料飲サービススタッフの育成ー経営者が知っておきたいサービススキルアップ講座

日本において料飲のサービススタッフへの評価はけっして高いものとは言えない現状です。一部の高級志向のレストランなどを除いたホテルやブライダル会場の多くは、料飲サービスを直接採用したアルバイトもしくはアルバイト中心の配膳会社に任せています。そこには「料理・ドリンクを出すことは誰にでもできる」という考えがあると思います。しかし、サービスの如何によってお客様のそのお店や施設への評価は確実に変わります。
例えば、ウエディングにおけるサービスそれ自体が、列席者への営業でもあり、その会場への評価の大きな要素ともなり、次の新たなお客様・新規対応にもつながっていきます。競争が激化するブライダル業界。もはや、料理や演出、進行内容のみで、お客様を惹きつけることは難しいのではないでしょうか。料飲サービスに光をあてる!それが今後のブライダル業界で生残る大事な要素の一つです。
これは、ブライダル業界に限らずあらゆる飲食店に共通することではないでしょうか。
アルバイトの多いサービススタッフ
「うちのお店のサービススタッフはアルバイトばかりだから・・・」そう考え、サービススタッフに多くを望まない、もしくは良いサービスを実現するのは難しいととらえてはいないでしょうか。実際には、アルバイトだからできないということはありません。アルバイトでもお客様に喜んでいただけるきめの細かいサービスはできます。
大事なことは、アルバイトスタッフ一人ひとりの可能性を、本気で信じることです。その上で、サービスの目的は料理を出すことではなく、「お客様に満足を提供すること」です。お客様のどこに注意を払い、何をすれば喜んでいただけるのかとの手法と思いを、ミーティングや勉強会、またはサービス現場において共有することが大切です。
スタッフ育成のベースは人間尊重
スタッフに対して、仕事だからやらなくてはいけないという義務感を押しつけるのでなく、サービスをする喜びが芽生えるようにすることが肝要です。施行前ミーティングなどで、「今日は、お客様にこうしてください」「お客様に嬉しい、助かる、ありがたい、を提供しよう」と一律に投げかけるだけでは不十分です。サービススタッフの力量を見極め、会場にいるお客様を見て「あのお客様にはこうしてみて!」と適時、具体的なアドバイスを一人ひとりに対してすることです。細々と具体的なアドバイスをするのは、スタッフが行動に移しやすくするためです。スタッフが行動を起こした結果が、お客様にとっては小さな喜びでかまいません。「ありがとう、気が利くね、嬉しいね」などお客様の反応の体験を積んでもらうことです。
また、現場のスタッフ教育においては、「何回言えばわかるんだ!」という思いになることも多々あるとは思います。けれども、本人としては、難しかったり、できないことだから、何度も同じ失敗を繰り返す、あるいは言われたことを実践できないのです。何回も同じことを教え、アドバイスをして、挑戦しようという気持ちにさせるのがスタッフ育成だと思います。教える側が感情優先にならずに、スタッフそれぞれの成長を信じることはとても大事なポイントだと常々思っております。
育成方法その1―ひとつの目標に挑戦させる
育成の参考例にすぎないのですが、ここでは三つあげたいと思います。施行時に個別の目標を一つ設定することです。たとえば、お客様からのドリンク催促をゼロにする目標。ビールのお客様にお替りやビール以外のアルコールをお持ちするなど、催促される前にドリンクを提供することです。ほかには、お客様を名前で呼ぶ目標や、料理説明をする目標などがあります。
ベテランであっても、一組のお客様に対し、実践目標を明確にして挑むことが大切です。できていると思っていたことでも、明確に目標とすることで、できていない点があることに気づくことは多いものです。
目標を設定した上で、お客様へのサービスの後に反省会を実施します。明確な具体的挑戦目標を持って接客に臨むことで、反省会がより意義深いものになります。スタッフ本人もテーマを一つに絞り、何がうまくできて何がうまくできなかったかを、明確にすることができます。
また、私は時折、お客様をお迎えする直前に、他のサービススタッフに対してサービスレクチャーをすることがあります。サービスの基本動作とお客様に対する基本姿勢のレクチャーなのですが、基本を定期的に確認することが大切です。そういった場合、サービス初心者のために行うのが主ですが、ベテランスタッフにとっても、サービスの教え方を学ぶ機会になります。同じことであっても、何回も繰り返すことで、全体の質の向上につながります。
育成方法その2―講師スタッフをつくる
「今日の接客では、こうしてください」と新しいことをサービススタッフに指示することがあると思います。そのことをアルバイトスタッフに教えながら、率先してやって見せてくれる他のスタッフがいる場合といない場合とでは、大きく成果は違ってきます。
見たことのないことをする不安は誰にでもあります。率先して見せながらやることで、そうした不安を取り除いてあげることが大切だと思います。またそれは、率先して実行することを任されたスタッフの成長にもつながります。特にアルバイトスタッフに対しては、労使の関係になりがちです。しかし大事なことは、一緒にやるという思いと姿勢です。一緒に最高の接客をする、一緒に最高のサービスを提供する、そういう思いをベースにすることです。
育成方法その3―接客前のミーティング
接客にあたる直前のミーティングは、お客様へのサービスに向けての情報の共有ばかりでなく、スタッフを育成する大事な場面です。料飲のサービスシーンとは別の時間に勉強会を実施する方法もありますが、アルバイトが多い場合には実際の接客直前のミーティング(打合せ)と合わせて実践的に行うのが有効だと思います。
ミーティングでは二つのポイントがあります。一つは、各スタッフの目標を設定する。二つめは、お客様の事前情報(妊婦、子ども、高年齢、好みなど)を基に「どうされると嬉しいか」を人ひとりが考え、共有することです。
自分以外のスタッフの考えを共有することで、サービスをする幅を広げることができます。何かとせわしない施行前ですが、学んだことを即実践できる、貴重な機会です。そのためにも、お客様をお迎えする準備はできる限り短時間で終わらせることができるようにし、ミーティング時間をしっかり取るようにすることが大切です。
料飲スタッフ育成の極意
「どうしたらスタッフが成長するのか」
「いつまでたっても料理を出すだけで、お客様に喜んでもらうところにまでいたらない」
そう悩む現場リーダーの方はいると思います。私も以前はそうでした。いくつかの方法論を述べましたが、サービススタッフ育成において大事なことは、そのスタッフが自身の仕事に誇りを持つかどうかがポイントではないかと思います。そのための支えといいますか、きっかけを現場でどれだけつくってあげることができるのかがリーダーの務めだと思います。
そして極めて大事だと思うことは、スタッフは”育てる”のではなく〝育つ〟のだということです。意図的に育てることはできず、実際には、リーダーの後ろ姿を見てスタッフは育っているということです。リーダーに感化されるのがスタッフなんだと思います。つまり、リーダー自身が成長した分しか、スタッフは育たない。リーダー以上に、お客様を大事に思うスタッフは育たない。それがスタッフ育成の極意だと思います。
HRS・一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会が実施しているサービス技能検定という資格試験が毎年行われています。レストランやホテルに限らず、結婚式場や最近では旅館の方々も積極的に取り組まれております。
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