【旅館経営者必見】温泉旅館で求められる高い接客スキルと専門技術習得のススメ~顧客満足だけでなく採用活動の追い風にもなる専門スキル

コロナ禍により、2020年3月頃からサービス業全般での大きな売り上げ減少が続いてきました。感染拡大のほか、所謂、GOTO、県民割、全国旅行支援といった宿泊観光施設へ需要喚起策もあり客足も徐々にではありますが回復しつつあります。一気に予約の問い合わせが集中し、サイトやサーバーがダウンしてしまうケースも起きています。
一方、各温泉旅館様ではウィズ・アフターコロナ、ポストコロナを見据えて、〝選ばれるお宿〟となるために必要な対策を検討されています。その中でも、顧客満足に直結し、お客様のリピートに大きく影響を与えるのが「接客スキル」。今回は、温泉旅館やホテルなど宿泊施設で求められる「接客スキル」を高めるための具体的な取り組みについてお伝えいたします。採用活動・人材確保の面でも自社の強みをだすために、ぜひご参考にしていただけたら幸いです。(2022年10月14日更新)
期待感が高いからこそ求められる接客対応力
旅、温泉に行くのは、誰しも特別なことと思います。ワクワクしながら、数あるホテル、旅館の中から選んで、期待を持って訪れます。ウェブサイトで検索し、宿泊サイトや口コミ情報をチェックする中で選ぶわけですから、そもそも期待が高い状態のお客様となります。お宿に宿泊する目的は、温泉につかって、美味しいものを食べて、ゆっくりと過ごすなど、特別な時を楽しむことだと思います。期待感を高く持ったお客様が実際に宿泊し、満足感を味わえるのか否か。評価に影響を与える要因の一つが「接客スキル」。
応対するスタッフによっての差。或いは、以前泊った時との対応の違い。感じ方はお客様お一人お一人によっても違います。接客業の難しさがここにあります。臨機応変な対応力が求められます。
温泉旅館における接客応対の現状~仲居が担ってきた旅館のおもてなし文化
1)日本的おもてなしの象徴ともいえる温泉旅館の接客サービス
ご存じの通り、温泉旅館においては「仲居」という専門的なサービススタッフがお客様対応の中心です。女性で、豊かな接客経験を持ち、絶妙なタイミングでお客様に優しさと温かさを感じさせる。文化と言ってもいい日本独自のサービススタイルです。和服姿でお客様案内から配膳までを手際よくこなすイメージがあります。旅館業に無くてはならない存在ともいえる専門的職種です。温泉旅館というと仲居さんをイメージされる方も少なくないと思います。
2)スタッフの高齢化、人材難、採用の難しさ
しかし最近は、仲居さん達によるサービスにも変化が出てきています。高齢化と人材難・人材不足の波が押し寄せています。経験を積む中で、各地のホテルや旅館で活躍してきた仲居さんたちが、昭和から平成にかけては一定数おられました。その方々も年齢を重ね、高齢化により引退していっております。また若手人材が育ちにくい(時代に合いにくい)中で、なり手が少ないのも事実です。採用の取組みに課題を抱える旅館様も少なくありません。残念ながら、古き良き温泉旅館のおもてなしに変化が出てきているのが現実です。人材不足は深刻で、外国人労働者に頼らざるを得ない状況が、コロナ以前には顕著になってきていました。
顧客満足に影響力が大きい接客応対と人材確保・育成の難しさ
1)ちょっとした一言によって変わってくる顧客満足の違い
そのような中、育成もままならない中、見よう見まねで習得したサービスでは、先の様な期待感を膨らませた顧客を満足させるための接客スキルに達するには程遠いものとなってしまいます。折角、数ある中で選んだ旅館なのに、スタッフの一言やちょっとした振舞いによって、満足度が一気に下がってしまう。以前であれば、やんわりと熟練の仲居さんなど先輩がフォローしてくれた環境も少なくなっています。贅を尽くしたハードや料理などの素晴らしさも、スタッフの応対一つで評価が下がってしまうことさえ有り得ます。近年はウェブ利用が当たり前の中、口コミが大きく影響することは言うまでもありません。一度失った信頼に対するリカバリーの難しさ、失敗できない緊張感。旅館業以外のサービス業全般にも言えることですが、接客スキルは非常に重要だと言わざるを得ません。
2)育成の難しさ
都市部の他業種やブランド力が強いリゾート会社などに有能人材は集中し、人材の確保が難しい状況です。人材難・不足の中、人的リソースが必ず要る産業形態の温泉旅館は、アルバイトや季節労働者、更に外国人材で何とか補ってきました。育成に力を入れている旅館であっても、個性的な仲居さん達からすべてを習得するのには時間もかかります。
また、接客スタッフの一番のモチベーションにつながるのは、なんといってもお客様から感謝、良い評価をされたという体験です。先に挙げたように、お客様の目も厳しくなる中、漠然とした思いで接客に従事するのでは、なかなか成功体験を積むのも難しくなります。やっと採用したスタッフが辞めてしまう、離職率の高さも旅館業界の長年の課題でもあります。
≪一緒に読みたい記事≫ なぜ人材確保は困難なのか?採用成功と定着につなげる方法・取り組みを紹介!
