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後継者に求める資質とは?事業承継における後継者の選び方・育て方

後継者に求める資質とは?事業承継における後継者の選び方・育て方

事業承継を視野に、後継者を探している経営者の方も多いかもしれません。ただ、後継者の人選は企業の命運を左右するため、慎重な判断が求められます。一方、できるだけ早期の後継者選びがその後の発展や廃業リスクの回避につながるのも事実です。そこで今回は「後継者の資質」や「後継者の選び方・育て方」について分かりやすく解説します。

後継者にまつわる実状・データ

後継者への事業承継は、一般的にどのように行われているのでしょうか。
調査データを参照しつつ、「誰に」「いつ」「どのくらいの期間で」承継しているのか、実情を紹介します。

(1)「誰」に承継するのか

後継者の人選に関しては、経営者の方が最も苦心する部分だと思います。中小企業庁が発表した2020年版の「中小企業白書(※)」によれば、事業を受け継いだ社長と先代経営者との関係について、「同族承継」の割合が34.9%でトップでした(2019年)。ただ、同年では「内部昇格」も33.4%と高く、同族承継の割合とほとんど変わらない結果となっています。また、「同族承継」の割合は直近3年において毎年減っており、逆に「内部昇格」「外部招聘(しょうへい)」の割合は増加傾向です。つまり、“親族外”の承継が、事業承継の有力候補として増えている傾向が見て取れます。

※参考:2020年版「中小企業白書」第1部 第3章|中小企業庁(PDF)

(2)後継者の育成には「どのくらい」かかるのか

後継者の育成には、想像以上に時間がかかるものです。2014年版の「中小企業白書(※)」によれば、中規模企業・小規模事業者ともに、後継者の育成期間については「5年以上10年未満」の割合がトップでした。また、中規模企業の91.4%、小規模事業者の85.2%が後継者の育成に「3年以上かかる」と回答しています。このように後継者が育つまでには長い年月がかかるため、経営者としてできるだけ早期の人選・育成を意識しておくことが大切です。

※参考:中小企業白書 2014年版 第3章|中小企業庁(PDF)

(3)後継者には「いつ」承継すべきか

事業承継においては、後継者の「年齢」についても気になる部分だと思います。商工会議所のアンケート調査(※)によれば、「30代」で事業を受け継いだ経営者が、承継後に最も業況を拡大したという結果が出ました。また、「30代~40代」で事業を引き継いだ経営者は、事業承継のタイミングについて「ちょうどよい時期」と回答した割合が多く、前向きな取り組みを行っている例も多いようです。つまり、経営者としては後継者が「30代~40代」の時期に事業を承継することで、企業により良い影響をもたらしやすいという傾向が見て取れます。

※参考:「切り拓け日本の未来!中小企業成長促進大会」 結果概要|東京商工会議所

後継者に求める能力・資質とは?

それでは、どのような能力・資質を持つ人材を、後継者に選ぶべきなのでしょうか。
後継者として備えておくべき能力・資質について、ここでは大きく5つに絞って紹介します。

(1)経営に対する覚悟

後継者に求めることは数多くありますが、そのなかでも最も大切なのは「経営者としての覚悟」です。

というのも、経営者は会社の先頭に立ち、数々の決断を行う必要があります。事業が苦境にあるときは人一倍悩みますし、ときにはプライベートを犠牲にしてでも、問題解決に取り組まなければいけない場面もあるでしょう。経営判断に対する責任は、すべて自分に降りかかってきます。経営者の日常は、常にプレッシャーやストレスの連続です。こうした苦労を受け入れてでも、「経営者として何かを成し遂げたい」という強い決意が後継者には求められるのです。知識やスキルはあとからでも身につきますが、覚悟だけは初めから持っておくべきでしょう。

(2)テクニカルスキル

テクニカルスキルとは、業務を遂行していくために必要な専門知識・スキルのことです。例えば、業界・製品に関する知識のほかに、資金繰りや融資元の選定や交渉などの「財務スキル」、マーケティングや経営戦略などの「経営スキル」、部下を適切に指導できる「マネジメントスキル」などが挙げられます。というのも、経営者になっていきなり経営を完璧にこなそうと思っても、ある程度の下地がないと何から手をつけてよいか分からなくなります。そのため、後継者は各種セミナーや経営者によるOJTなどで、専門的スキルを学んでおく必要があるでしょう。

(3)コンセプチュアルスキル

コンセプチュアルスキルとは、複雑な情報・知識を整理して、物事の“本質”を見抜く能力のことです。例えば、物事を論理的に理解できる「論理的思考力」や、さまざまな事象を分析できる「クリティカルシンキング」、情報を集めて将来への仮説を立てられる「先見性」などが含まれます。というのも、経営者は最終的な決定権を持っているため、どんな難問にでも常に決断を迫られます。その際、周囲が納得できるよう、筋道立てて結論づける力が必要になってくるのです。このコンセプチュアルスキルは、トップマネジメントほど必要になる能力です。

