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家族経営を成功させる“5つ”のポイントとは?思うように進まないケースが多い事業承継の対策も紹介!

家族経営を成功させる“5つ”のポイントとは?思うように進まないケースが多い事業承継の対策も紹介!

家族経営については、デメリットが多いという印象をお持ちの方も少なくないのではないでしょうか。お家騒動やガバナンスへの不安といったネガティブな印象が実際にある一方で、メリットとしての長期的な繁栄につながるビジネスモデルとして世界から注目を集めてもいるのです。創業100年以上の企業は3万社以上あると言われています。また、その数は世界の100年企業の4割を占めるとされていて、その背景には家族経営のあり方が影響しているともいわれています。実は日本の老舗企業の9割以上が、家族経営(同族経営)だと言われています。そこで今回は、「家族経営のメリット・デメリット」をご紹介し、その上で「家族経営を成功させるためのポイント」を分かりやすく解説します。また事業承継における対策も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。(2022年9月6日更新)

※事業承継の全体像について知りたい方は、こちらも合わせてお読みください。

【保存版】事業承継とは?円滑に行うための流れやポイントをわかりやすく解説!

 

そもそも家族経営(同族経営)とは?

家族経営とは、会社の所有または経営において、特定の一族が支配的な地位にある経営スタイルを指します。家族経営は、「同族経営」「ファミリービジネス」などと同義の言葉としても扱われることが一般的です。また、家族経営を行う企業のことを「同族企業」と呼ぶこともあります。ちなみに法人税法に基づく国税庁の区分(※)では、発行株式の総数または出資額の50%超を上位3株主グループが占めている企業を、同族企業と定義しています。

※参考:会社標本調査|国税庁

家族経営の現状とは?

家族経営というと、家族で営む小規模な企業がイメージされがちかもしれません。ただ、実は日本企業のほとんどが家族経営というのが実態なのです。国税庁の「会社標本調査」(※1)によれば、日本企業(単体法人)の96.4%が同族会社に位置づけられています。また、世界的に見て日本は老舗企業が多いのが特徴で、100年以上続く企業の9割以上が家族経営(※2)とも言われるほどです。さらに家族経営がビジネスとして成功している例も珍しくなく、上場企業の53%が同族経営(※3)とも言われています。上場企業のなかには、誰もが知る世界有数の自動車メーカーや食品会社なども含まれており、まさに日本は家族経営の大国と言っても過言ではないのです。

※参考1:会社標本調査(平成30年度分統計表)第11表 法人数の内訳|国税庁
※参考2:日本の同族経営になぜ今、世界は注目するのか|日経ビジネス
※参考3:上場企業の53%!知られざる「同族企業」大国ニッポン|週刊ダイヤモンド

家族経営のメリットとは?

家族経営(同族経営・同族企業)のメリットとは、一体何なのでしょうか。ここでは、大きく3つ紹介します。

(1)スピーディーに意思決定できる

非同族企業の場合は、株主と経営者が分離しており、株主から拒否権を行使されることもあります。株主から確実な配当や利益を求められ、経営者が顔色をうかがいながら経営を進めなければいけないケースもあるでしょう。一方の家族経営は、所有と経営が一体化しており、経営者が株主総会で支配権を握っている企業も珍しくありません。そのため、経営者が株主に対して遠慮しすぎる必要がなく、意思決定を下しやすいのが特徴です。経営者としてさまざまな経営手法・戦略を即断即行でき、事業の成長につなげていけるのがメリットと言えるでしょう。

(2)長期的な繁栄を目指せる

非同族企業の場合、基本的に社長の任期が決まっているため、任期の範囲内で経営戦略を練るしかありません。手堅く利益を出すために、短期的な施策に集中せざるを得ないこともあるでしょう。一方の家族経営では、経営者が何年・何十年にもわたって手腕をふるい続けられることも少なくありません。そのため、たとえ短期間で損失が発生したとしても、企業としての長期的な利益・繁栄を目指して大胆な経営戦略を実行することも可能です。

(3)経営理念の浸透が図りやすい

家族経営においては、経営者が絶対的な力を持つため、従業員にもメッセージを受け入れられやすいのが特徴です。だからこそ、経営理念やビジョンを社内へ浸透させやすくなります。結果として、組織の一体感が高まり、協業しやすい環境が生まれる場合もあるでしょう。また、経営理念が浸透することで、対外的に見ても統一感のあるブランドイメージを醸成しやすくなります。方法次第では、企業イメージの向上につなげることも可能です。

家族経営のデメリットとは?

