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訪問型営業の取組みにおいて大事なポイントーシリーズ・カウンセリングの現場から

訪問型営業の取組みにおいて大事なポイントーシリーズ・カウンセリングの現場から

アンリミテッドクリエーションの経営カウンセリングは、心理的な動作原則を用い、クライアントの自信回復や好かれる人格を築いて、明るく楽しく生きていっていただくものですので、心理コントロールの一面があります。ですから、最初に相手との信頼関係を築き、心の扉を開くことが大切です。実は今回取り上げる「営業の現場」も顧客に信頼していただいて、結果的にこちらを支持していただくものですから、やはりどこか、心理コントロールの作業という側面もあります。

営業スタイルの違いー都市型と田舎型

営業経験の無い一人の社員がトップセールスになり、幹部として、トップとして育っていった事例をお話ししたいと思います。具体的なセールス話法も含めて、相手の心の状態を知り、正確な対応をしていくポイントを紹介いたします。そのポイントは『心と心の対話』です。経営・営業を続ける上で、相手の気持ちを知ることは、社員・顧客の協力を得る最大のポイントであり、最も留意すべきところではないでしょうか。

さて、舞台はある地方都市にある結婚式場です。地方型の婚礼営業は、大々的な広告でハードの充実や企画を謳うより、それ以上に効果を上げるのは、営業担当者が個別に見込み客を訪問して契約をいただくものです。これは同時に、地域や一人の顧客との信頼を構築して、一人から二人への連動の基礎を築くこともできます。この会社の中心者である専務は、自社のオープン前に外販営業をしない典型的な都市型のシティホテルで婚礼施行を充分学んできたのですが、のどかな田園地帯が広がるこの地域では、何をどうしたらよいか分かりません。

訪問営業が必要と分かっていたのですが、顧客の実像が分からない。スタッフに指示が出せない。営業の相談に乗れない専務は営業をはじめ各人がバラバラになっていく状況に、遠方に広がる農地を前にため息をついていました、向こうから来てくれた都市型ホテルは良かったなーと・・・。指導的な立場にある人は、最前線の人達の気持ちが分かり実績も出せること、つまり営業力はやはり必須なのです。

訪問営業の基本を学ぶ

早速「率先垂範の行動力」を専務に持ってもらえるよう、実践に入りました。訪問営業の原則は量的には「結果は訪問回数と訪問件数に比例する」ですから、二人で一緒に行ったことのない地区に行き一軒ずつしらみ潰しに情報を探していきました。そのエリアは養蚕業も盛んな、のどかな田園地帯で訪問時間をお昼過ぎに決めて、広々とした空き地に車を止めました。

「この地域は全然知らないんですけど、突然お邪魔してもいいんでしょうか?それに、お昼では若い人は見当たらないと思いますけど」。専務は戸惑って私に聞いてきました。何故、この時間帯にこのような地域にと、理解できていないことで不満が出てきましたので、きちんと説明しました。

「農家の人は、近くの田畑で仕事して、お昼に戻って、昼食後は体を休めるものです。そのゆったりとして落ち着いている時が、お話を聞くいい時間帯なのですよ。それと、両親は婚期が近づけば費用や式場などの評判を確かめるなど、いろいろと考えたり相談したりするものです。また、ターゲット層の若い世代は都市部の方で仕事や夜中まで出歩くものですから出会いにくいものです。ですから、この地域ではこの時間帯が、訪問に適した時間帯に当たります」と。

気を取り直した専務は「では、そこの家から行きましょう」と歩き出しました。訪問を始めて数件目、この家のお婆ちゃんは庭先で腰をかがめながら仕事をしていました。まずは私が見本を見せて、後でポイントを説明していくことにしました。

