【事業承継問題】跡を継ぐ意志の見えない後継者への対応策

跡を継ぐ意欲の見えない息子
ある勉強会において、次のような質問がありました。
「電気店を経営しているのですが、実は一緒に仕事をしている息子が、私の目から見ると、果たして本気で家業を継ぐ気があるのかどうか不安です。高校を卒業後、大学に進学。その後3年間ほど、同じ業界の大手の会社で修行を積んでから家に戻ってきました。一緒に働くようにはなったのですが、まるで他所の会社に勤めているような振る舞いで、後継者としてはまだまだ任せられません。もっと前向きに、跡を継ぐ意欲を見せてほしいのですが、どのように対応したら良いのでしょうか?」と、その社長さんはおっしゃいました。
ですが、同じ地域で一緒に弊社からのカウンセリングを受けている会社の方からうかがいますと、その息子さんは高校時代は野球部に入っていて、甲子園にも出場した爽やかなスポーツマンで、なかなかの好青年との評判です。
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相手の目に映る自分の姿
この場合、あれこれ対処する前に、まず考え方を整える必要が有ります。
父親である社長さんからみて
a. 頼りない行動の息子さんに問題があるのか
b. あるいは、一般的には好青年といわれる息子さんから見て、跡を継ぐ意欲の出ない店ではないのか
c. あるいは社長ご自身に魅力がないのか
問題がどこにあるのかを、まずもって考えてみる必要があります。冷静になって考えてみれば、息子さんが跡を継ぎたくなる店になっていて、尊敬される社長であるならば、日々の仕事にやりがいを見つけることが出来るに違いないでしょう。また、お客様や社長から認められ、自らも楽しみのある仕事ならば、徐々にでも頼りがいのある息子さんになってくるのではないでしょうか。
つまり、社長自身のテーマとして捉えれば、自分に欠けている事実、あるいは不十分な事実の改善でほとんど解決できるのではないかということを確認しました。具体的には、社長自身は何故この電気店を始めたのか? そして現在、目指していることは何なのか? もう一度、社長自身の目標、夢、将来のヴィジョンをご自身で確認をしてみてはいかがでしょうか?とお話ししました。
現実の問題ばかりに目がいって、ともすれば自分が本来目指すべき目標を見失い、日々、目の前の問題や課題に振り回されている事実はないかということです。不況、不景気、売上ダウン、資金繰りの難しさ等々から、気配りが出来ずに、社員や取引先、お客様などに不平不満が増えてはいないだろうか。もし、自分自身の中に誇りや喜びを失っている状態では、息子に跡を継いでほしいと伝えても、喜んで跡を継ぐ気になって、後継者らしく行動することは 極めて難しいことではないでしょうか・・・と。
要は、相手の目にどのように映っているのかにポイントが有ります。自分自身の姿は自分が一番分かっているようで、実は一番見えていないものです。この見えていない自分の姿が相手の目に映り、相手の思いや行動に多大な影響を与えます。第三者からのアドバイスが大事な理由もここに有ります。
≪参考コンテンツ:なぜ後継者が反発するのか~家族経営、親族内承継の難しさ≫
今回のケースでは、解決すべき課題が明確になったこの機会に、まず社長ご自身が仕事に目指してきたこと、今実現したい夢を整理した上で、息子さんとゆっくりと話し合ってみたら良いとご提案しました。出来れば二人だけで、ちょっと遠くに出かけ、美味しいものを食べ、ゆっくりと温泉に入るなどするのも良いでしょう。 ゆったりと二人で話し合うことをおすすめしました。はじめは警戒する或いは気恥ずかしさも有るかもしれないけれども、社長(父親)の真剣な思いで語る言葉に、息子さんもきっと話をまじめに受けとめてくれるに違いありません。
話すべきことは、今までの会社の経過を十分に話した上で、あと何年かは社長として指揮を執るけれど、何年後からは会社を息子に譲りたい。その間に社長としての力量を身につけ、父が果たせなかった夢、今やり遂げたいことを息子として果たしてもらいたいのだと。このような機会を絶好の機会と捉え、是非実現してみて下さいとお伝えしました。その社長は、弊社から言われたことは間違いないことと捉え、そのまま実行されました。その後、息子さんとの関係性にも変化が出て、今までとは全く違った気持ちで仕事に取り組めるようになりましたとの報告を聞いています。
今更二人で話し合うなんて、格好悪いし、恥ずかしくて出来ないなどと言っていたならば、永久に解決の糸口を見出すことは出来ません。勇気を持ち、一歩前進の気持ちでトライすることをお薦めします。
まとめ
この話をまとめると、
①社長自身、自分の描いていたビジョンを、もう一度明確にする。
②息子と仕事場、家庭を離れた場所で話し合う。
③この機会を通し、今まで以上に真剣に取り組んでいく姿勢 ・ 決意を見せる。
「自分から見たら相手が悪いように思えても、その悪い振る舞いの原因を考えた時、相手のまわりに信頼する人がいなかったり、心から尊敬する人がいないならば、きっと自分もヤケを起こして、同じ行動をするかもしれない」そのように相手の立場に立ったならば、改善への道を自らの中に探すことが出来ます。もし、この時、目に見える現象以外を考えないまま、相手の振る舞いを注意し続けたならば、良くなるのか悪くなるのかは自ずと答えは見えていると思います。相手が受け入れるようになってからならば、 注意も指導も生きてくることとなるのではないでしょうか。
人はいつでも、心から信頼できる人を求め続けています。そして、見つけたならば、その人に認められたい、一目置かれる存在となりたいと願うものです。
トップリーダーである社長が、後継者を選び育てる立場にある場合、まずもって自分自身がその後継者にとって信頼できる相手となることが肝要なのです。
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