家族経営には、当然ながらデメリットも存在します。ここでは、大きく3つのデメリットについて解説します。

(1)ガバナンスが欠如しやすい

家族経営においては、所有と経営が分離していないがゆえに、企業によっては経営者の独善を許してしまう場合もあります。万が一経営者が企業倫理に反するような行動をしていても、取締役や社員たちが見抜けなかったり、遠慮して止められなかったりするケースもあるでしょう。このように企業のガバナンス(統治)が欠如することで、コンプライアンス違反や不祥事につながってしまい、対外的なイメージダウンが起きてしまう可能性もあります。

(2)社員間に格差が生まれやすい

人事評価に偏りが出やすいのも、家族経営の特徴と言えます。例えば、一般社員よりも経営者の親族の方が高い評価や報酬を得られたり、昇格しやすくなったりという例もあるでしょう。また、経営者に気に入られた社員だけが、出世につながりやすくなるケースもあるかもしれません。このように社員間に格差が生まれやすい状態になると、社内で不満が高まりやすくなり、最悪の場合には大量退職や業績悪化などにつながる恐れがあります。

(3)風土の変革が起こりにくい

家族経営においては、経営者の裁量が強くなるため、周囲の意見が採用されにくい状況が起きます。そのため、社内で新しいアイデアが生まれにくく、経営手法や事業内容の刷新が起こりにくくなるでしょう。また、経営者が何年も同じポジションにい続けることで、年を経るごとに時代の流れについていけなくなることもあります。気づけば市場の中で競合他社から差をつけられ、業績の慢性的な低下につながる可能性もあるかもしれません。

家族経営を成功させるポイントとは?

家族経営を成功させるためには、何を意識すればよいのでしょうか。
ここでは、大きく5つのポイントについて解説します。

(1)ガバナンス体制を強化する

経営者がより客観的な視点を持って経営できるように、ガバナンス体制を強めることも大切です。ひとつの方法として、「社外取締役」の設置が挙げられます。社外取締役とは、自社に属さず客観的な立場で経営の監督をしてくれる経営幹部のことです。中小企業においては縁遠い存在に思えるかもしれませんが、家族経営ではどうしても視野が狭くなるため、社外の視点が求められます。予期せぬコンプライアンス違反を防ぎ、経営上の貴重なアドバイスを受けられる点で非常に有益でしょう。また「監査役」を設置し、会計や財産状況のチェックを行ってもらうのも効果的です。ガバナンス体制を強化することで、対外的なイメージ向上にもつながりやすいでしょう。

(2)公私の区別をはっきりとつける

家族経営においてよく取り沙汰されるのが、経営者による「会社の私物化」です。クリーンな家族経営を行うためには、経営者自身が意識改革し、公私の区別をはっきりとつけることも重要です。例えば、「会社の資金には手をつけない」「人事評価に私情は挟まない」といった基本的な姿勢を持つようにしましょう。また、トップの誠実な姿勢は、自然と社員にも伝わるものです。経営者が手本となることで、良い社風の醸成にもつながります。

(3)新しい挑戦へ意欲を持つ

古い手法や過去の成功体験にとらわれすぎると、柔軟な発想ができなくなってしまいます。だからこそ、世間に対して幅広くアンテナを張り、新しいことへ挑戦する意欲を持ちましょう。例えば、Webを活用したブランディングや他社とのオープンイノベーションなどを検討するのもよい方法です。また、経営陣や社員からのアイデアを頭ごなしに否定するのではなく、前向きに議論し、意見を交換し合うことで社内の活性化にもつながります。

(4)透明性の高い評価システムにする

評価や報酬が経営者の私情によって決められてしまうと、社員からの反発を招きかねません。そのため、できるだけ透明性の高い評価システムを導入することも大切です。一例として、MBO(目標管理制度)が挙げられます。MBOとは、社員に組織目標とリンクするような個人目標を立ててもらい、その達成度合いによって評価を決める人事制度です。報酬制度と連携させることで、具体的な目標に基づく納得度の高い処遇を行うこともできます。このように頑張りが正当に評価される仕組みを取り入れることで、社員の意欲向上も図りやすいでしょう。

(5)ビジョンへの共感を深めてもらう

家族経営では、企業理念やビジョンの浸透を図りやすいのがメリットだと言えます。ただ、理念が浸透していることと、社員から共感や納得を得られていることは別物です。場合によっては、企業理念が押しつけに感じられ、社員のモチベーションを下げる原因になっているかもしれません。だからこそ、企業理念・ビジョンへの共感を深めてもらうための施策を行うことも大切です。例えば、理念浸透研修を実施して、経営者自らビジョンに込めた思いを語るのもよいでしょう。社内報を作り、より社員にとって親しみやすい形で理念を発信するのもひとつの方策です。より共感性・納得度の高い経営理念やビジョンを発信することで、組織の一体感を高められます。

家族経営における事業承継の対策とは?