「こんにちは。ごめんください」

「はい、どちら様ですか?」言葉を受け取ってくれましたので自己紹介です。

「はい、こんにちは。私達は結婚式場のものですが、今日はこちらの地区に宣伝活動で来ました。これがパンフレットです」・・・ゆっくりと話しかけます。

「はいはい、そうですかぁ。ご苦労様ですね。あいにく、いまは若い者が仕事に出てまして、話を聞く者がいないんですよね」

「いや~、構いませんよ。宣伝に来ただけですから。お婆ちゃん、後で、皆さんによろしくお伝え下さい」

「はいはい、分かりましたよ」

 と、ここで話が終わってはいけません。捨てられるパンフレットを渡すだけになります。

「ありがとうございます。よろしくお願いします。ところで、今日はいい天気で、外の仕事にはいいですねぇ」

「そうだねえ、あったかくて何よりですよ」相手がうなずく話題、その次に聞く作業に入ります。

「いまは何を作っているんですか?」

「いまかい、時季のもんだからねえ・・・」 と、気軽に話し合えるようになりました。ここまでが、初めての人とスムーズに用件を話すために必要な前置きです。

「ところでお婆ちゃん、ご近所でそろそろ結婚が決まりそうなおうちをご存じないですか?」

「う~ん、この近所ではそんな話は聞かないねえ。うちの孫がそろそろで、早いかなぁ。いやいや、まだまだだけどね。とにかく、この近所には若いもんはたくさんいるけど、そんな話は聞かないね」と、思わずこぼしてしまったのを取り返すように、話を切り上げようとされました。お婆ちゃんが戸惑ったので、我々も引き上げます。

「そうですか。長い間ありがとうございました。お邪魔しました」二人で「失礼します」と、丁寧にお辞儀をして次の家に向かいます。その後も何件も訪問して、大体みんなが外へ仕事に出た頃、一旦、店へ引き上げることにしました。

「あのお婆ちゃんのお孫さんがそろそろということだけですか」と専務。

「今夜、あのお婆ちゃんの家をもう一度訪問しましょう。お婆ちゃんはめったなことをいえないと思ったのでしょうが、違った人なら話ができるでしょうから」帰りの車のなかで、三十分ほど訪問結果を振り返りながら、話し合いました。

初回の訪問

農家は七時頃が夕食を済ませる時間です。

「ごめんください。こんばんは」。玄関で声をかけますと、奥様らしき方が手を拭きながら出てこられました。器の片づけをしてたのでしょうか、

「はーい。どちら様?」

「こんばんは。はじめまして。私たちは結婚式場の者ですが、こちらでご結婚が決まったとお聞きしまして、一言、ご挨拶に参りました。おめでとうございます」

「え~? 決まったといってもまだまだ先のことですよ。どこから聞いたの?ちょっとー、お父さん、来て下さいよ。結婚式場の人ですって」お父さんが出てきました。お父さんが決定権を持っているということです。

「お父さんですか。どうも、はじめまして。式場のAとBです。この度は誠におめでとうございます」少しお酒の入ったお父さんが、感情を隠さず「うちの息子のことを、一体、どこから、誰から聞いたんだ?」。これで、息子さんが遠くないうちに結婚する予定があって、そっと家族で相談していたと分かります。

「どうも、突然にお邪魔をしましてすみません。私どもは結婚式場の営業活動をしておりまして、特に独身男性のいらっしゃる家を探してますから、いろいろ歩いておりますと、話を聞くことがあるんです。ともかく、この度はおめでとうございます」と、お婆ちゃんを悪者にしないよう返事をしました。

ローラー営業のポイント

「突然来て何だ。いきなりお祝いをいわれても困るんだ。まだ何も決まっていない。帰ってくれ」と、奥の方に戻って行きます。

「すみません。今日はお帰り下さい。本当に、何も決まってないのよ」と奥様も困り顔をしました。

「大変失礼しました。これでお邪魔します。ところで、息子さんは何歳になるんですか? ご長男ですか?」と、体は外に向けながら、少しでも話を聞かせていただきたいとお伺いしました。

