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経営理念と会社経営との間にはどのような関係が有るのか

経営理念と会社経営との間にはどのような関係が有るのか

経営理念とは、企業経営のあり方、目指す姿を言葉として表したものです。いわば、目的観を対外的に、或いは社内に対して宣言したものとも言えます。営利企業である場合、利益を上げることが目標となる訳ですが、経営理念と売上や利益或いは組織や人材面との関係性はどのようなものなのでしょうか。

経営理念とトップリーダー

先ずは、経営者・トップリーダーにとって経営理念が重要な理由を本質的な角度から考えていきます。

価値観によって変化する経営判断

トップリーダーは経営現場において、時々様々な判断や意思決定をされていることと思います。そこにはトップリーダーの価値観が、あらゆる指示や決断となって表れています。いわば、経営現場での多様な変化に対する対応や展開の連続そのものが、トップの価値観そのものであるといってよいでしょう。つまり、良い結果も悪い結果も、その一切がトップリーダーに()るところとなっているのです。そういう意味で、「トップリーダーが一切の原因であり、経営とはトップリーダー自身にある」とも言えるのではないでしょうか。

トップリーダーの皆さんは、自らに代わって意思や考えを実践遂行し具現化ができる優秀な人材の育成にも注力していることと思います。有能で実行力のある人材は企業発展には欠かせません。しかし、仮にトップの望む方向性に誤りがあったとしたならばどうでしょう。たとえば、百メートル走でゴールを間違っていたならば、速ければ速いほどゴールからは離れてしまいます。優秀な人材確保や人材育成は会社発展の重要な要因ではありますが、それ以前に経営の方向性の基となるトップリーダーの価値観が最重要であると考えます。

リーダーの人生観と経営の方向性

トップリーダーの価値観が重要だと申し上げましたが、それは本人の「人生観」であるとも言えます。人生観とは、一言集約していえば「自分はこのために生きて、このために死ぬんだ」という〝このため〟の中身を明らかにすること。あるべき人生観がベースにあってこそ、経営者にとっては、会社経営の方向性を明確に定めることができるようになり、時々様々な判断や意思決定に確信を持てるようにもなります。経営現場には様々な困難が(おそ)ってきます。もしくはアクシデントが起こるものです。そうしたなかで、様々に変化する環境に打ち勝つことができるかどうかは、確たる人生観の有無、その一点にかかっています。多くの場合には、確固とした人生観がないばかりに、主義主張が時々によって変わってしまう。人生観がないことが原因で環境の変化に翻弄されてしまう。しかし、人間は、どういう人生観を持つのかによって、確固とした主体的な判断ができるようにもなるのです。

それ故に、企業の目的でもある「経営理念」と、トップリーダーの思い、物事の判断などのベースとなる「経営哲学」の関連性が非常に重要となります。

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経営理念と育成

次に、経営理念と組織・人材の育成とはどのような関係性が有るのか?具体例なども確認しながら考えて参ります。

正しい経営理念が人を育む

「企業は人なり」という言葉がありますが、どのような人が企業にとって望まれる人なのでしょうか? 結論的に申し上げれば、それは企業の目的と本質を正しく理解納得し、自覚でき得る人のことです。しかも、企業が目的とするものを、行動に移し結果を出し得る人のことであり、言われなくても行動に移し、しかもその行動の中に、仕事の喜びや生きがい、やりがいを感じることのできる人のことです。優れた人は、以上のようなことを、仕事をとおして実践している人を人材と呼ぶのです。故に、逆説的に言えば、企業としての正しい経営理念、正しい目的観の存在しない法人群には、人材は発生し得ないし、頭数、人員数が何人いても、人材は育たないのです。良く見受けられるケースに、トップリーダーが何を考えているのか、何を思っているのかを周囲のスタッフが理解していないケースは、今も昔もよく見受けられます。コミュニケーション不足が原因であったりするわけですが、互いに相手を知ろう、理解しようとの信頼関係が無ければ、例えコミュニケーションの場だけを設けても、うまくいかない場合が多いものです。

また、多くの会社には、存在意義や目指すものを明文化した経営理念があると思います。朝礼などで毎日暗唱している会社もあるでしょう。しかし、それらを理解し、そこに向かってスタッフ一人ひとりが日々挑戦している会社には、なかなか出会うことが少ないように思います。なぜでしょうか。

アンリミ哲学を学び始めたY社。初めて訪問した時の印象は、社内が非常に冷めきったものでした。我々が訪問しても、事務所に居るスタッフは、立ち上がろうともせず、パソコンに向かったままで“誰か来たな”といった程度に、ちょっと視線を向ける位でした。どこかギスギスした雰囲気。聴くと、顧客からのクレームも多く、その原因を製造部門と営業部門が互いになすり付けているような状態でした。その会社のY社長は、社内を活性化したい、そして売上を上げたい、そうしないと経営が厳しいと話しました。

