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中小企業の人材育成はなぜ難しいのか?効果的な手法・経営層の関わり方を解説!

中小企業の人材育成はなぜ難しいのか?効果的な手法・経営層の関わり方を解説!

中小企業の人材育成は、育成ノウハウの不足や資金面の問題などから、難航するケースも見られます。ただ、人材育成は企業の競争力を高めるために欠かせない取り組みです。そこで今回は、「中小企業における人材育成の課題」を紹介したうえで、「経営層の関わり方」や「効果的な人材育成の手法」を分かりやすく解説します。(2022年9月27日更新)

そもそも人材育成とは?

人材育成とは、「経営戦略の達成に向けて成果を挙げられる人材」を育てることです。というのも、人材育成は従業員のスキルや知識を向上させることだけが目的ではありません。企業活動の最終目的は、経営戦略の達成にあります。だからこそ、人材育成においても経営戦略の実現を念頭に置くべきでしょう。人材育成の計画を立てる際には、自社の企業理念や経営目標を明らかにし、それとリンクさせる形で育成手法を考えることが大切です。

ちなみに、人材育成には以下のような手法があり、それぞれに特徴があります。

◆集合研修:一度に大勢の受講が可能で、ワークショップをはじめ従業員同士で学び合う場も設けやすい
◆OJT(現場教育):相手に合わせて柔軟に教え方を変えることができ、実務に即した内容を教えられる
◆e-ラーニング:空いた時間に個々で学習できる仕組みのため、従業員の自己研さんを促すことができる
◆外部講習・勉強会:専門ノウハウを持った講師のもと、自社では得られないスキル・知識を学習できる

人材の階層によって適切な教育手法が異なるため、各手法の長所・短所を十分に理解して活用することが重要です。

人材育成の目的とは?

人材育成を行うことによって、企業はどのようなメリットを得られるのでしょうか。
ここでは、人材育成の主な目的について4つ紹介します。

(1)従業員のパフォーマンス向上

市場の国際化やテクノロジーの浸透など、企業を取り巻く環境は刻々と変化しています。企業として競争力を保つためには、世の中の変化に合わせて人材のスキルや知識をアップデートしていくことが必要です。そのうえで、人材育成は非常に重要な意味を持つでしょう。専門的なノウハウやリテラシーを従業員に身につけてもらうことで、個々のパフォーマンス向上につながります。ひいては、企業全体の業績向上へとつなげることが可能です。

(2)組織全体の生産性アップ

少子高齢化の影響から、企業では人手不足の問題が顕著になっています。特に中小企業においては、採用難の課題を抱え、人材一人ひとりの負担が増加しているケースも珍しくありません。だからこそ、人材育成によって個々の業務スキルを高め、組織全体の生産性を上げることが重要です。一人ひとりが生産性高く働けるようになれば、空いた時間で新規事業のアイデアを創出するといった、未来につながる取り組みを始めることもできるでしょう。

(3)定着率の向上

終身雇用が崩れつつある今、転職や再就職が当たり前になってきています。特に中小企業のなかには、離職率の増加に悩む経営者の方も少なくありません。だからこそ、人材育成によって従業員一人ひとりのキャリア開発を支援し、働くモチベーションを高めることも大切です。企業として教育に力を入れることで、従業員も「自分のことを大事にしてくれている」と考え、会社への思い入れや愛着の度合いも高まりやすくなるでしょう。また、人材育成に注力していることは採用上のアピールポイントにもなるため、優秀な人材の確保につながるケースもあります。

(4)後継者の育成

中小企業においては、後継者難での倒産や廃業も多く見られます。後継者の選定や育成には多くの年月がかかることを考えると、早めに後継者の育成に努めることも大切です。例えば、管理職・マネージャーに経営者育成の研修・勉強会へ参加してもらったり、社外留学によって新たな知見を学んでもらったりという取り組みが挙げられます。優秀なNo.2を育成することで、経営者の意思決定も早くなり、業績にも好影響が生まれるでしょう。

※詳しくは「後継者に求める資質とは?事業承継における後継者の選び方・育て方」をあわせてご覧ください。

中小企業における人材育成の課題とは?

