ブログ

バラバラの社員をまとめるーシリーズ・カウンセリングの現場から

バラバラの社員をまとめるーシリーズ・カウンセリングの現場から

「シリーズ・カウンセリングの現場から」は、弊社でご支援した実際のカウンセリング実例をご紹介いたします。

今回取り上げる会社は、正社員が20人と常勤パート10人ほどのそのブライダル施設。市内の中心から少し離れた場所にあり、他のライバル2社に対し集客も売上も毎年少しずつ下がっていました。さらに思わしくなかったのは社内の人間関係仕事に取り組む姿勢でした。つまり、社員がそれぞれにまとまりなく仕事をしていて、雰囲気が悪く、結果として業績が下がっていたのです。

全員が遅刻

当社に依頼があり、初回は、一日の状況を確認するために朝から訪問してみました。

午前10時から仕事が始まると聞いていたので、30分前に着いたのですが、誰も出勤していませんでした。定時の10時を2,3分過ぎたころになって事務の女子社員が出勤して、会社の鍵を開けて入りました。それからも待っていると、営業担当の女子社員が出社し、その後、現場のトップである専務が15分過ぎた頃に出社しました。

専務と話している間に調理担当の社員、11時近くに支配人が出勤してきました。そして、料飲サービス担当の社員は午後1時の出社でした。宴会担当は仕事が夜遅くなるので、遅い出勤にしているとのことでした。全員が揃うのは午後1時過ぎとなります。全体が集まる朝礼もミーティングも行っていませんでした。

また社員に状況を取材すると、専務は出勤後すぐに実質自分の部屋となっている社長室に入り、ほとんど一日中パソコンで仕事をして、現場の仕事は支配人を中心に進めていました。更に驚いたことに、その支配人はほとんど毎朝、趣味のテニスで出勤が10時~11時ということでした。後で分かったのですが、支配人は仕事が終わると毎夜のように気に入りの社員を誘って飲み歩き、会社への不満や専務をないがしろにするような発言をしていたのでした。

現場ではその支配人が中心になり仕事をこなしていましたので、自然の成り行きで全体が自分に都合のよい体系で働き、一人ひとりが他人のことに口出しもせず、されたくもないという状況になっていました。人柄のいい専務は支配人の態度や、社員の気持ちを何となく感じていましたが、どうしていいのか分からなかったのでした。

理論より実践

最初のカウンセリングでは、トップリーダーの専務と一緒に現場責任者の支配人も同席してもらいました。

「今回、何のためにカウンセリング契約をしたのですか?」と専務と支配人の二人に確認したところ、どちらも結果を変えるために、会社の現状を変えたいと思っていて、何をしたらいいか教えて欲しいとのことでした。

社内外の現状をヒアリングした後、なぜ数字が下がっているのか?その原因はどのように捉えているか?についても確認。すると、他の会社が施設のリニューアルを行い、多額の広告費を使って、圧倒的な量の力で集客に乗り出している・・有名な調理人を招いて魅力的な提案を行っている・・一方、自社は予算が無いため手が打てないとのことでした。

それらは、事前に承知の上でしたが、先ずは目的を確認してからアドバイスと提案をしました。「社内の状況は人間関係がバラバラでまとまりがない。それが原因で雰囲気が悪く、お客様にも伝わっています。だから数字が下がっているのです。それを感じますか?」と聞くと、二人は認めました。私は「ならば、社内をまとめることです。それによって雰囲気が変わり、結果が変わります。変えるのは理論ではなく具体的な実践、行動の変化です。まずは二人の行動からです」と話すと、ここまでは納得しました。

ところが、具体的な実践提案を伝えますと抵抗があるものです。そこで以下のようにお話ししました(私=アンリミ、専務=クライアント、支配人=クライアント)

私  :「専務と支配人は明日からみんなが来る一時間前の9時までに出社するように。そして二人で一日の仕事の確認をしてください」

専務 :「9時の出社に何の意味があるのですか」

支配人:「朝早く出勤すれば売上が増えるの?」…(皮肉たっぷりに)

私  :「専務、いいですか?10時が出社時刻です。現場の最高責任者が一番早く出社すべきです。そして支配人、早く出勤すれば売上が増えるかどうかは分かりません。でも結果を変えるには具体的行動を変えることと納得いただきましたね。その行動をすぐに、しかも社員にも分かるようにするには専務と支配人の出勤時間の変化が一番なのです。ぐずぐず言わないで、明日から9時までに出勤してください」

専務 :「分かりました、明日から二人で早く出勤します」…(納得はない)

支配人:「じゃあ一週間ぐらいやってみますよ」…(不満げに)

社内の雰囲気改善

次の日から二人は9時に出社してきました。そのまま暫く常駐していた私は、すぐに二人とその日の業務確認をし、その後、特に専務と話す時間を多くとりました。社内の団結のポイントなどを伝えて、今後は専務中心で仕事を進めていくこと、専務主導で改革することを提案しました。その団結のポイントとして提案したのは、社員達が毎日顔を合わせる時間を作る朝礼です。各部門の出勤時間帯が違うので、最初は全員が揃う午後1時に行うことにし、専務が一人ひとりに前もって伝えて朝礼を始めました。支配人はその提案にも「朝礼で結果が変われば苦労しないよ」などといっていました。