社長のデスクの後ろには、古びた額縁の中に「社訓」が掲げられていました。顧客を大事にすることや、周囲の仲間を思いやろうとの文言が書かれていました。しかし、会社の実態はそれとは全く逆の状況になっていました。その会社のカウンセリングでは次のように確認しました。

中心者の思いが人材の姿に現れる

「経営の神様と言われた松下幸之助氏は、会社経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行っていくのかという点で、しっかりとした基本の考え方を持つこと・・・つまり経営理念の大切さを述べられています。

中小零細企業ともなれば、トップ自身は会社そのものと言っても過言ではありません。トップリーダーの一念でその会社は動いています。弊社アンリミテッドが言う「トップが変われば会社は変わる」とは、経営者自身の考え方・哲学が如何なるものかということを問いかけたのでもあります。

また、人生経営というスタンスで言えば個々人における“人生経営理念”が必要となります。言い換えて人生観ともなります。何のために生きるのか。その人生観が、仕事上での目的観(仕事観)と一致もしくは深くリンクした時に、その人の力が発揮されるのだと思います。

一人ひとりにおいては、会社の目指すところは何なのか、何を求められているのかを正しく理解し、現場で結果を変えていくことが求められます。そのためにも、自身を磨き続けることと、社のトップと呼吸を合わせる(目的を共有する)ことが非常に大切です。

トップの思いとスタッフの思いが経営理念という企業の目的と〝共鳴〟し合ったとき組織は躍動し始めます。」

スタッフの活性化とリーダーの本心が反映する

スタッフそれぞれが、積極的、且つ主体的に仕事に取り組むことを望むリーダーは多いと思います。「売上を伸ばすには組織をもっと活性化させる必要がある。では、どのように活性化させれば良いのだだろうか・・・」と考えるリーダーも多いと思います。こうした場合、スタッフを活性化させるシステムや方法を探したくなるものですが、どんなにされこれ手法を取り入れても上手くいかないことがあります。仮に上手くいくことがあったとしても、それは一時的で、時間経過と共に元に戻ってしまうことが多いものです。なぜならば、その問題は、システムや方法ではなく、リーダーの本当の思いにあるからです。売上を伸ばすという目的のさらに奥にある「社長の本当の思い」をスタッフたちは感じ取っているのです。

そもそも、人の振る舞いや言動には本音がどこかにじみ出ており、それが自然と周りに伝わっていきます。本人には分からなくても、周りの人は感じとるものです。たとえば、会社は自分のものという感覚にある経営者が「皆さんのための会社です」とか「皆が頑張れば、皆の生活も楽になる」と訓示したところで、スタッフたちには響きません。「お客様の喜びは全スタッフの喜びだから、サービスを向上させよう」と呼びかけても、スタッフは表面的には従いながらも、『売上を伸ばしたところで上の人たちが贅沢するだけだろう・・・自分たちには関係ない』と、腹のなかでは背反(はいはん)することがあります。つまり、リーダーの本音、本心、本当の思いが、スタッフから納得を得られるものなのかどうか、そこが肝心なのです。

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なぜ経営理念が重要なのか?

最後の章は、経営理念の実践面での急所と、事業計画などに反映させるためのポイントについて触れてみたいと思います。

経営理念・経営目的の追求

私たちが追求したいのは「目的の質」です。ここでいう目的の質というのは、正に経営理念です。ただ大切なことは、どんなに立派な社是や社訓・経営理念を掲げていても、それが本当に会社としての、そして経営者自身の思いになっているかどうかです。「お客様に満足を、社員には喜びを」といった社是をよく目にしますが、本当にその社是が経営者の本音になっているかどうかなのです。さらには、スタッフたちもその理念に賛同し、その理念を本心から目指しているかどうかなのです。思うような結果をだせないリーダーの多くは、目指すべき理念と本心とにズレが生じていることが多いように思います。我欲が強くなったり、傲慢になったりと。

人は自然と自己中心的になっていくものです。そして、自分ではそれに気づかないことが多いものです。だから、自分を随時チェックしてくれる存在が必要なのです。近年のコンサルティングやコーチング、メンターの活用が広がってきているのは、こういった要因が有ろうかと考えます。

≪あわせて読みたい:経営コンサルティングとは?導入効果や失敗しないコンサルタントの選び方を紹介!