一方で、「人材育成がうまく進まない」と悩む中小企業も少なくありません。
ここでは、中小企業における人材育成の課題について、4つの観点から紹介します。

(1)指導ノウハウが不足している

「指導できる人材がいない」「人材育成の方法が分からない」という、育成リソース・ノウハウの不足は最大の課題です。というのも、中小企業では指導マニュアルが用意されておらず、属人的にOJTが行われている場合があります。上司自身が体系立てて教育を受けていないため、後輩にも教えられないというケースも珍しくありません。人によって教育内容にバラつきがあると、必要なスキルが社内に定着しにくい状況になってしまいます。

(2)人材育成にあてる時間・費用がない

人手不足から、一人当たりの業務負担が増えている企業もあります。その場合、「人材育成にあてる時間がない」という状況に陥り、教育があと回しにされかねません。また、資金面で余裕がないと、利益を直接生まない取り組みはコスト削減の対象になりがちです。その際、どうしても人材育成の費用が削られてしまうこともあります。

(3)育成しても退職されてしまう

せっかく時間をかけて育成したにもかかわらず、当の従業員に辞められてしまうケースもあります。人材に早期離職されてしまうと、スキルや知識が継承されず、社内にノウハウが残らないという事態になりかねません。結果として、経営層が人材育成に対して否定的になり、教育の時間・費用が削られてしまう場合もあるでしょう。

(4)取り組んできたが成果が出ない・受講者の意欲が低い

人材育成に取り組んだものの、効果を実感できていない企業もあります。例えば、人材育成会社や経営コンサルタントに依頼した企業のなかには、「プログラムが似たり寄ったりでどこも一緒に見え、受講者側の意欲が湧かない」という悩みも聞かれました。こうしたきっかけから、人材育成に否定的になってしまう企業もあります。

経営者は人材育成にどう関与すべき?

人材育成をより効果的なものにするためには、経営者の働きかけが欠かせません。では、経営者はどのように人材育成へ関与すればよいのでしょうか。ここでは、大きく4つの観点から経営者の役割を紹介します。

(1)経営戦略・ビジョンを明らかにする

人材育成はすべて、経営戦略の実現を目標としています。そのため、経営者としてまずは中長期の経営戦略・ビジョンについて明らかにすることが大切です。市場や経済などの外部環境を入念に分析し、5年後・10年後に組織としてどうありたいかを考えましょう。明確な経営戦略は、人材育成において従業員の動機づけにもなります。

(2)求める人材像を明らかにする

経営戦略が明らかになれば、おのずと求める人材像も明らかになります。例えば、国際競争力を高めることが目標であれば、語学力に長けた人材を育てるべきでしょう。また、主力事業の創出を目標に掲げる場合は、従業員の発想力や課題解決力を高める必要があります。このように理想とする人材像を明らかにするのも、経営者の役割です。人材育成の指針が明らかになれば、人事部門も効果的な採用・評価制度を設計しやすくなるでしょう。

(3)自らメッセージを発信する

経営戦略や理想の人材像については、経営者自らが従業員に発信することが大切です。従業員としても、上司やマネージャーから聞かされるより、経営者から直接言われた方が強いモチベーションを感じます。例えば、経営者が採用説明会に登壇したり、経営計画発表会の際に求める人物像についても言及したりという工夫が必要です。人材育成に関する継続的なメッセージの発信は、従業員に自律的な学びを促す効果も期待できるでしょう。

(4)教育にかける時間・資金を提供する

人材育成とは、未来の組織をつくる取り組みにほかなりません。人材育成は、コストではなく「投資」なのです。だからこそ、経営者として人材育成の重要性を誰よりも理解し、十分なリソースを現場に提供する姿勢が重要でしょう。例えば、インプットに使える休暇制度を設けたり、従業員を社外の研修へ積極的に参加させたりという工夫が挙げられます。経営者として従業員の学びを積極的に支援すれば、自然と学びの風土も生まれてきます。

中小企業において人材育成を成功させる方法・ポイントとは?