「うちの長男はまだ二十四歳になったばかりです。まだまだ先のことです。とにかく、お帰り下さい。食事中ですから」と、何としても帰ってほしい調子でした。

「すみませんでした。失礼します。ありがとうございました」。この流れのすぐ後に、ローラー営業のポイントを専務に車中で説明しました。

①すぐに情報を聞くことはしない。まずは世間話で打ち解けること。

②わずかなヒント(お婆ちゃんが無意識に話してすぐ打ち消したような)も確認する。

③確認に再訪問した時、相手の立場があるので情報源を明かさない。

④訪問した時はできるだけ多くの情報を手に入れる。

専務には、この家の情報をまとめてもらいました。

「婚礼は決まってます。そんなに遠くないですね。農家の長男で二十四歳」

「他には?」と聞きます。この先が大事なのです。

「七時頃に食事をして、お父さんは晩酌をする。田畑と養蚕とをしていて、息子は外で仕事をしている。それから……」

二回目の訪問

「こんばんは。式場のAとBですが、昨日は大変失礼をしました」次の夜八時頃に訪ねました。お父さんが少し酔って出てきました。

「また来たのか。まだ何も決まってないといっただろ、帰ってくれ」。昨日よりも怒った様子です。

「どうもすみません。昨日は突然お邪魔してしまって本当にすみません。お詫びに参りました。お父さん、お母さん、本当にすみませんでした。失礼します。もし、息子さんがいらっしゃいましたら、息子さんにもお詫びをしたいのですが…」すると間髪を入れず「息子はまだ勤めから帰ってきていない。息子のことはいいから帰ってくれ」

「失礼します。ありがとうございました」引き上げる道で専務に、今回の収穫は?と確認しました。

「はい。本人は会社勤めですね。この時間でも帰っていないのは、三交代などの深夜勤務がある会社なんですかね?」

「そうですね。では、明日はどうやって訪問しましょう」と私が聞くと、

「毎日訪問してはしつこい営業と思われて、あのお父さんはもっと怒り出しません?下手したら逆効果でしょう」。少し(おび)えが出てきたのです。

「それは、初心者の営業マンが感じる疑問で、そう思ってももっともです。でも、よく考えて下さい。訪問をやめれば、しつこいと思われることはないでしょう。でも、相手に好感を持ってもらうこともなくなるのです」私の言葉に、理解できないことはないけれど……と、専務は不思議な顔をしました。

「すでに、あのお父さんは怒ってますよ。しつこいどころではないでしょう」。どうしたらいいか、答が見つからないから不機嫌な返事になります。

「確かにそうでしたね。でも、訪問営業を待っている人はいません。だから、始まりは招かざる客と思われることがほとんどと覚悟して下さい。誰でも押しつけられるのは嫌いです。まして見知らぬ営業マンにいきなり来られては、喜んで迎えてくれることはまずありません。すべての人間関係は、最初は緊張関係から始まります。それが普通です。初めから親しい関係はないです。何度も会ううちに作られるものなんです」

専務は少し覚悟ができたようです。

「では、これからどうするんですか?」

「もちろん、明日も訪問します。私達の話を聞いていただけるまで。訪問営業はそれまでが難しいのです」

「えー!また怒られますよ。それこそ、二度と訪問できなくなって、結婚式をしてもらうなんて。不可能になりませんか」

「大丈夫です。怒らせに訪問するのではありません。お詫びに行くのです。営業ではなくてお詫びに伺うのですから、あのお父さんも今度は怒らないでしょう。お詫びにお酒を持っていきましょう。毎晩、晩酌をするお父さんにね」ここは押しどころです。専務には、きちんと覚悟を決めてもらいます。

田舎の結婚式場に合った営業を知らなかったある専務は、私と一緒に訪問営業を続けるうちに、心構えとコツを学んでいきました。最後には、他の式場に決まりかけていたお客様から契約を取るまでに専務が変わり、会社も変わった事例の後半をお伝えします。

三回目の訪問

「ごめんください。式場のAとBです。こんばんは」またまたお父さんが登場。今夜も飲んでいます。今回はお父さんが目の前に来る前に、こちらから話し出します。

「お父さん、たびたびすみません。また来ました。今日は仕事の話ではございません。何度もお父さんを怒らせてしまいましたことを、本当に申し訳ないと思って、お詫びに来ました。それだけです。これはお詫びの印です。どうぞお飲みください。失礼します」一気に話して、お酒を置いてすぐに引き上げました。

専務は不思議そうな表情です。何も情報を得ようとしないで、結果も見ずにさっさと引き上げたからです。専務が聞いてきました。

「あれで大丈夫ですか。お父さんはもっと怒ってないですか」

「怒っているかどうかは、いまのままでは分かりません。それを確かめに、一日だけ間を空けて、明後日、訪問しませんか?一日空けるのを不思議に思って、お父さんも我々のことを考えてくれるでしょうから」

「あのお父さんが変わるのですか? 何度行ってもとてもそうなるとは……」専務の意見は、疑問を通り越して否定的になっています。ここできちんとした説明をしないと、今後、訪問できなくなりそうでした。