(4)ヒューマンスキル

ヒューマンスキルとは、相手と柔軟にコミュニケーションをとり、円滑に調整・交渉できるスキルのことです。また、周囲を巻き込みながら行動できる「人間的な魅力」も含まれます。というのも、経営者は従業員や取引先、金融機関や株主など、さまざまなステークホルダーと日々やりとりします。そのなかで、自分の要望を正確に伝え、相手の意見とうまく擦り合わせる場面も多いです。その際、円滑なコミュニケーションを通じて、信頼を勝ち取る必要があります。だからこそ後継者は、対人的なスキルを日々の仕事のなかで磨いておくことも大切です。

(5)経営理念への共感

後継者に求める資質として、忘れてはいけないのが「経営理念・経営ビジョンへの共感」です。経営者は、全従業員のお手本となって、経営理念を体現できる存在でなければいけません。もしも経営者が自社の理念やビジョンに懐疑的だったとしたら、それが従業員にも伝わり、組織としての求心力を失ってしまうでしょう。だからこそ後継者には、経営者になる覚悟とともに、「自社の経営理念」に対する共感も深く抱いていることが大切です。

後継者の育て方とは?

それでは、後継者候補をどのように経営者へと育てればよいのでしょうか。
ここでは、社内外を含めて、後継者の育成方法を6つ紹介します。

(1)主要部門のローテーション

社内教育の1つ目は、後継者に各部門での通常業務を経験してもらうことです。セールス・経営企画・財務など、主要な部署にローテーションで配属し、それぞれ数ヶ月間の業務を経験してもらいます。これにより、後継者に会社でどんな業務が行われているかを知ってもらい、基本的な業務スキルを身につけてもらうことが可能です。いずれ経営者として各部署をマネジメントしてもらうことになるので、その際にも業務知識は役に立つでしょう。

(2)責任ある地位への登用

社内教育の2つ目として、「幹部への登用」があります。後継者を重要な役職に就かせることで、実際のマネジメントや意思決定を経験してもらうのです。また、幹部として経営会議などにも参加してもらい、対外的に影響の少ない部分の経営判断を委ねます。経営の経験を積んでもらうことで、経営者としての判断軸も養えるでしょう。

(3)経営者によるOJT

社内教育の3つ目は、経営者自らが後継者の実践教育をすることです。OJTを通じて、財務諸表や決算書の読み方、意思決定のフロー、ステークホルダーとのやりとりなどについて身をもって学んでもらえます。また、事業理念や現在の経営状況、これからの事業方針について、後継者へじかに伝える良いチャンスにもなるでしょう。

(4)他社・グループ会社での勤務

社外教育の代表例の1つ目として、グループ会社・関連会社での勤務があります。後継者に他社での業務を一定期間の間経験してもらうことで、自社では得られない職種・業界のスキルを習得してもらうことが可能です。また、あえて社外での業務経験を積んでもらうことで、社内にとどまらず幅広い人脈を築いてもらうこともできます。

(5)子会社・グループ会社の経営

社外教育の2つ目として、子会社・グループ会社での経営体験が挙げられます。関連会社で実際に経営者のポジションに就いてもらうことで、後継者に経営者としての仕事を実地で体験してもらうことが可能です。経営者としての独り立ちがスムーズになるだけでなく、自社では得られない現実的な経営体験を学んでもらうことができます。

(6)セミナー・勉強会への参加

社外教育の3つ目は、セミナー・勉強会です。商工会議所や経営スクール、コンサルティング会社などが、経営者の育成を目的とした各種セミナーを開いています。後継者をこれに参加させることで、体系立てた経営戦略・財務・マーケティングの知識を習得してもらうことが可能です。また、コンサルティング会社の主催する経営者育成プログラムを活用することで、後継者に経営者としての心構えや先代との付き合い方なども学んでもらえます。

後継者に関する相談は、誰にすればよいのか

後継者の人選・育成には、一般的に5年~10年という長い月日がかかるといわれています。だからこそ、できるだけ早期に人選を始め、経営者自ら目をかけて育てていく姿勢が欠かせないでしょう。

ただ、誰を後継者として据えるべきか、判断に迷う経営者の方も多いです。実際、商工会議所のアンケート(※)を見ても、「事業承継について相談できる相手がいない・相談先が分からない」と悩んでいる経営者もいることがわかります。その際は、外部のプロに依頼し、客観的に企業の体質・人材の能力を見極めてもらうことも大切です。

当社では、対話を通じて経営者様の悩みを解決へと導く「経営カウンセリング」サービスを提供しています。事業承継に関する相談にも親身にアドバイスし、スムーズな承継を支援します。後継者の人選・育成で迷った際は、ぜひ一度お気軽にご相談いただければ幸いです。

※参考:事業承継の実態に関するアンケート調査|東京商工会議所(PDF/全文) 


参考: