事業承継に悩む経営者の方へ|事業承継問題の解決に向けた「5つ」の方法を紹介!

「事業承継に取り組みたいけれど、問題が山積みで何から着手すればよいか分からない」という経営者の方も多いかもしれません。そこで今回は、「事業承継における問題点」や「解決に向けたポイント」を分かりやすく解説します。また、事業承継問題に困ったときの相談先についても紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。(2022年8月29日更新)
※事業承継の全体像について知りたい方は、「【保存版】事業承継とは?円滑に行うための流れやポイントをわかりやすく解説!」も合わせてお読みください。
事業承継を難航させる原因・問題点とは?
そもそも事業承継を難航させる原因・問題には、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、大きく8つの問題点について解説します。
(1)後継者がいない・育たない
最近では少子高齢化の影響に伴って、後継者候補となる若手世代が減っています。加えて、従来のような「親の事業は子どもが継ぐ」という価値観が薄れてきているのが現状です。そのため、経営者が子どもに事業を継がせることをためらい、事業承継が進まないケースも少なくありません。また、後継者の育成には一般的に5~10年かかるといわれていますが、特に中小企業では経営者・後継者ともに多忙を極めており、なかなか育成に時間を割けないのが実情です。結果として、事業承継の時期が遅れてしまうという例も珍しくないでしょう。
≪一緒に読みたい記事≫後継者不足の解決策とは?経営者がとるべき「4つ」の行動を紹介!
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(2)経営状態が安定していない
経営状態が良くないがゆえに、事業を引き継ぐことをためらっている経営者も少なくありません。事業承継では資産も引き継がれますが、同時に負債や経営リスクもそのまま引き継がれます。「継がせる不幸」という言葉があるとおり、負債をため込んだままでは後継者に負担をかけてしまう可能性もあるでしょう。特に今は先読みの難しい不安定な社会状況のため、余計に経営状態が安定せず、事業承継が遅れているケースもしばしば見られます。
(3)ワンマン経営で将来に不安がある
いわゆるワンマン経営で、経営者自らが強いリーダーシップで経営を進めている企業も少なくないでしょう。ただ、ワンマン経営は「会社に求心力が生まれる」というメリットがある一方、「イエスマンが増えてしまう」「No.2が育ちにくい」というデメリットがあるのも事実です。そのため、経営者が事業を退いた際、会社が一気に求心力を失う危険性もあります。こうした世代交代への不安が、事業承継の妨げになっている企業も珍しくありません。
(4)周囲からの理解を得られていない
事業承継では、後継者と古参社員が対立するケースもあります。古参社員は先代経営者の経営手法に愛着があるため、なかなか後継者の新しい方針を受け入れられない場合もあるでしょう。また、M&Aや外部招聘(しょうへいによって社外から経営者を招くことになると、社風や経営方針が大きく変わる可能性もあります。そのため、事業承継に伴って従業員や取引先などから反発が生まれ、最悪の場合には大量退職や業績悪化のリスクも生じるでしょう。
(5)相続トラブルの可能性がある
親族内承継においては、相続で資産を承継する場合もあると思います。しかし、後継者以外の親族と相続トラブルが発生するケースも珍しくありません。というのも、経営者の配偶者や子、孫には「遺留分」と呼ばれる最低限の相続権が認められているからです。もし遺留分を主張された場合、後継者の資産が減ってしまう可能性もあるでしょう。結果として後継者に株式を集中させることができなくなり、経営権を保てなくなるというリスクもあります。
(6)後継者の資金確保が難しい
社内承継で役員や従業員に事業承継する場合、株式譲渡で経営者の株式を買い取ってもらいます。ただ、株式購入には相当の費用が必要で、資金確保が難航するケースも少なくありません。銀行から追加で融資を受けるにしても、相応の信用が不可欠です。また、親族内承継で相続・贈与によって資産を引き継ぐ場合でも、高額の相続税・贈与税が後継者にのしかかることもあります。こうした資金難から事業承継が進まないこともあるでしょう。
(7)個人保証の引継ぎが難しい
中小企業は金融機関から借り入れを行う際に、経営者が会社の保証人となる「個人保証」の契約を結ぶケースもあります。そのため、事業承継では個人保証の引き継ぎも求められるケースが珍しくありません。特に業績が安定していない企業の場合、後継者が個人保証で相応のリスクも背負い込むことになります。そのため、後継者本人が難色を示す可能性があるだけでなく、後継者の家族から事業承継に反対される場合もあるかもしれません。
(8)相談できる相手がいない
事業承継税制や各種補助金をはじめ、事業承継を有利に進められる施策は数多くありますが、手続きや契約が複雑なため、税制度や法律についての広範囲な知識が求められるケースがほとんどです。その際、身近に相談できる専門家がいなければ、本来受けられるはずの恩恵も受けられなくなります。また、「自社の問題だから外部の人に相談しても意味がない」と経営者がひとりですべてを背負い込むと、途中で挫折してしまう可能性もあるでしょう。
事業承継問題を解決するための“5つ”の方法・ポイントとは?
事業承継のさまざまな問題を解決するには、どのようなことに取り組めばよいのでしょうか。
ここでは、事業承継問題の対策として5つのポイントを紹介します。
※事業承継の対策について詳しく知りたい方は、「事業承継対策は何から始めるべき?後継者・相続・税金の対策方法を解説!」も合わせてお読みください。
(1)早期に準備へ動き出す
当然ながら、事業承継は早めに動き出すのが最善です。10年後の事業承継を見据えて、後継者探しや育成に取り掛かるようにしましょう。後継者には早めに事業承継の意思や予定を伝えておくことで、本人の覚悟も醸成できます。また、相続トラブルを防ぐために、早めに親族と話し合ったり、遺言書を作成したりしておくことも重要です。仮に相続で経営権が分散してしまう可能性が考えられるなら、従業員持ち株会やメインバンクなどの「安定株主」を持つという対策もあります。いずれにせよ、早めの準備によってスムーズな対策が施せるでしょう。
(2)いくつかの選択肢を持っておく
事業承継というと、親族内承継を真っ先に考えるケースも多いかもしれません。ただ、親族から承継を断られる可能性も考慮して、さまざまな選択肢を持っておくことも重要です。事業承継には、役員や従業員に引き継ぐ「社内承継」、社外の人物や企業に引き継ぐ「M&A」、そのほかに株式公開などの方法もあります。それぞれのメリット・デメリットも踏まえたうえで、より幅広い選択肢のなかから後継者を探すことで、スムーズに引継ぎできるでしょう。
また、親族内承継を行う場合には、資産を引き継ぐ方法にもいくつかの選択肢があります。相続トラブルになりそうであれば、相続ではなく「生前贈与」で後継者に資産を集中させる手もあるでしょう。また、課税方法にも「暦年贈与」や「相続時精算課税」などの種類があり、資産状況や選択次第では大きな節税対策になります。そのため、弁護士や税理士などの専門家に協力を仰ぎながら、適切な選択ができるよう準備することが大切です。
(3)経営課題・財務状況を明らかにしておく
自社の経営状況について把握していないと、承継後に思わぬリスクが発生しトラブルになる可能性もあります。そのため、自社の経営課題・財務状況はできるだけ可視化しておくようにしましょう。その際、目に見える資産だけでなく、許認可や知的財産、社員のノウハウ、自社の競合優位性といった目に見えない資産も明らかにしておくと承継もスムーズです。また、株式の買い取りに当たって銀行から融資を受ける際にも、財務の健全度は問われます。財務諸表を正しく作り、定期的に提出しておくことで、金融機関からの信頼も得やすくなるでしょう。
(4)事業承継計画を緻密に立てる
事業承継を何となく進めてしまうと、予期せぬリスクが起こる可能性が高いです。そのため、まずは10年後の事業承継を見据え、いつ・誰に・どのように承継するのかを事業承継計画にまとめましょう。その際、「どの資産を何年目までに引き継ぐか」「後継者に何年目までに重役に就いてもらうか」など、できるだけ細かく計画を立てることが大切です。事業承継計画には多角的な視点が必要なので、経営者ひとりで完結させるのは至難の業だと言えます。そのため、経営幹部や後継者も巻き込みながら計画を立て、情報を共有することも重要です。
(5)事業承継税制を活用する
事業承継における税金の負担を抑えるには、税制の特例措置を上手に活用することも大切です。例えば、「事業承継税制」(※1)が挙げられます。事業承継税制とは、一定の要件を満たせば相続税・贈与税が猶予される制度のことです。平成30年の改正によって特例措置が設けられ、相続税・贈与税が最大100%猶予されるようになりました。手続きが複雑なため、専門家のサポートも受けながらぜひ活用したい制度です。また、事業承継を機に新しいチャレンジを行う企業に支給される「事業承継補助金」(※2)や、中小企業信用保険法の特例による金融支援(※3)などの公的な援助もあります。合わせて活用することで、より事業承継を有利に進められるでしょう。
※参考1:法人版事業承継税制|国税庁
※参考2:事業承継補助金|中小企業庁
※参考3:中小企業信用保険制度の概要(令和3年4月1日現在)|日本政策金融公庫
事業承継問題に悩んだときの相談先とは?
事業承継の問題を解決するには、専門家のサポートが欠かせません。
ここでは、事業承継問題で悩んだ際に活用すべき、代表的な6つの相談先を紹介します。
(1)士業(税理士・弁護士・公認会計士など)
事業承継において、税制度や法律に関して専門的な指導を行ってくれるのが、税理士や弁護士などの士業です。事業承継を円滑に行ううえで、士業のサポートは必須と言えるでしょう。例えば、以下のような相談先があります。
◆税理士:税務のプロとして、生前贈与や相続税のアドバイス、株価の評価などのサポートを行ってくれます。
◆弁護士:法律の専門家として、相続問題の解決、遺言書やその他契約書面の作成などを行ってくれます。
◆公認会計士:監査・会計のプロとして、会計の適正化や個人保証の解除などについてアドバイスしてくれます。
税制度や補助金の活用、書面の作成などの際には、適宜こうした士業に協力を仰ぐことが大切です。身近に相談できる士業がいない場合には、金融機関や経営コンサルタントから紹介を受けることも検討すべきでしょう。
(2)商工会議所
商工会議所は、日本全国に515か所(※)あり、中小企業に向けて多様なサポートを行う機関です。事業承継に関しては、経営指導員が窓口でアドバイスしてくれたり、役立つセミナーを開催してくれたりします。また、相談を通じて各種士業を紹介してもらうことも可能です。無料で気軽に活用できる、身近な相談相手だと言えます。
※参考:日商の概要|日本商工会議所
(3)事業承継・引継ぎ支援センター
事業承継・引継ぎ支援センター(※令和3年に名称変更)とは、各都道府県に設置され、事業承継について幅広いサポートを行う公的機関です。具体的には、承継コーディネーターが窓口で相談に乗り、経営課題の把握や事業承継に関する診断、民間のM&A支援業者を活用したマッチングなどを行ってくれます。事業承継に関する相談に無料で乗ってもらえるのに加え、社外から広く承継先を探したい場合にも有効なサービスと言えるでしょう。
※参考:事業承継・引継ぎ支援センターへリニューアルのお知らせ|事業承継・引継ぎ支援センター
(4)よろず支援拠点
よろず支援拠点とは、国が各都道府県に設置している、無料の経営相談所のことです。具体的には、新規顧客の獲得や売り上げ向上に向けたアドバイスを行ったり、資金繰りや事業再生に向けた対策を考えたりしてくれます。事業承継の相談はもちろんですが、経営課題の見える化や財務状況の改善を図りたいときに活用したい相談先です。
(5)金融機関
金融機関でも、事業承継における幅広い相談に乗ってもらえます。特に普段から取引のある銀行であれば、経営状況も考慮したうえで、士業の紹介や融資に向けたアドバイスを行ってくれるでしょう。ちなみに最近では行員が「事業承継アドバイザー」の資格を保有しているケースもあり、専門的な相談に乗ってもらえる場合もあります。
(6)経営コンサルタント
経営コンサルタントとは、経営に関する相談に幅広く乗り、経営改善や人材育成を行ってくれる専門家・専門企業です。経営コンサルタントによって業務領域はさまざまで、経営課題の把握や分析から、改善に向けたアドバイス、事業承継対策として後継者育成や社内調整、士業の紹介まで幅広くサポートしてくれる会社もあります。事業承継の成功はもちろんですが、事業承継を機に経営改善や組織改革を図りたい場合に活用したい相談先です。
※詳しくは「経営コンサルティングとは?導入効果や失敗しないコンサルタントの選び方を紹介!」をご一読ください。
事業承継問題は、専門家のサポートが解決のきっかけに
事業承継では、後継者不足や相続トラブルなど、さまざまな問題に直面する可能性もあります。これらを解決するには、各種法律や税制度などの専門知識が不可欠です。そのため、士業や経営コンサルタントをはじめ専門家の協力を仰ぎ、伴走してもらうことが大切でしょう。
当社では、経営者様との対話を通じて本質的な経営課題の解決を図る「経営カウンセリング」のサービスを提供しています。経営課題の分析や風土改善、各種研修による後継者の育成まで幅広く事業承継のサポートが可能です。事業承継問題に悩んだ際には、ぜひお気軽に当社までお問い合わせください。