「大丈夫です。きっと変わってます。私達はあのお客様に悪いことをするために訪問しているわけではないでしょう。息子さんの結婚式のお手伝いをしたい、と訪問しているのです。専務は、うちで結婚式をしてもらったら『他よりも絶対良かった』といわせてみたいでしょう。あのご家族のみんなに、満足して喜んでいただくためには、うちで結婚式をしていただかなくてはならないでしょう。お客様に本当に喜んでもらう目的のためには、契約という手段が必要になります。その契約をしていただくために訪問するのです。最初は怒られても、怖がっては何にもなりません。何度も訪問して思いを伝えれば、私達の結婚式に対する思いを分かってもらえる時は、すぐにやってきます。その時までは、訪問を繰り返すのです。

四回目の訪問

「こんばんは。式場のAとBです。先日はありがとうございました」今回もお父さんが登場。しかし、その表情は落ち着いて、話し出す調子も柔らかです。

「しかし、お前達もしつこいなあ。結婚式場の営業はそんなにしつこくやるのか?酒なんか置いていっても、お前達の式場でやるとは限らないぞ。俺には賄賂は効かないんだ」相変わらず言葉は辛辣でした。ここで私達の思いを伝えなくては、時を逃します。

「お父さん。あのお酒は本当にお詫びの印です。それに、我々がこのようにしつこいといわれるくらい営業訪問に歩いていますのは、お客様にとって一生一度の結婚式を本当に満足して執り行って頂くお手伝いをするためなんです」

「ふ~ん。さすがに営業マンだけあって上手い話をするな」お父さんはニヤニヤと、からかうように返事をしてきました。

「お父さん、その話の上手い営業マンの話を一度でいいですから聞いて頂けないですか。ちょっとお邪魔していいですか?」と、話しながらすかさず靴を脱ぐ仕草をします。

「おう、一度だけなら話を聞いてもいいぞ。でも、いくら話が上手くても、お前達のところでやるとはならないぞ」

「ええ、結構です、話を聞いて頂けるだけでもいいです、感謝します」といって、お客様のお宅にあがり込みました。

茶の間にお邪魔してお父さんとの話が始まりますが、ここでは相手の話を聞くことを優先します。まず相手をよく知ってから、その後に提案します。例えば、結婚式はいつ頃と考えているのか。本人の勤め先と業種、勤務時間、相手の女性のことなどを聞いていきます。そのなかで我々の式場に対するイメージなどを取材していきます。

「お前達の式場は新しくて評判もまあ悪くないな。だけどな、いくら営業にきても、うちではお前達の式場ではできない理由があるんだよ。彼女の親戚が凸凸式場に勤めているし、仲のいい近所から凹凹式場に嫁いでいる人もいるんだ。だから結婚式はその凸凸か凹凹式場のどちらかでやるようになる。残念だろうけどな」という話が出てきました。どちらの式場も我々のライバルです。設備は少し古いのですが、この時点の人間関係は縁故で我々より強力です。

「え~、そうなんですか。分かりました。お父さんもこれから大変ですね。今日はいろいろ教えていただいて、ありがとうございます。では今日はこれで失礼します。今度は息子さんに会いに来ますので、よろしくお願いします」ここでもあまり粘らずに引き上げました。

訪問営業を実践しての収穫~気付きからの成長

その帰り道のことです。

「専務、今日は色々収穫がありましたね。見込みが出てきましたよ」思わず笑みが出て、専務に話しかけました。

「そうですか? 僕には状況が更に難しいと分かっただけに思えますが」

「いいえ、大丈夫なんです。結果の出せない営業は、多くの場合、ともかく自社のPRをします。例えば『うちの式場はこんないいことができますよ。このようにサービスします。その料金も安いです』と一方的にですね。それでは相手は納得しません。相手が何を考えているのか、申し込みには何が障害になるのかを知って、解決をしてあげる気持ちがないでしょう。つまり、相手の気持ちや困っていることを知ることが先決ですよね。こちらの対応がいい加減に思われて、納得もできないから結果が出ないのです」

「前にも説明しましたが、訪問営業というのは初回訪問からお客様のお宅にお邪魔して、じっくり話を聞けるまでが一番難しいのです。話し合いの土俵に乗っていただいたら、そこからは信頼関係を作り上げるために、解決策や気持ちを大事にすることを提案し、また聞いて提案しと、訪問を繰り返すのです。そう考えたら、今回の訪問は相手の考えや状況がある程度分かりましたので、いろいろ考えてあげられます。これからが勝負なんです」こう説明したところ、専務にも見込みが出たという意味が分かり、勇気を取り戻して更に訪問を続けることになりました。一歩成長が感じられた場面でした。

