人材確保はなぜ困難なのか?採用成功と定着につなげる方法・取り組みを紹介!

人材確保は大きな課題となっています。特に近年は人口減少や都市部への人材流動などに伴い、人材確保は困難を極めているのが実情です。中小零細企業にとってはあらゆる手段をこうじても結果に結びつかないとお悩みの会社も少なくありません。そこで今回は、中小企業が人材確保を成功させるための方法・実践例を分かりやすく紹介します。採用・選考・定着化に分けて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。(2022年12月23日更新)
※人材不足の現状について詳しく知りたい方は、「深刻化する人材不足、企業への影響と取り組むべき課題とは」の記事も合わせてお読みください。
人材確保が困難な理由とは?
そもそもなぜ日本では人材確保が難しくなっているのでしょうか。
時代的な背景も踏まえつつ、3つの観点から解説します。
(1)少子高齢化が進んでいるため
日本では少子高齢化が進んでおり、人材の母数が減っているのが現状です。内閣府の調査(※)によれば、総人口に占める65歳以上の割合は令和元年に28.4%まで達し、今後も高齢化の加速が見込まれています。同時に働き手である15~64歳の人口(生産年齢人口)は減少が続いており、企業の人材不足につながっている状況です。
(2)人材の流動化が進んでいるため
これまで日本では、終身雇用や年功序列といった制度のもと、新卒から定年まで1社で勤め上げる人材も少なくありませんでした。ただ、今では終身雇用制度の崩壊が叫ばれ、転職や再就職が当たり前になってきています。それに伴い、大手とはブランド力の差がある中小企業では、優秀な人材の流出が進んでいるケースも珍しくありません。特に地方から大都市部への人口流入は依然として高く、地方の中小企業ではより人材確保が困難を極めています。
(3)若手の大手志向が高まっているため
バブル崩壊やリーマンショック、新型コロナウイルスの流行など、社会情勢は先の読めない不安定な状況が続いています。そんななか、若手人材の大手志向が高まっているという調査もあります。株式会社マイナビの調査(※)によれば、2021年卒の大学生における「大手企業志向」は55.1%を記録し、前年比2.4ポイント増という結果でした。また同調査では、企業選択のポイントを「安定している会社」と答えた学生の割合が最多となっています。安定を求めて大手企業を志望する学生が増えることで、中小企業では人材確保がますます困難になるかもしれません。
企業が人材確保に失敗する原因とは?
人材不足の原因が、時代や社会の問題だけとは限りません。実は企業側の対応に、原因が潜んでいることもあるのです。ここでは、企業が人材確保に失敗してしまう主な原因について、3つの観点から解説します。
(1)人材の「集め方」に問題がある
そもそも求人広告を出しても人材から応募が来ない場合、「集め方(募集方法)」に問題があるかもしれません。
例えば、求人広告の内容が分かりにくい、求人内の雇用条件が魅力的ではない、求人の媒体が紙だけに限られていた、などという原因が考えられます。これらを解消することで、応募数の増加も期待できるでしょう。
(2)人材の「選び方」に問題がある
人材から一定の応募が来るものの、入社にはつながらない場合、「選び方(選考方法)」に問題があります。
例えば、採用ターゲットが明確に定まっていない、面接で求職者に会社の魅力を訴求できていない、内定後のフォローが手薄、といった問題です。選考を見直すことで、入社数を増やせることもあります。
(3)入社後の「社内環境」「労働条件」に問題がある
人材の入社数は多いものの、離職率が高い場合は、「社内環境」や「労働条件」に問題があるかもしれません。
例えば、給与や手当が他社よりも少ない、長時間の残業が当たり前になっている、人間関係がうまくいっていない、などというのが原因です。福利厚生や社内風土を改善することで、人材の定着化も期待できます。
人材確保を成功させる方法【1.募集編】
ここからは、人材の募集・選考・定着化という3フェーズに分けて、人材確保のポイントを解説します。
まずは、より多くの人材を集めるための方法【募集編】から紹介します。
