行きたくなる店をつくるには?ー集客のための方法を打つ前に大事な視点

「人の来る店・来ない店」とは、お客様が「行きたくなる店・行きたくなくなる店」ということにもなります。「行きたくなる店」で大切なのが、店の持つ〝空気〟です。〝空気〟というと抽象的な表現ですが、それぞれの店の〝空気〟とは、店全体から何となく伝わります。明るさや暗さ、温かさ、あるいは冷たさ、心地よい、若しくは居心地が悪いなど、お客様が感じるものです。そういう、お客様が生命実感として捉えるものを大事にしようと私たちは考えています。それは、決して理屈ではない誰もが無意識に感じていることだと思います。
たとえば、仲間と食事をするために店を選ぶ時も「ここの店は良さそうだから入ってみようか」、「どことなく変な感じだから別の店を探そうよ」と、お客様は店の外からでも〝空気を感じ取っています。
よかれ・わるかれ、店の〝空気〟を作るのは、結局、経営者の考え方やこだわり、信念であると考えております。外見だけを綺麗にしてお客様を呼び込もうとする経営では、仮に建物の意匠やライティング、看板にいくら工夫を凝らそうと、経営者の思いがどことなく表れ、それをお客様に感じ取られてしまうものです。
人間感情を優先する
例えばサービス業などでいえば、重要なのは、マニュアル優先ではなく、人間感情を優先したサービスを提供することです。マニュアルの重要性を承知したうえでも、現実のお客様対応の場面で、それぞれ異なるお客様の事情を無視しては、ちょっとしたことでお客様の人間感情を害してしまうことも考えられます。
また、たとえば旅館やホテル業などでのこと。ようやく宿に着いて、お客様はとにかく部屋で一息入れたいと思っている時であっても、当然のようにフロントで抹茶と茶菓子で接待をしようとする。さらに今度は部屋に入るなり、施設や避難路の説明をとうとうと語り始める。もちろんそれは必要なことですが、お客様の状況によっては必要最小限の説明で済むはずです。
お客様の意向をより汲み取ろうとしている旅館などでは、そういった対応はしないはず。お客様の要望を大事にしたいとの思いがあれば、相手の状態を見分け、何気なく確認するなどの対応をとることはできるものです。好ましくないやり方は、一生懸命であっても、相手の気持ちを考えずに結果的に自分の都合を押し付けるサービスとなってしまうことなのです。
リーダーの姿が現場に伝わる
こうした不満足の提供を改めるには、先ずは、リーダーのスタッフ一人ひとりに対する接し方を見直し改めること。スタッフの人間感情を大事にすることです。トップ自らが、スタッフの思いを汲んだ対応をつづける中で、今度はスタッフがお客様に対して、次第に相手の思いを汲んだ対応をするようになります。まるで「水の波紋」のように広がっていくように。逆に部下に無関心なリーダーは無関心なスタッフを生み、無関心なスタッフはお客様に無関心になってしまいます。
そこまで細かくリーダーが部下に対応するには、相手の思いに立った視点で「人を見る」訓練を積み、相手の変化を常に見逃さない力を備えることが必要です。一人の人間を注意深く凝視しつづければ、悲しい時や辛い時の表情や顔色の微妙な変化も分かるようになってきます。このような実践をしてリーダーは、ようやくスタッフに対して人間的な配慮ができるようになります。そうされたスタッフたちは、自ずとお客様に本当に喜ばれる人間的なサービスを提供するようになるのです。
現場の智慧
コロナ禍が私たちの日常生活を襲い、ウクライナ危機などにより、原油や物価高、半導体や資材・農産物の不足など、数年前には予測し得ない深刻な打撃が世界を駆け巡っています。これを乗り切るには、小手先のテクニックや方法論では根本的な解決にはなりません。過去の経験に頼るだけの苦し紛れの対応では、かえって深みに陥ってしまう。こうした時代に求められるのは価値を創造する「智慧」なのだと考えます。
「価値」とは、常に変化するものです。具体的に述べれば、①人によって ②時代によって ③場合(環境)によって変化します。
たとえば「美しい」と感じる価値は、人によって異なります。時代によっても違いますし、場合(環境)によっても評価が分かれます。激しい色彩で描かれたゴッホの風景画を美しいと感じる人もいれば、そうでない人もいます(人によって)。また、ゴッホは生前、ほとんど評価されませんでしたが、いまでは美術史に燦然と輝き、人類の至宝とまで評価されています(時代によって)。そして一方、絵画は市場価格の変動が激しく、バブル期に高騰した作品でも、その後の不況により価格が十分の一にまで下落した作品もあります(環境によって)。
このように、価値ということを認識するならば、私たちが提供している商品やサービスを、もう一度再確認すべきではないでしょうか。
厳しい現場に向き合って智慧を得る
そこで、次に「創造する」ことについて三つの角度から確認すると、
① すでに今あるものから創る
② 人生や生活にさらに有益なものを与え、加える
③ 配列や組み合わせ。今時でいえばコラボレーション。
たとえば、このことは特に携帯電話に象徴されます。電話としては、既に存在していました(今あるものから)。それが持ち歩けるという、便利さが与えられ、携帯電話として無くてはならない商品となりました(有益性を与え)。さらに今や、メールやインターネット、カメラ、音楽、ゲーム、TVといった様々な機能が組み合わされて、それぞれの特徴を打ち出した商品化がなされています(組み合わせ)。創造の姿として見事だと思います。このように例えは身近に沢山あります。
とはいえ、実際は、いくら智慧を出そうといってもなかなか出て来ないものです。価値といってもなかなかつかめませんし、創造したいと思ってもどうしたらいいのかわかりにくい面もあるかもしれません。ですが、たとえ困難だとしても、どうしたらお客様は喜ぶか、どうしたらお役に立つことができるのか寝ても覚めても考え、試行錯誤を繰り返すことです。そのなかから本当の智慧が生まれてくるものです。
この「価値創造の智慧」の連続こそが経営および人生を豊かにするのです。
まとめ
行きたくなる店というのは、変わらない味や人たちがいて、温かみを感じたり、いつ行っても顧客である自分を大事にしてくれるお店だと思います(変わらないもの)。また、商品やサービスについていえば、現状に甘えずより進化していたり、改善が加えられていたり、お客様が利便性を享受できるお店(変わり続けているもの)も、また、行きたくなるお店の要素だと考えます。
それは、トップリーダーからスタッフ一人ひとりの信念や思い、お客様に喜んでいただくための智慧の数々が、顧客の印象ともなり評判に繋がります。人を大事に、満足の追及を怠らないことが肝要だと私たちは考えています。
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