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事業承継対策は何から始めるべき?【2022年最新】後継者・相続・税金など事業承継に係る対策方法を解説!

事業承継対策は何から始めるべき?【2022年最新】後継者・相続・税金など事業承継に係る対策方法を解説!

事業承継対策について、何をどのように進めていけばいいのか?検討している経営者の方向けに情報をお伝えします。いま、経営者の高齢化が益々進んでいます。その一方で後継者不在の状態にある企業も少なくありません。国や地方自治体、金融機関等が対策を打ち出してきているものの、現場に追い付いていないのが実態ではないでしょうか。

「そもそも事業承継対策は必要なのか?」「何を対策すれば万全と言えるのか?」など、疑問を抱える方も少なくありません。そこで今回は、事業承継対策の必要性や事業承継対策の具体的な流れ・ポイントについて分かりやすく解説します。(2022年9月14日更新)

※事業承継の全体像について知りたい方は、「【保存版】事業承継とは?円滑に行うための流れやポイントをわかりやすく解説!」も合わせてお読みください。

事業承継対策が必要な“3つ”の理由とは?

事業承継対策とは、事業承継で発生するかもしれない税金や後継者などの問題に対して、先んじて対策を施しておくことです。そもそも事業承継対策は、なぜ必要なのでしょうか。ここでは、3つの理由について解説します。

(1)「後継者難」による廃業を防ぐため

少子高齢化の影響を受けて、後継者探しはより難易度を増しています。最近では先の読めない社会状況から、「リスクを背負ってまで会社を継ぎたくない」と考える子ども世代も決して少なくありません。ただ、後継者の育成には一般的に5~10年かかるといわれています。後継者が見つからずに経営者が引退を迎えてしまった場合、後継者難による廃業に陥ってしまう可能性もあるかもしれません。そうなると、従業員の雇用を守り切れなくなってしまいます。だからこそ、後継者候補を早めに探し、育成しておくという事業承継対策が必要になるのです。

(2)「相続」に関するトラブルを防ぐため

事業承継では、親族間で相続のトラブルが起きる可能性があります。というのも、経営者としては後継者に全資産を引き継ぎたくても、ほかの親族がいた場合はそうもいきません。経営者の配偶者・直系尊属・直系卑属には「遺留分」という最低限の相続権が認められるからです。遺留分を主張されて後継者の取り分が減ると、経営にも支障が出ます。自社の経営権を握るには発行株式の2分の1、支配権を握るには3分の2が必要ですが、後継者がそれを満たせなくなる恐れも出てくるでしょう。だからこそ、相続問題は事前に対策しておく必要があります。

(3)「税金負担」「資金不足」による問題を解消するため

事業承継では、株式の評価額次第で多額の相続税・贈与税が発生する可能性もあります。後継者のなかには、会社を継ぐ意思があったとしても資金不足で断念せざるを得ない人もいるかもしれません。最悪の場合は納税のために、大切な資産を売却しなければいけないケースもあります。ただ、今では「事業承継税制」によって納税の免除を受けられたり、補助金で資金援助を受けたりできる場合も少なくありません。そのため、事業承継対策で税制や補助金を正しく理解し、「税金の負担が大きすぎる」「資金が足りない」という問題を防ぐことが大切です。

事業承継対策の流れとは?

事業承継対策は、具体的にどのように行えばよいのでしょうか。ここでは、3つのステップに分けて解説します。

(1)自社の現状を把握する

事業承継を円滑に進めるためには、まず自社の状況について把握しておく必要があります。まずは、後継者に引き継ぐべき資産の状況を調べましょう。例えば、株式の評価額や事業の売り上げ、不動産の有無、知的財産や許認可の種類など、さまざまな資産を可視化します。また、後継者の状況についても細かく調べることが重要です。例えば、「後継者の候補は親族内・社内にいるのか」「いるとしたら育成にどのくらいの時間をかけられるのか」などを検討します。このように現状を細かく理解しておくと、事業承継に向けて対策に着手しやすくなるでしょう。

(2)後継者・承継方法を決める

現状を踏まえたうえで、後継者と承継方法を決めます。事業承継の手法としては、子どもに引き継ぐ「親族内承継」、役員や従業員に引き継ぐ「社内承継」、外部の企業に引き継ぐ「M&A」が代表的です。親族内承継であれば、従業員や取引先から理解を得やすい一方、子どもが必ずしも経営能力が高いとは限りません。社内承継であれば、企業理念やビジョンを踏襲してもらいやすい一方、後継者に株式の売買資金がなく承継が難航するケースもあるでしょう。M&Aの場合は、承継先企業とのシナジー効果を期待できる一方、承継後に社風が大きく変わってしまう可能性も否めません。このように各手法のメリット・デメリットを理解したうえで、最適な承継先を選びます。

(3)事業承継計画を作成する

承継先を決めたら、「何を」「いつまでに」「どうやって」承継していくかを事業承継計画にまとめます。10年後に事業承継を完了させるのであれば、「○○年目までに株式をすべて譲り渡す」「後継者が○○歳になったら取締役に、○○歳になったら副社長に就任させる」などの動きを細かく決めていきましょう。また、各種税制度・補助金を活用したり、法律にのっとって契約書を作成したりするためには、専門家のサポートも必要です。弁護士や税理士、経営コンサルタントなどの協力を仰ぎながら、正しい知識とノウハウを活用して行うようにしましょう。

事業承継対策の方法・ポイント【1.後継者問題編】

事業承継対策は、【後継者】【相続】【税金・資金】のそれぞれに入念な施策を考えることが大切です。ここからは、3つの対策を順番に紹介します。まずは「後継者問題」の対策を解説しますので、参考にしてみてください。

(1)早めに後継者を探し始める

経営者は日々多忙なため、つい事業承継の対策をあと回しにしてしまうこともあるかもしれません。ただ、事業承継の完了までには長い年月を要することを意識し、後継者の人選はできるだけ早めにスタートしましょう。また、後継者の候補が社内にいる場合には、早期に本人へ事業承継の意思や予定を伝えておくことも重要です。それによって、後継者に「経営者になる」という覚悟を醸成させ、育成に向けたマインドセットもしやすくなります。

≪一緒に読みたい記事≫後継者不足の解決策とは?経営者がとるべき「4つ」の行動を紹介!

(2)企業としての価値を高める

事業承継を成功させるには、後継者から「事業を継ぎたい」と思われる会社であることが必要です。特にM&Aで事業承継する際は、魅力のある会社の方が承継先も決まりやすくなります。だからこそ、普段から経営者として企業価値の向上に尽力することも立派な対策です。例えば、主力商品の開発に取り組んだり、ブランディングを図ったり、余剰負債を返済して経営をスリム化したりと多角的に自社の価値を高めることが重要でしょう。

(3)後継者の育成環境を整える

スムーズに事業を引き継ぐには、後継者を育成するための環境を整えることも不可欠です。例えば、営業部や経理部など主要部門をローテーションできるようにしたり、関連会社の経営を任せたりするのもよいでしょう。また、社外のセミナーに参加させることで、財務や経営などの知識を体系立てて学んでもらえます。経営者自身のそばで帝王学を学んでもらうことも含め、より入念に育成施策・スケジュールを決めることが大切です。

≪一緒に読みたい記事≫後継者に求める資質とは?事業承継における後継者の選び方・育て方

(4)関係者の理解を促す

後継者が変わることで、従業員や取引先から何らかの反発を受ける可能性もあります。特に先代経営者に対して思い入れの深い古参社員からは、後継者が信頼を得るのが難しく、トラブルも起こりやすいです。そのため、事業承継の前から関係各所に理解を促しておくことも重要な対策です。例えば、後継者や親族、経営幹部を巻き込んで事業承継計画を作成したり、事業承継計画の内容をあらかじめ関係者に共有したりするのも有効でしょう。

(5)株式の配分を考える

株式が分散してしまうと、後継者が経営権を持てず、経営において意思決定しにくくなってしまいます。そのため、後継者に株式を集中させるだけでなく、好意的な株主に株式を保有してもらうことも大切です。例えば、「従業員持ち株会」を設立して従業員に自社株の保有を勧めるという対策もあります。また、「中小企業投資育成株式会社」(投資育成会社)に依頼するというのもひとつの手でしょう。投資育成会社とは、自己資金の充実を支援してくれる、政策実施機関のことです。投資育成会社から増資を受ければ、好意的な安定株主として株式を保有してもらえます。こうして計画的に株式の移転を進めることで、経営権の安定化を図ることができるでしょう。

事業承継対策の方法・ポイント【2.相続問題編】

親族内承継においては、相続で資産を引き継ぐケースも少なくありません。
ここでは「相続」にまつわる事業承継対策について解説します。

(1)遺言書を作成する

事業承継では、後継者以外から相続権を主張され、トラブルに発展するケースもあります。そのため、経営者が生前に遺言書を作成し、「誰に」「何を」相続するのか明確に決めておくことも重要です。相続分や遺産分割の方法を指定しておけば、後継者へスムーズに株式や資産を委譲することができるでしょう。ちなみに遺言書は、経営者が自筆で作成する「自筆証書遺言」と、2人以上の立ち合いが必要で改ざんの心配がない「公正証書遺言」の2つが一般的です。それぞれ手続きや費用が異なるので、弁護士の協力のもと作成することをおすすめします。

