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ワンマン社長の下で働く幹部社員の悩みと変化ー自己成長で環境を変えることに成功したカウンセリング事例

ワンマン社長の下で働く幹部社員の悩みと変化ー自己成長で環境を変えることに成功したカウンセリング事例

大型の家具店を数店舗展開していた社長が多角化を図り結婚式場の経営も始めました。しかし、思わぬ不調に陥ってしまい、窮余(苦し紛れ)の策で、家具店ではナンバーワンの営業マンを拠点責任者である支配人に抜擢しました。その支配人は、長年の営業経験により地域に親交を築いていたものの、業種の違いなのか式場の水が合わないのか、なぜか数字は変えられないようでした。

現状確認

その式場は地方の県庁所在地にあったので人口も多く、多数あるライバルと比較すると立地や設備においてはあまり良いとはいえません。一言でいえば人気のない式場です。最初のカウンセリングで、社長から現状を確認しますと、話題のほとんどが会社設立後における自分のいままでの家具店事業についての自慢話になりました。その次は、結婚式場の数字現状への不満を並べ立て、式場が上手くいかない原因は社員だと言い出しました。

更に、隣りに同席する支配人の批判をしました。支配人は何か反論したい様子でしたが、この場ではいうべきではないと思っているように見えました。この社長はワンマン社長のなかでも特にワンマン度が強くて、決して人の意見に耳を傾けることのない人であると感じられます。特に、部下の話を聞く前から一方的に命令して終わるといった対応をする人のようだと思いました。その後、すぐにその予想が外れていないことが分かりました(現実は想像以上にすごいワンマンでしたが・・・)。

支配人の嘆き

支配人はそれまで、家具営業を十年経験し、営業成績は抜群で、約一年前に結婚式場に異動になったとのことでした。結婚式の仕事は初めてでしたが、さすがに営業を長くやってきたので、営業の本質は「お客様との信頼関係にあり」ということは承知していました。婚礼事業の経験がないなか、お客様との信頼関係を創るために仕事のやり方をいろいろ工夫して頑張っていました。しかし、その支配人が困っていたのは案の定、仕事のことよりも社長のことでした。

支配人によれば、社長は、

①人の話は絶対といっていいほど聞かない。

②いっていることをコロコロ変える。

③いつもどこにいるか分からない。

④社員のことを信用していない。

⑤社員の顔を見ればすぐに怒るか、命令する。

⑥常にお金の話が中心である。

⑦社員からは信頼されず、むしろ疎まられている。

⑧自身の成功体験と比べて、いつも社員を批判する。

⑨そのような状態を支配人の責任にする。

⑩給料日やボーナスの日が近づくと機嫌が悪くなる―等々。

この他にも多々出てきましたが、社内をこのようにしている社長に、支配人はホトホト困り果てているようでした。「このままではいまの結婚式場で仕事を続ける自信がないので、家具店に戻りたい。戻れないのであればこの会社を辞めて、他の会社に移りたいと考えている」と、私に打ち明けました。これまで次々と辞めていった社員達も「同じようなことで同様に思い詰めていた」と語る姿が無念そうでした。

カウンセリング対応

通常のカウンセリングは、トップである社長を対象に始めて、社長の変化から一体となっての社内の変化――というやり方です。しかし、この社長の場合は、我々と話していても自分勝手に振る舞い、我々の話も聞きません。他の人の意見が耳に入らないのです。社長の変化はほとんど期待できません。多くの社員さん達のため、支配人を激励し、現場的な指導をすることが先決です。支配人の気持ちを強くして、考え方を前向きに、行動を更に積極的になる方向へカウンセリングを行います。まず、支配人に社長に対する不満をもう一度吐き出してもらいました。以前に聞いたことの繰り返しも含めて、社長に対するあらゆる不満や、苦情、文句、怒り等をじっくり聞いていきました。いくらいっても言い切れないとばかりに、支配人は延々と話していました。やがて一段落したところで、支配人に聞きました。

「なるほど、支配人の気持ちはよく分かりました。大変ですね、ご苦労様です。ところで、これからはどのようにしたいのですか?」

すると、

「社長がいまのままでは売上も増えませんし、社員も辞め続けます。社長にもう少し人間的に変わってほしい。そうでなければ、私は支配人を辞めて家具部門に戻りたい。もし戻れなければ会社を辞める」と、改めて自分の考えを再確認するかのようにきっぱりといいました。

そこで「社長のことは我々も支配人と同じように感じています。社長の考え方や日頃の振る舞いは支配人や社員の方々がいう通りでしょう、確かに良い社長とはいえません。しかし、そこで支配人が社長の悪いところを、悪い、悪い、と言い続けたら社長を変えることができるでしょうか? 変わらないと思いませんか? 悪いことを指摘してもかえって反発するだけです。ですから、それよりももっと前向きな方法で対処しましょう」