ここでは、中小企業が人材育成を成功させるためのポイントについて、6つの観点から解説します。

(1)中小企業の利点を活かす

中小企業は大手と比べて、経営者と従業員・従業員同士の距離が近い点が強みです。人材育成においても、こうした利点を活かすことでより効果的な施策を行えるでしょう。例えば、経営者と従業員が直接話せるワークショップの場を設けたり、従業員同士が気軽に勉強会を開けるよう会社として支援したりという工夫があります。大手と比べ即断即行しやすいのも中小企業の利点なので、育成施策の効果をスピーディーに実感しやすいでしょう。

(2)評価制度・異動制度も整える

人材育成は、評価・異動などの人事制度とも密接に連携させる必要があります。例えば、求める人材像に近い従業員が正しく評価されるよう、評価制度を設計し直すことも大切です。また、たとえ従業員のスキル開発を行ったとしても、社内に最適なキャリアがなければ退職につながることもあります。そのため、昇進・昇格の明確なルートを整えたり、従業員の希望がかないやすいような柔軟な異動制度を取り入れたりすることも重要でしょう。

(3)採用時点でミスマッチを抑制する

自社の風土や経営戦略に合わない人材は、当然ながら育成にも時間がかかってしまいます。そのため、採用の時点で自社に合う人材を見極めておく姿勢も欠かせません。例えば、職場の実態を応募者に知ってもらえるように職場見学を取り入れたり、面接時に会社のビジョンや文化を応募者へ伝えたりという工夫が求められます。人材育成を念頭に置いて採用活動を行うことで、ミスマッチを防ぐことができ、育成の成果も高めやすいでしょう。

※詳しくは「なぜ人材確保は困難なのか?採用成功と定着につなげる方法・取り組みを紹介!」 をあわせてご覧ください。

(4)自律的な人材を育成する

市場や経済の移り変わりは激しく、求められるスキルは日々変化しています。そのため、会社主導で一律の教育を施そうとしても、対応に限界が来てしまうでしょう。だからこそ、世の中の変化に合わせて自主的に学び、成長できる「自律型人材」を育てることも大切です。自律型人材を育てるには、若いうちから権限移譲してチャレンジングな業務を任せたり、業務の進め方を指示せずあえて本人に考えさせたりという取り組みが有効です。自律的な人材が増えることで、会社として育成コストをかけなくても、自己研さんによる能力向上を期待できます。

≪合わせて読みたい:「自己成長」を実現するための3つのポイント~自律型人材育成 持続・継続のヒント~

(5)人材育成の文化を根付かせる

人材育成に否定的な組織では、育成もスムーズに進みません。そのため、時間をかけてでも「人材育成が重要である」という意識を社内に浸透させることが重要です。例えば、経営者自ら人材育成の重要性をメッセージとして発信したり、新入社員に教育担当を割り当てる「メンター制度」を導入したりすることも有効でしょう。人材育成が当たり前の風土になれば、会社が指示を出さずとも従業員同士でスキル向上を図れるようになります。

(6)自社に適した外部のリソースを活用する

育成ノウハウが不足していることは、中小企業にとって大きな課題です。そのため、自社に足りないノウハウについては、人材育成の専門会社や経営コンサルタントなどの外部リソースを活用することも検討しましょう。例えば、外部研修やセミナー、経営勉強会などは、社員にとって新しい視点を得られる貴重な場です。ただ、人材育成のサービスは企業の目標や風土、対象者の年齢や役職によって、最適なものが異なります。だからこそ、外部リソースを活用する際には、各プログラムの特徴を精査することでより成果につなげやすくなるでしょう。

人材育成では、専門家のノウハウを活用することも有効

中小企業においてはリソースが限られている半面、組織内の距離の近さがありますので、それを活かして経営者が積極的に人材育成の旗を振ることが大切です。不足しているノウハウやリソースについては、自社だけで完結させるのではなく、外部の専門家を頼ることも必要だと言えるでしょう。

ちなみに当社では、人材育成・研修のサービスを提供し、これまで幅広い業界で企業様の成長を支援してきました。当社の人材育成の特徴は、経営者様への丁寧なカウンセリングによって経営課題を見極めたうえで、最適な教育方法をご提案できることです。さらに豊富な経験を積んだ当社のスタッフが現場に入り、直接指導するインストラクションコーチングも行っています。人材育成で課題をお持ちの際には、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。


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