次に、全員参加の全体ミーティングを毎週月曜日にサービス改善会議とあわせて行いました。これはかなりの効果があり、「自分が思っていることを口に出しても良いんだ」との心理的安全性が担保された中でミーティングが盛り上がって終わらないという状態にまでなりました。現場での様々な問題点が次々と上がり、出来るところからどんどんと改良していきました。次第に気持ちのまとまりができました。それまでは同じ会社にいても、互いにあまり話をせず、わけても専務とは会う機会がなかったので、業務上の不満も、アイデアも話せなかったのです。

話し合いが始まってすぐの頃は会社や専務への不平や不満が噴出しましたが、後半になると仕事の改善、工夫についての話が多くなり、前向きで明るい話題が座を満たしました。締めくくりに、これからもお客様を大事に、満足を提供しましょうと合意ができ、元気に「お疲れさまでした」と明るく解散しました。

社内の人間関係改善

その様子に専務は感動して、改革の兆しを実感しました。その一方、支配人は専務ほど感動はなかったようです。専務には次に、社内をまとめるための本質的な行動を指導しました。現場の最前線で働いているスタッフやパートの人達との信頼関係の強化です。私は、特に裏方のパートさん達との接点を多くして、そこから専務が信頼されるようになってほしかったのです。

毎朝、その現場に顔を出して挨拶を交わして短時間でも話を聞くこと、激励することとしました。現場の社員とは、週一度の割合で食事会を始めました。それによりスタッフとの距離が近くなり、色々な話し合いができる関係になります。そのような関係ができたら、次は会社での会議や勉強会も可能になります。

ところで、パートさん達との信頼関係の強化とは、パートさんの家族の方々を大事にすることです。例えば、お中元やお歳暮を自宅訪問して届けるのですが、この7月には近場に一泊の社員旅行を企画していました。それを活用して、パートさん達との距離感を近づけることを専務のテーマにしました。バスの中での専務の座る場所も決めて、宴会では専務からスタッフやパートさんへの感謝プレゼントやゲームなど、パートさん達と楽しく過ごしました。これは大成功を納めました。その旅行の後は、専務とパートさんとの関係がより強くなりました。半年が過ぎた頃には、取引先の会社から「最近の皆さんは明るくて、元気ですね」といわれるくらいに全社的に明るく元気に変わっていました。

団結の強化

その社内の変化に、乗り切れないでいたのは支配人でした。逆に変化を批判し始めました。会社を考えた批判ではなく、かつて自分だけに従っていた部下が、前向きに変わっていく専務を中心にして仕事をするようになったのが気に入らず、そして専務を尊敬できなかったのです。専務がリーダーとして、自ら変わろうと努力して責任感の溢れる中心者に変わる一方で、支配人は自己中心で傲慢な自分を変えることができなかったのです。

支配人は自ら退社の道を選び、彼と仲のよい幹部の一人が行動を共にしました。仕事を熟知していたのに残念なことでした。専務は現場に影響が出ないか心配しましたが、私はこう激励しました。「心配することはありません。組織が良い方向にまとまっていく時に、まとまりに反対する人はいられません。これで社内は一層まとまります。この環境の中で現場をリードしていく人が必ず出てくるか、入社してきます」

必然なのですが、今まで支配人と幹部に押さえられていた若手社員たちが頭角を現してきました。彼らは、専務のリーダーとして自ら変革する姿に敬意を持ち、専務の努力で社内が明るく元気になって、気持ちがまとまったことを実感していました。自分達も専務のようになりたいと願っていましたから、専務との信頼関係は強固です。専務の片腕となって、新しい支配人と幹部が現場の中で専務と同様に軸となり、社内全体の人間関係が改善・強化されていきました。

サービスの基本を学ぶ勉強会、その具体化のための会議も抵抗なく始まり、現場の仕事に様々な改善がなされていきました。お客様中心にサービスが強化され、イベントの内容もどんどん変わり、ブライダル施行ではより一層感動的になりました。一シーズン目で早くも評判となり、ライバル店に集中していたお客様が徐々に増えていきました。

また予約も他より申し込みが早く埋まり、人気があると証明されました。口コミが拍車を掛けたのです。トップリーダーである専務の実践が、静寂な池に落ちる一滴の水となり、社内も街の評判も変える波紋の広がりを生んだのです。

アンリミ創立者・鈴木昭二曰く
数字という結果を変えるには、まず雰囲気を変えることです。数字が下がっているから社内の雰囲気が悪くなるのではなく、社内の雰囲気が悪いから数字が下がるのです。ゆえに数字という結果を変えるためには社内の雰囲気を良く変えるのです。その雰囲気は社内の人間が作っているのです。