温泉旅館が取り入れ始めた接客の専門スキル
1)接客サービスはそもそも専門職
シェフやソムリエと同様に、海外においては、ギャルソン(料飲サービス)やコンシェルジュ(お客様からの様々な要望対応)など、それぞれが専門性を持ったプロの接客業として認識されています。温泉旅館において仲居さんや接客スタッフは、時にギャルソン、時にコンシェルジュ、またルーム係と幾つもの仕事内容を対応するわけですから大変さは増します。一方で、お客様との信頼関係を作るための機会(タッチポイント)が増えるとも言えます。顧客満足に大きく寄与できる大切なポジションであり、だからこそお客様を満足させ得る専門的技術を持つことが重要になってきます。また、コロナ禍により宿泊客が施設内での飲食や購買を優先させているとのデータもございます。接客スキルによる信頼感の構築から、様々な宿の情報や魅力的商品の紹介などが売り上げアップにも直結してきています。
2)他社との差別化のために
温泉旅館は、ニーズによるすみ分けや各社レベルアップがなされ、お料理が良く、温泉も素晴らしく、客室や施設も充実しているのが当たり前となってきました。そんな中、顧客に更なる満足を与えるのは、「接客レベル」がキーポイントとなります。生産性向上の取組み、従業員の福利厚生の充実はもちろん必要です。その上で、繰り返しになりますが、お客様からの高い評価を得ている、喜ばれているというのが、接客スタッフにとって一番のモチベーションになるのは、昔から変わらない普遍的なポイントであると考えます。その為にも、接客の専門的スキルを身に付けることは、個々人にとっての大きな裏付けや自信にもつながり、結果お客様からの好印象につながっていきます。
3)特定技能のひとつ「サービス技能検定」-研修のほか採用活動の追い風にも
最近になって注目を持たれてきた「レストランサービス技能検定」という資格が有ります。これは、厚生労働大臣認可の一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会が、料飲接客サービスの技術・技能の向上を目的として設けられた唯一の国家資格でもあります。従来は、有能なサービスマンは都心部の有名ホテルやレストランにおいて技術を磨くのが常であり、地方のホテルや旅館にはなかなか人材が集まらない、採用できないといった状況に有りました。ここ最近になって、少しづつではありますが地方の温泉旅館においても資格取得者が出始め、就職希望者が集まらなかった旅館において、資格取得も出来ることにより採用・求人の追い風にされている話もございます。
弊社アンリミテッドクリエーションには「レストランサービス技能検定」の有資格者が在籍しており、クライアント様への資格取得のための研修・講座も開いております。ご興味が有る方はぜひご一報ください。
今こそ接客スキル向上の取組みを
料金や設備、広告等定量面での競争は激しさを増すばかりです。それだけを考えれば、資本力、ブランド力があるところに顧客は集中してしまい、体力の小さい施設では集客や発展は望めないこととなってしまいます。しかし、ハード面はもちろん、そこで出される料理や温泉の質などそれぞれに違いが有り、同じでは無いのが温泉旅館の魅力です。どの旅館にも必ず個性やストロングポイントがあります。その一つとして、接客スキルの強化を進める今がチャンスなのではと考えます。
■関連資料のご案内
・身内経営の温泉旅館/家族の関係改善が経営に直結―組織は人間の集まり
・【温泉旅館ー集客の秘策】顧客満足・感動体験を提供するには?今こそ実施すべき料飲サービススキルアップの施策
参考:
・一般社団法人日本ホテル・レストランサービス技能協会公式ホームページ
・旅館宿泊客の口コミデータ分析によるおもてなしの要因および顧客満足度との関係性(PDF)|九州産業大学 森下俊一郎氏
・接客とは何なのか? 接客の本質、プロが備えるべき技術など|株式会社三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ
・ホテルの職種と仕事内容が丸分かり!ホテル勤務者の1日の流れを公開|神田外語学院