経営理念を正しく実践するには

「お客様に満足を」と言いながらも、いざ資金繰りや数字を見るとお客様を売上や利益で見てしまう、あるいは、スタッフとの意思疎通を心掛けながらも、現場に入れば一方的な指示を出してしまうといったことは、誰しもあるのではないでしょうか。厳しく自分を見て、指導してくれるような人の存在があってはじめて、困難なことに一歩踏み出せるものです。

結論をいえば、自分自身の管理は自分では出来ません。自分自身を管理してくれる存在、厳しく指導してくれる存在が、経営理念を正しく実践するための極めて大事な条件になるのです。

正しい経営理念の確立の重要性

経営理念とは永遠普遍に変えないものです。不景気になっても好景気になっても、状況が好転しても悪化しても変わらないものが経営理念です。それとは逆に、やり方や方法など、状況の変化に対し変えなくてはいけないものもあります。この、〝変えてはいけないもの〟と〝変えなくてはいけないもの〟の見極めが大切です。

先にも触れた松下幸之助氏は「物質的な貧困から人々を救済したい」と経営理念を掲げました。組織改革や、生産方式等の改善はもちろん大事だと承知していたかと思います。それらに先立って、経営理念を打ち出し、使命感の存在と納得感の存在と未来の展望を明らかにしたのです。その理念に共感した幹部、社員は勿論、取引先さらにはお客様へと伝わっていった波は、その後、日本から世界へと大きく広がっていきました。始まりは一人のトップリーダーの思いからです。こうした経営理念は、確固とした人生観のない人には創り出せません。経営理念を社内に確立するには、正しい人生観が必要です。そのためには自分自身の姿を管理(自律・自立・自導)できるようにすることが前提条件としてあります。

実践面で活かすポイントは?

経営理念をベースに事業計画を 

企業が事業計画を策定するにあたり最も重要な要素は、その会社の経営の目的・・・つまり経営理念です。企業としてこうありたいという根本の考えが明確ならば、最終的な達成ビジョンに向かう具体的な計画は自ずと決まるものです。逆に経営理念があったとしても、社内への浸透や理解が曖昧で、達成ビジョンもぼやけている状態では、数値のみを並べた裏付けのない事業計画が作り出されることになります。

そのような状況が感じられる場合、まず経営者自らが経営理念を根幹に自社の姿はどうあるべきか、どうしたいのかをはっきりとイメージする取り組みを進めていただきたいと思います。それを基に、事業計画をあらためて見直すべきです。たとえば、トヨタ自動車は「企業を取り巻く環境が大きく変化している時こそ、確固とした理念を持って進むべき道を見極めていくことが重要」との認識に立ち、「トヨタ基本理念」を策定し、その下にグローバルビジョンや事業計画を打ち出しています。参考:トヨタ自動車株式会社(TOYOTA MOTOR CORPORATION)

まさに『理念・ビジョン』があって事業計画が立てられているのです。これに対して理念やビジョンのない企業の事業計画は、次年度の目標値や利益計画などの数値計画ばかりを並べる傾向にあります。ぼやけたビジョンと裏付けのない数字。これでは人が動くはずもありませんし、目標が達成できなくて当然です。

また、「利己的」な目標のための事業計画を目にすることもあります。とにかく事業を拡大したい、できるだけ利益を得たい、そのためにどのようなものが売れるか、どうすれば売れるかを自分の視点だけで判断する。その結果、昨今の食品や建物の「偽装」や無理な営業スタイルといった社会問題も発生しました。「偽」とは「人」に「為(なす)」と書きますが、この場合の人とは相手ではなく自分のことでもあったのです。

流れを知り、時を知る

今、社会がどのような価値観を持ち、どのような流れにあるのか。価格の安さや見た目の良さも大事ですが、「安全・安心」な「モノ・サービス」が求められている時代です。たとえば無添加の食品であったり、飛躍的に発達した自動車の安全システムであったり。

事業計画を立てる時は、社会の流れ、時代の大きなうねりをよく見極めて、顧客ニーズを把握することが大事です。いわば「流れを知り、時を知る」ことで得た具体的プランを事業計画に反映させていくのです。事業計画を練るために経営者が「流れを知り、時を知る」には、常に「聞く」姿勢を取ることです。企業社会では役職、立場が上になるほど聞く量も意見をしてくれる人も減ります。常に社会に目を向けてうねりを知り、人から寄せられる生の声に真摯(しんし)に耳を傾ける。これが理念に次ぐ経営計画策定の大きなポイントといえるでしょう。

 

最後に、経営者の皆さんには、この「聞く」姿勢を、混迷が続く時代だからこそ大事にしていただきたいと申し上げて本コラムのまとめとさせていただきます。

 

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