に関する専門家ではない人にしか相談できていないという結果です。
会社の存続を左右する重要な決断にもかかわらず、専門家の助言を受けることができなければ、自身の経験や直感で判断するほかありません。結果として、急場をしのぐために木を見て森を見ないような判断に偏(かたよ)るリスクが増えるのも、資金繰りの難しさを表していると言えるでしょう。
資金繰りには専門家の知見が求められる場面も
資金繰りを改善するためには営業収支や財務収支、経常収支などさまざまな収支を多角的に分析する必要もあり、専門的な知見からの判断を迫られることも少なくありません。そのため、経験豊富であっても経営者ひとりだけで解決するのは難しい部分もあります。
会社の存続だけでなく従業員やその家族の生活も左右する決断だからこそ、困ったときは気軽に専門家に相談できる窓口を持っておくことが重要です。最近はこうした相談ができる経営カウンセリングなどのサービスも増えているため、必要に応じて活用することで、経営者自身の負担を減らし、無理のない会社経営を進めることができます。
当社では、対話を通じて経営者様の悩みを解決へと導く「経営カウンセリング」のサービスを提供しています。対話から経営課題の「根本」を正しく見極め、本質に効く解決策を講じます。ぜひ資金繰りにお困りの際にはお気軽にご相談ください。