(1)採用のターゲットを見直す
応募が集まらない場合、採用ターゲットを必要以上に狭めている可能性があります。例えば、経理職の求人に、なんとなく「経理経験3年」といった応募資格を書くこともあるかもしれません。ですが、現場に詳しく確認してみると、実際の業務に必ずしも業務経験は必要なく、「伝票処理ができればOK」「簿記3級程度の知識さえあればよい」だったということもあるでしょう。その際、経験年数だけを応募資格に書いてしまうと、不必要に求職者の幅を減らすことになります。応募資格は「経験年数」ではなく、「スキル・知識」で記載することが大切です。
また、業務内容にもよりますが、必ずしも若年層に採用ターゲットを絞らなくてよいケースもあるでしょう。というのも、若手人材は当然ながら競合他社も狙っている層なので、人材確保が難しいこともあります。例えば、育休明けの主婦層や40~50代のミドル層のなかには、業務内容に適した豊富な専門スキルを持つ人材がいるかもしれません。募集職種の部署ともすり合わせつつ、ターゲットで他社と差別化を図ることもひとつの方法です。
(2)求人広告の内容を見直す
求人広告の内容が魅力的でない場合も、応募数の減少につながります。求人内容を見直し、採用ターゲットに魅力を感じてもらえるような情報に変えることが大切です。例えば、営業職であれば「インセンティブはあるか」「商材が売りやすいか」「昇格スピードは早いか」などは求職者の気になる部分でしょう。また事務職なら、「快適なオフィス環境かどうか」「定時に帰れるかどうか」「職場の人間関係は良好か」などはチェックされているはずです。採用ターゲットの目線に立って、求人広告はより具体的に・より詳細に魅力を書くようにしましょう。
逆に求人広告の内容が過剰に表現されていた場合、入社後に人材から「こんなはずじゃなかった」と思われ、早期退職につながりかねません。特に給与については、高い年収例だけを選んで書くのではなく、月給や時給などの「下限」を書くことが大切です。現場の実態とかけ離れた求人内容になっていないか、よく確認しましょう。
(3)求人の配信媒体を見直す
求人広告の媒体が限られていると、その分応募数も限られます。採用ターゲットを想定して、求人媒体を見直すようにしましょう。例えば、若手人材を狙うのであれば、紙媒体だけでなくWeb上の転職サイトやSNSの活用を検討するのも有効です。また、ハイクラス層の人材を採用したいのであれば、専門の人材紹介やダイレクトリクルーティングなども活用できます。そして、自社のホームページも立派な求人媒体です。ホームページ内に求人欄を作るだけでも、求職者との接点が増えます。費用対効果も考えたうえで、配信媒体の数や種類を改善しましょう。
(4)副業人材や助成金の活用
コロナ禍によってリモートワークなどのワークスタイルが一層進みました。どこにいても仕事ができる環境が整ったことで、これまでと違った働き方が浸透しつつあります。パラレルワーク・副業などの情報がよく聞かれるようになりましたが、専門家のスポット活用などもその一つです。副業人材の募集を行っているウェブサイトも多数ありますので一度調べてみてはいかがでしょうか。また、人材の有効活用や雇用維持の名目から「雇用安定助成金」などの施策も実施されています。いち早くこういった有効な情報をキャッチすることが結果として人材確保にもつながっていきます。詳しくは専門家に相談するなどして情報をしっかりとつかんでいきたいものです。
人材確保を成功させる方法【2.選考編】
ここからは、より多くの人材に入社してもらうための【面接・選考方法】について紹介します。
(1)書類選考で厳選しすぎない
書類選考で厳選しすぎると、当然ながら人材との接点は減ってしまいます。たとえ履歴書で要件を満たしていなくても、面接で会ってみるとなかには自社の風土にマッチする人材もいるかもしれません。また、スキルや知識は入社後の教育で補える部分もあります。業務の難易度にもよりますが、書類で厳選しすぎないことも大切です。
(2)面接で「魅力づけ」と「情報提供」を行う