(2)生前贈与を活用する

遺産相続で争いになりそうな資産については、生前贈与を活用するという方法もあります。生前贈与とは、株式や事業用資産を、経営者から後継者へ生前に承継することです。生前贈与で後継者へ重要な資産を譲り渡しておくことで、別の親族から相続を主張される心配もなくなるでしょう。また、生前贈与は相続税の軽減対策にもつながります。というのも、生前贈与は「暦年贈与」の手法を選択すれば、年110万円以下の贈与には贈与税がかかりません。つまり、110万円以下の贈与を毎年繰り返すことで、実質的には課税なしで資産を承継できます。

事業承継対策の方法・ポイント【3.税金・資金問題編】

事業承継において後継者の悩みの種となるのが、税金負担と資金不足です。
最後は、こうした「税金・資金」の問題に関する事業承継対策について解説します。

(1)事業承継税制を活用する

事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。平成30年の改正で特例措置が創設され、納税猶予の割合が80%から100%に引き上げられました(※)。つまり、条件を満たせば、相続税・贈与税が全額猶予になるということです。ただ、要件の解釈や申請書の作成には専門的な知識が求められます。よりスムーズに事業承継を行うために、税理士のサポートも受けながら活用を検討しましょう。

※参考:法人版事業承継税制|国税庁

(2)事業承継補助金を活用する

事業承継補助金とは、事業承継をきっかけに新しいチャレンジを行う事業者に対して、国から支給される補助金のことです。具体的には、新たな取り組みに伴って生じる人件費や設備費、マーケティング調査費などを最大1,200万円支援してもらえます(※)。あくまで新商品の開発や販売方式の導入といった、新たな挑戦を行う企業が対象です。そのため、審査は厳しくなる可能性もありますが、活用すれば事業承継をより有利に進められます。

※参考:事業承継補助金|中小企業庁(PDF)

(3)相続財産を減らす

相続税の課税額は、財産の金額が多いほど大きくなってしまいます。そのため、財産そのものを減らすことも、ひとつの節税対策です。例えば、贈与税がかからない範囲で生前贈与を行っておくという方法もあるでしょう。また、税金の対象にならないお墓や仏壇(非課税財産)を購入したり、購入価格よりも評価額の低い不動産を購入したりする方法もあります。資産の組み換えや軽減によって、後継者への負担も抑えることができるでしょう。

(4)株価対策による節税を図る

贈与税や相続税は、自社株式の評価額によって変動します。そのため、意図的に株式の評価額を下げるというのも節税対策のひとつです。非上場株式の評価額は基本的に「純資産」「利益」「配当」で決まるため、これらを下げることで株式の評価額を抑えられます。例えば、生命保険に加入して利益を圧縮したり、役員退職金によって資産を減らしたりという方法が考えられるでしょう。こうした株価対策はほかにもさまざまな方法があり、税制度に関する詳しい知識とノウハウが必要です。そのため、税理士の助言も受けながら進めることをおすすめします。

(5)相続時精算課税制度を活用する

贈与税の課税方法によっても、節税を図ることが可能です。贈与税の課税方法には、「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」があり、一定の要件を満たせば後者を適用できます。相続時精算課税制度が適用されれば、贈与を受けた財産の合計額から2,500万円の特別控除を受けることが可能です。つまり、2,500万円未満の財産であれば非課税になるため、節税につながります。ちなみに暦年贈与の課税方法では、年110万円以下の贈与には課税されません。どちらの手法が良いかは、それぞれのメリットや自社の資産状況も踏まえて判断することが大切です。

事業承継対策は、専門家の力を借りて早めの動き出しを

十分な事業承継対策を行うためには、長い年月を必要とします。そのため、できるだけ早めに動き出し、事前にリスクを予防しておくことが大切です。また、対策には専門的な知識やノウハウも求められます。そのため、事業承継対策を始める際には、士業や経営コンサルタントなどの専門家に相談し、協力を仰ぐことも重要でしょう。

ちなみに当社では、経営者様との対話を通じて本質的な経営課題を解決する「経営カウンセリング」のサービスを提供しています。後継者探しや育成、社内の意見調整、事業承継計画の作成など、事業承継対策についても幅広くご支援することが可能です。事業承継対策に着手する際には、ぜひお気軽に当社までお問いください。

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