結婚式場2.jpg

指導と激励

支配人に話しました。人間関係において問題がある場合、それを解決する具体的な考え方は次の三つになります。

人間関係の問題解決方法(支配人の立場で)

①お互いの関係性を遮断する(会社を辞める。お互い関係がなくなるので問題もなくなる)

②社長が変わってくれるのを待つ(ほとんど無理。または時間がかなりかかる)

③自分が変わる(実効性がある。すぐに変えられるが、かなり勇気と忍耐が必要)

何を選びますかと聞くと、③の自分が変わるを当然のことですが選択しました。

更に

・社長との人間関係で悩んでいるのは、相手である社長ではなく支配人自身である。社長は悩んでいない(・・・不満に思ってはいるが)。

・ということは、自分が社長に対する考え方や対応を変えていくことしかできない。

・社長に振り回されていたならば、本来の仕事に力を入れることができなくて更に数字が上がらずに、社長から指摘と文句と非難を受け続ける。

……等々を、時間をかけて話し合いました。

支配人は初めのうちは「いくら自分が変わっても社長は変わらない」と、なかなか納得できません。支配人からすれば、それは不本意だとも正直思います。しかし、いまのままでいても自分の悩みは変わらないと長い時間をかけて考えついた時、社長に対して変化を期待しないように、少しずつ思いを改めていただけました。それでも、あくまで社長は社長であり自分は支配人として、仕事においては毎日の報告、連絡、相談という基本をいままで以上に徹底すると約束しました。

その後・・・社長は、相変わらず毎日、自分勝手に振る舞って、社員からひんしゅくを買っていましたが、支配人は以前のように腹を立てず、社長という人間を徐々に飲み込めるようになり、仕事に集中するようになりました。社長の行動に神経をとがらせるより、社長に怒られた社員の激励に気を遣い、更に社長が会社にきていきなり怒りだしたり、文句をいわないように、前もって社長と打ち合わせなどに時間をとるようにしていきました。

業務においては、お客様のことを最優先にするよう社員と一緒に考えて、いろいろなことを実践していきました。社長のことはさておき、現場が支配人を中心に回り始めると、社員はずっと明るくなりました。その結果、組数も少しずつ増えていきました。何よりも支配人自身が明るく、強くなりました。そんな支配人を見た社長は、ほんの少しですが支配人の意見を聞くようになったそうです。数年が経ち、数字や周囲からの評価が以前とは全く変わっていきました。地元の経済団体でも話題になったり、テレビや新聞等でも取材が入ったりして(ワンマン)社長も積極的にそれらに応じました。しかし、社長自身の体調に変化があらわれ、経営トップの座を息子でもある家具店の中心者だった専務に譲ることとなりました。専務は結婚式の現場についてはそれ程関わってこなかったため、支配人が実質的にも式場の中心者となりました。その後も、時折ワンマン社長(この時既に会長)は式場に顔を見せて、あそこが悪い、ここを変えろと我儘な言動も見られましたが、式場のことは支配人に頼らざるを得ない状況から、最後は息子と式場を頼むとの言葉をかけられるまでになりました。

この支配人のように、ワンマン社長の下で働いている人は意外に多いものです。そのような方々は大抵、会社や社長に対して不満を持ち、批判しています。確かにその社長は良くない社長なのでしょう。しかし、社長を批判しても状況はあまり良くはならず、悪くなる場合が多いものです。不満をいい、批判をすることにより一番つらくなって、一番面白くなくなって、一番嘆くのは、批判された社長や会社ではなく、自分自身だと多くの方々は後になって気付くものです。

大事なのは、どんな環境にいても自分自身が強くなることです。自分が強くなれば、悩みを乗り越えていけます。自分が明るくなれば自分の周りから暗闇はなくなります。自分を取り巻く様々な問題や悩みという「障壁」に対して、自分自身の強さをもっての「挑戦」をし続ける毎日を、人生を送っていきたいものです。

アンリミ創立者・鈴木昭二曰く
全ての原因が自分にあるとの大切さに気づいた時、一見それは厳しい生き方であると錯覚する方々がいらっしゃるかもしれません。しかし、その原因の一切が自分にあるからこそ、自らを自ら自身で直すこともできるし、自分の環境の変革をすることも、貴方自身の力でできるのです。積極的に、思う方向へと誰もが変えていけるのです。

 

≪ワンマン社長・ワンマン経営参考:ワンマン経営を脱却するには?ワンマン経営のメリット・デメリットも解説