この時にこう説明したのは、実際に体験しないと、本当の意味では理解できないからです。営業を歓迎して待つ人はいないから、実は話し合いができるまでが大変なんです。それを、どれだけ細かく説明しても、相手の表情も自分が逃げ出したくなる気持ちも分からないから、とにかく体験することです。そうすれば、希望が見えてきて、これまでのモヤモヤをきれいに晴らすことにもなります。

確認作業・繰り返しが大切

車を降りて一緒にコーヒーを飲みながら、専務は問わず語りで、これまでの流れを振り返り、自分が納得したことを私に話し始めました。それをまとめますと、

①まず、訪問営業の初めは相手に受け入れられないものである。

②受け入れられないことを怖がらないで訪問を繰り返す。

③訪問を繰り返すことで知人、友人として受け入れられるようになる。

④話ができるようになったら、相手の状況を知る。

⑤相手の状況が分かったら、対応を考えて提案する。

⑥契約を取るための訪問営業をしない。

⑦我々の結婚式場は、どこまでも、お客様の満足と喜びの提供のために、最善を尽くしていることを話す。

専務のいう通りです。しかし、最も大切なのは『相手の気持ちを理解できる自分でなければ、②の段階で足踏みしてしまう』ことです。ひたむきに相手の話を聞き、相手の状態を知るためには躊躇しないことです。

次に、これからやることも確認しました。

◆二、三日後に再訪問します。今度は息子さん本人に会うのが目的です。

◆お父さんの時と同じように、まず本人の気持ちと分からないことや不安に思っていることを聞かせてもらいます。

◆そのうえで、我々の結婚式に対する考え方を訴えます。しかし、仕事の話は一度だけにします。

◆その後はお父さんや、お母さん、本人と人間関係の強化に力を入れていきます。

その人間関係を作ることを、専務自身に一人で実践してもらうとも告げました。訪問先と話ができるようになったいまは、楽しくてやりがいのある仕事にできますから、私は外れても大丈夫なのです。ただ、式場には専務にアドバイスできる人は見当たらなかったので、ポイントを少し伝える必要がありました。次のようなことです。

訪問営業のポイントは「心」

①訪問した時に、仕事の話は相手から聞かれるまでは話さない。

②ライバル式場との関係性を上回る人間関係を作るために訪問を繰り返し、プロとして結婚式についてアドバイスする。

③結婚式場を決める時は「息子達が希望した」という理由が一番いい理由であることをお父さんに話す。

④我々の式場で結婚式を行いたいと思ってきた時の相手のサインは、専務の個人的なことを聞いてきた時です。その時は具体的に申し込みをする気持ちもある。

専務はこのアドバイスをきちんと守って、訪問活動を続けていきました。辛いことも嬉しいこともある状況でしたが、その都度、私と連絡を取って専務は本気で頑張りました。会社に対する責任感だけを背負って困っていた彼が、希望を持ち喜びを見い出していく心の変化は、経営カウンセラーの私にとって本当に嬉しい日々でした。

やがて、その結婚式の申し込みを頂くことになりました。社内の営業マンでも、今回ほど他社との縁故が強く、既に決めかけている状態を覆した人はいませんでした。驚くと同時に、そのやり方を専務から教えてもらいたいと言い出す先輩が現れました。その後も実績を上げながら、一緒に前に進もうと専務が皆に話し、皆がうなずく状態になったのです。

これまでも訪問営業のポイントを提示いたしましたが、最後にもう一度、簡略にまとめます。もちろん、言葉で理解するべきものではないことも、ご承知おきください。

◆訪問営業では、何よりもお客様との信頼関係の構築と強化が大切である。

◆そのためは訪問回数を重ね、しかも、契約を取るための訪問はしない。

◆知人、友人になるために訪問する。相手の相談相手になる。

式場ではその後、専務を筆頭に営業の全員が営業活動のなかで、これを実践して身につけて、業績は格段に上がっていきました。専務は社内において率先垂範の行動が取れるようになり、その指導力を中心にしてチームワークの良い会社になりました。

創立者・鈴木昭二曰く

学ぶということは自分のなかに柱を作っていくことなのです。それが身に付けるということにもなるのです。

 

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