家族経営における最大の課題のひとつが、「事業承継」です。家族経営では親族内承継で子どもに事業を引き継ぐことが一般的ですが、何らかの問題に悩まされる企業も少なくありません。例えば、「子どもから断られた」「後継者が古参社員と対立した」「ほかの親族と相続トラブルが起こった」などの課題です。こうした家族経営における事業承継問題を解決するには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、5つの観点から解説します。

※事業承継の対策や流れについて詳しく知りたい方は、「事業承継対策は何から始めるべき?後継者・相続・税金の対策方法を解説!」も合わせてお読みください。

(1)できるだけ早く後継者の育成に取り組む

後継者の育成には、一般的に5~10年かかると言われています。経営者が引退間近で着手したのでは、手遅れになる可能性もあるでしょう。そのため、事業承継は企業の存続における最優先事項と考え、早めに対策へ動き出すことが大切です。また、後継者を確実に決めるためにも、候補となる人材には早めに事業承継の意思を伝えておく必要があります。それによって後継者本人の覚悟を醸成し、育成にも取り組みやすくなるでしょう。

≪一緒に読みたい記事≫後継者に求める資質とは?事業承継における後継者の選び方・育て方

≪事業承継事例≫親族内承継ならではの難しさを克服!ー㈱富士通商様

(2)後継者以外の親族へ配慮する

親族内承継で起こりがちなのが、後継者以外の親族との相続トラブルです。というのも、経営者の配偶者や子ども、孫には「遺留分」と呼ばれる最低限の相続権が認められるからです。親族から遺留分を主張された場合、後継者への株式の集中が難しくなり、経営権が揺らいでしまう恐れもあるでしょう。だからこそ、事前に親族会議で相続内容について話し合ったり、遺書で資産の配分について明記したりしておくことも重要な準備だと言えます。

(3)関係者に理解を求める

急な事業承継で後継者へバトンタッチした場合、取引先や社員から反感を招く可能性もあります。そのため、事前に関係者に理解を求めることも大切です。例えば、親族会議の場で入念に事業承継計画を立てたり、計画の内容を社員にも公表したり、後継者を金融機関や取引先に紹介したりという方法があります。また、いきなり後継者に社長を任せるのではなく、徐々に高い役職に就かせるようにすれば、社内での理解も得やすくなるでしょう。

(4)後継者の税負担・資金不足に対策する

資産の分配方法によっては、後継者に高い税金の負担がかかる可能性もあります。そのため、資産をどのように引き継ぐかは入念に検討する必要があるでしょう。例えば、生前贈与の「暦年贈与」という課税方式であれば、年110万円以下の贈与には贈与税がかかりません。そのため、年110万円以下で何年かかけて少しずつ資産を引き継ぐ方法もあります。また「事業承継税制」を活用すれば、特定の要件を満たすことで贈与税・相続税の猶予を受けることも可能です。節税対策は、士業からも専門的なアドバイスを受けることでより円滑に進められます。

(5)幅広い選択肢を用意しておく

家族経営である以上、親族に事業を引き継ぎたいという想いもあるかもしれません。ただ、親族から断られ、万が一後継者が見つからなかった場合は廃業の可能性も出てきます。企業を存続させ、社員の雇用を守るためには、より幅広い承継方法を検討しておくべきでしょう。近年は外部招聘(しょうへい)やM&Aによる事業承継を成功させる企業も珍しくありません。事業承継の進め方については、一度親族内でじっくりと話し合っておくことが重要です。

家族経営の成功には、専門家のアドバイスが有効なケースも

家族経営においては、同族間での対立や後継者探しの難しさなど、さまざまな課題を抱える企業も少なくありません。その際、経営の豊富な知見を持つ第三者に介入してもらい、客観的にアドバイスをもらうことで状況が改善されることもあります。士業や経営コンサルタントなどの専門家に協力を仰ぐことも大切だと言えるでしょう。

≪ダウンロード資料:家族経営の会社の社長(父)と専務(長男)がいかに亀裂を修復させたか

ちなみに当社では、経営者様との対話を通じて本質的な経営課題を解決へ導く「経営カウンセリング」のサービスを提供しています。企業理念の浸透や社内の意識改革、後継者の育成など幅広い課題に対して、解決に向けたご支援が可能です。ぜひ家族経営における経営課題をお持ちの際には、お気軽に当社までお問い合わせください。


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