面接は企業が人材を見極める場でもありますが、同時に人材側から企業を深く知ってもらう場でもあります。そのため、求職者から選んでもらえるように、面接でも自社の「魅力づけ」を意識することが大切です。例えば、一方的に面接官から質問するのではなく、求職者側からの「逆質問」の場を設けるのもよいでしょう。仕事内容や社風、待遇について疑問点をぶつけてもらうことで、求人広告では語れなかった自社の魅力をより詳しく伝えられます。また、面接で詳しい情報提供を行うことは、入社後のミスマッチを防止できる点でも有効でしょう。
(3)内定後のフォローを手厚くする
内定を出したあと、内定者とあまり連絡をとっていないと、本人の入社意欲を下げてしまう可能性もあります。仮にその人材が複数の企業から内定をもらっていた場合、内定辞退につながる危険性もあるでしょう。そのため、内定者とは定期的にメールやSNSで連絡をとったり、必要に応じて課題を出したりと入社まで接点を持ち続けることが大切です。手厚いフォローによって、入社後の本人のモチベーションにもつながりやすくなるでしょう。
人材確保を成功させる方法【3.定着化編】
最後は、人材に入社してもらった後、より長く自社に【定着】してもらうための方法を紹介します。
(1)待遇・評価制度の改善を図る
「働きに見合った給与がもらえない」というのは、退職につながりやすい大きな原因のひとつです。いきなり全員の給与水準を上げるのは難しいかもしれませんが、業務量と報酬に不釣り合いがないか、いま一度確認することも大切でしょう。また、給与への不満は「人事評価制度」への不満にもつながっています。「上司の気分だけで評価が決まっていないか」「性差がないよう評価されているか」などの観点から、評価制度も見直すことが重要です。
(2)柔軟な働き方を取り入れる
「休日が柔軟に取りにくい」「そもそも休日が少ない」というのも、離職率の増加につながりかねません。そのため、社員の勤務実態を正しく把握し、負担をかけすぎないようシフトや休日数を調整することが大切です。また、近年は在宅ワークやフレックスタイム制度などの導入も各企業で進んでいます。柔軟に働ける制度のある企業は、社員からも魅力的に映りやすいです。社員の声を参考にしながら、制度の見直しや追加も検討しましょう。
(3)キャリアパスを充実させる
明確なキャリアパスのない会社では、社員に将来の不安を感じさせてしまい、退職につながる可能性があります。そのため、昇格ルートや賃金体系を分かりやすく図式化したり、管理職だけでなくハイパフォーマーの道も用意したりという工夫が必要です。また、社員にとってのロールモデルを育てるという意味で、管理職向けの研修を行うことも有効でしょう。「目指したい姿」がある会社でなら、社員に長く勤めてもらえる可能性も高まります。
(4)仕事の意義を周知させる
仕事にやりがいのない職場では、やる気も維持できず、社員に転職を検討されかねません。そのため、社員一人ひとりの希望に寄り添い、できるだけ適性の高い仕事を任せることも重要です。また、企業理念への共感度も仕事へのモチベーションに影響します。「給料は多少低くても、企業のビジョンに共感できるから働ける」という人材も少なくありません。理念の浸透を図り、社員に仕事の意義を周知させることも定着率向上のポイントです。
(5)社内コミュニケーションを見直す
社内の人間関係が良くないと、定着率の悪化にもつながりやすいです。だからこそ、普段から1on1ミーティングのような個人面談の場を設け、職場での不安や悩みがないか確かめておくことが必要でしょう。仮に周囲に対して問題行為やハラスメントを行っている社員がいれば、是正するよう本人に働きかけることも大切です。また、社員間でのコミュニケーションや親睦の場を増やすことで、帰属意識が高まり、定着率の向上も期待できます。
人材確保の解決には、外部のプロを頼ることも有効
人材確保を成功させるためには、社内の風土や制度を大きく変える必要も出てきます。そのため、会社のトップである経営者が誰よりも先頭に立ち、旗を振る必要があるのです。だからこそ、まずは経営者自身が、自社における人材の課題や現状を知ることから始めましょう。その際、外部の専門家に意見をもらうことで、客観的に課題を見極められることもあります。
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