新入社員を育てる際の心構えー新入社員から社内全般の育成のポイントについても言及

新入社員育成には、先ず環境を整える
新入社員を迎えるとリーダーの方々は、自分たちが新人を〝育てる〟という意識になりがちです。そのため、育成方法や教育マニュアルばかりに気を取られていませんか?それも大事ですが、新人が伸び伸びと育つことのできる〝環境づくり〟に力を注いでいただきたいと考えます。彼らが育ちやすい環境を整えること、それがリーダーの役割のひとつです。〝育てる〟といって、新入社員一人ひとりの個性も性格も見ず、教育マニュアルを当てはめるのは、まるでマシンを製造しているように見えませんか? 〝環境づくり〟とは、あえて比喩を使って表現すれば、苗木(新人)が育ちやすい環境を考えるということです。それにはまず、清浄な水が必要です。次に、明るい日の光。そして、肥沃な土壌です。
リーダーの皆さんは、自分の会社が新人たちに用意した環境を思い浮かべ、どのような水・光・土壌を提供しているか、具体的にチェックしてほしいのです。さらに、苗木にはウメ、サクラ、モモなどの様々な種類(個性)があり、それぞれ肥料も違えば、開花する時期も異なります。また、熱帯の気候や土壌では育たなかったり、寒冷地ではなかなか実がつかないなど種類によっても違います。苗木ではなく、米や麦、あるいは各種の野菜に置き換えたほうが考えやすいかもしれません。一人ひとりそれぞれの性格に合った水・光・土壌という環境こそが大切で、育む基本ではないでしょうか。
マニュアルや通りいっぺんの教育プログラム等で、新入社員の一人ひとりのことをまとめて扱うのではないのです。一人ひとりの新入社員と向き合い、一人の人間としての関わりを持つのです。人間は器用な人もいれば不器用な人もいる。理解の速い人もいれば遅い人もいます。個性も夢も違う人材を育てるには、一人ひとりの人間を尊重するという角度(視点)が求められるのです。顔やそれまでの人生が異なるように、性格や個性も違うのですから、個々の可能性が発揮できるような環境をつくることが大事なことだと思うのです。
負けるな、磨け、そして勝て!
一方で、新人の方々には研修期間であっても、「責任のある一人の社員」という意識をしっかり持ってほしいと思います。アンリミテッド創立者はいつも我々を「負けるな、磨け、そして勝て!」と激励してくれました。この言葉をそのまま新人の方々へ贈ります。それぞれの状況によって、この言葉の捉え方は様々あるでしょう。「学生気分に甘えた自分に負けるな」、「厳しい現実に負けるな」、「人間関係の悩みに負けるな」というように、自らを鼓舞し、どんなときでも負けない自分を目指して下さい。次に「どんどん学び、吸収して磨け」、「自分を鍛えるように磨け」と、少しでもステップアップできるように自分を磨いていただきたい。
人材育成の要
新入社員の育成のポイントについて見てきましたが、これは新入社員にのみ当てはまるものではありません。社員全般にも言えることでもあります。ここからは、新入社員のみならず、会社全体の人材育成について共通する内容をお話しして参ります。
人生に対する根本姿勢
人材育成において心すべきことは何か。一般的には、スキルアップの研修や業務推進のミーティング、あるいは時々に応じた指導やアドバイスを通し、スタッフのレベルアップに努めていると思います。しかし、人材育成の核となるものは、スタッフ一人ひとりの『人生に対する根本姿勢』ではないでしょうか。〝人生に対する根本姿勢〟とは、能力でも知識力でもなく、『どのような人生を生きていくのか』という根本の目的観です。アンリミテッドでしばしば言われる『なんのため』とは、いわばこの〝人生に対する根本姿勢〟に対する問いかけに他なりません。
仕事に対する充実感も苦難を乗り越えるエネルギーも、実は、この『なんのため』という根本姿勢から発揮されています。つまり、確固とした人生に対する根本姿勢があれば、様々に起こる問題や困難なことにも、そこに立ち向かう意義や意味を見いだせることでしょう。しかし、それが不鮮明であったり弱々しいものであったならば、大変なことはただ大変なだけで、義務感と責任感で取り組むだけのものになりかねません。それでは辛く苦しいだけです。
私たちは、どうしても、1人の人間を組織の役職や立場という側面的な捉え方に傾いて理解してしまいます。そして、仕事上の目的の確認はしても、スタッフ本人にとっての『なんのため』との確認は抜け落ちることが多いのではないでしょうか。たとえば社内の目標や組織体制の変更、等々が、その本人として『なんのため』なのかと。スタッフ一人ひとりの〝人生に取り組む根本姿勢〟があるべき姿になれば、おのずと各人は活き活きと、より積極的で主体的になることでしょう。
問いかけつづける
スタッフ一人ひとりが、ひとりの人間として生きる意義を見いだし、人間として成長をすることがどれほど素晴らしいことか。また逆に、能力偏重の育成がいかに空しいものであるか。株式会社アシックス創業者・鬼塚喜八郎氏の自伝的書籍に感銘を受けたことがあります。同書には、
――倒産の危機の時に残ったのは、接ぎ木のように集めた優秀な幹部社員でなく、創業以来、自ら寮教育で薫陶を与えてきた、学歴も技術もないが情熱だけはある中堅の若手社員だった。そして、その寮教育の内容は、極めて実践的で、且つ、人生においても役に立つものであった――と。(鬼塚喜八郎著『転んだら起きればいい』PHP研究所出版)
思うに、実務指導とあわせて、『なんのため』と問いかけつづけたのではないか。そして、業務の範疇を超えて人間的成長を願う対話をつづけたのではないか。時には問いかけ、時には指し導き、時には夢や体験を語り、あるいは、自ら考えさせてと。もちろん、『なんのため』と問いかけたところで、意欲や向上心が見られなかったり、価値観にしても独り善がりなものであったりと、それぞれ様々な目的観や人生観があることでしょう。それは、歩んできた時代背景や生活環境が違うわけですから、当然のことです。しかし、日常、ことあるごとに『なんのため』と問いかけ、あるいは指し導くなかで、それぞれが自身の人生と向き合い、その時々の答えを自ら見いだしていく。根本姿勢とは、そうして積み上げられていくのではないでしょうか。
ともあれ、『なんのため』と問いかけつづけることが、〝人生に対する根本姿勢〟の確立に通じていくと信じています。それが結果において、信頼のおける力強いスタッフを育むこととなるのです。
私どもでは、オンラインを使った新入社員育成のサービスも行っております。ご興味のある方は一度お問合せください。
今回は、新人社員からスタッフ全体の育成について考えてきましたが、「粘り強く継続して勝て」、「諦めずに逆転して勝て」、「実力を身につけて勝て」と可能性を秘めた若手人材の皆様には期待するばかりです。
新人の皆さんが、また、あらゆるビジネスパーソンの方々が、そのパワーを最大限に発揮し、素晴らしい未来を築いていかれることを信じています。
■関連資料ご紹介
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・若手社員を早期戦力化を実現ー中小企業が取り組むべき新入・若手社員育成の方策とは