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問題を抱えた社員への対応/借金問題の社員ーシリーズ・カウンセリングの現場から

問題を抱えた社員への対応/借金問題の社員ーシリーズ・カウンセリングの現場から

人口2万人の町にある社員20人の会社。開業約2年を過ぎて伸び悩んでいました。社員もなんとなく活気がない。経営の中心は社長の息子で二代目の26歳の専務だった。社内スタッフは若い人が多く、営業部門は課長が37歳でもう一人の営業マンは35歳の既婚者。共に開業時に入社し、初めての営業だけれど、それなりに努力して仕事に取り組んでいました。そのような社内に活力を与え、結果を変えたいと、弊社アンリミテッドとの契約をした専務から、ある日、折り入って困りごとのお話がありました。

問題の発覚

 売上、原価率の改善などの相談後、そのお話がありました。実は35歳の営業マンのA君からの相談に、どのように対応すべきか悩んでいたのでした。彼の相談とは、奥さんとの関係がうまくいかず、2ヵ月前から別居して離婚になりそうなこと。小学3年生の息子が一人いること。同居の両親が面倒をみていたが、最近父親が体調を崩して入院し、母親に大きな負担となっていること。さらに個人的にサラ金から約300万円の借金があり返済が厳しくなってきていて、今の給料では返済が苦しくなるばかり。もっと給料のいい仕事につきたいが直ぐには難しい。いろんな問題が一度に出てきてどうしていいのかわからないとの相談でした。

現状確認

 そのようなA君に会社として、また上司としてどうしたらいいのか、専務は真剣に問いかけてきました。オープン以来、営業成績はあまりよくないけれど、真面目に仕事に取り組んできた彼を、なんとか助けたいと思い、サラ金から銀行に借り換えができるよう交渉しようと考えているところでした。私は次のようにアドバイスをしました。

 本質は、まず、お金で困っている人にお金を貸したりするのは本当の助けにはならないということを確認しました。お金で困らない、悩まない生き方ができるようにすることが本質的な解決なのです。他の個人的な問題も、本人自身が捉え方と行動を変えなければ、同じ悩みに繰り返し悩み続けると確認しました。問題の根本原因は、A君自身・自分にあり、全ては自分で解決できると明確にし、解決の具体的な方法を考えて実行させることにしました。

方法は、

①まず、サラ金問題をもっと把握する

借金の正確な原因と金額などの内容はどうか。つまり生活費に困ってお金を借りているのか、または自分の遊びのお金を使いすぎるのか、生活設計を考えずに車や電気製品などを買っているのかなど原因を確認することと、借金の総額をもう一度確かめることも提案しました。

②次に、本人がこれらの問題にどのような捉え方・考え方をしているのか確認する

個人面談をして、A君の「考え方」を聞きながら、反省しているのか、何とも思っていないのか、なげやりになっているのか、本当の気持ちを見抜くこと。見抜けないまでも感じ取ることが大事なのです。

 翌日、専務が本人に確認したところ、多くの例に漏れず、借金はサラ金以外に個人への借入れが100万円あって、総額は400万円近くだとわかりました。その理由には遊興費もありましたが、無計画さや生活費などが原因でした。

 次の問題は考え方です。A君は現状を反省もし、本当に悩んでいるにもかかわらず、どうすれば良いのか自分ではわからずに困っていることを確認できました。そこで、将来も悩まなくて済むようにA君に指導の手をさしのべることとしました。

激励と気づき

A君とのカウンセリングは、先ずは生命力(内面の元気さ)を高めるように進めました。

Q、現状と今後をどのように考えているの?

A、今はサラ金や女房のことや、親父の入院、子供のことなど、いろいろありすぎて、どうしたらいいのか分かりません。本当に困っています。八方塞がりなんです。(前向きさも感じられず、見た目もやつれている)

Q、解決したいのなら応援するよ。

A、何とかしたいですけど何もできないし、どうにもならないと思ってます。

Q、そんなことはないよ、人間が起こした問題で人間が解決できないものは一つもありません。君は現状を八方塞がりだ、といったよね。十方塞がりならばどうしようもないけど、あと二方開いているじゃない。八方塞がりとは解決策が(今は見えなくても)あるという意味だって知ってますか?それと、現状が変わらないと考えているけど、何もしなくても時は過ぎていきます。過ぎていく時の流れの中で、君の周りの人間環境は君に関係なく変化します。例えば、お父さんの病気が良くなるかもしれないし、悪くなるかもしれない。また奥さんがけじめをつけるため離婚届を持ってくることもあるし、お子さんは来年4年生になるというように、世の中は常に変化の連続です。変わらないものはないのです。その変化が良くなるのか、悪くなるのかが問題なのです。

A、何をすれば良くなるのか自分にはわからないんです。

Q、何もしなくても変わるけど、より早く、より良く変えるには何をしなければならないのかを、もう一度整理してみましょう。

簡単にまとめると

①父親の病気について

いくら悩んでもどうにもならない。医者と病院に任せるしかない。でも、その父親を安心させるために君が元気な姿を見せることはできるよね。

②子供について

子供扱いせずに、母親が居なくなったことについて理由(考え方が違いすぎるなど)をきちんと話すこと。子供は全てを理解できないけど、君が話をしてくれたことに対して信頼をする。不安や不信は取り除けるでしょう。その上で、寂しい思いをさせないために朝食を毎日一緒に食べ、彼の話を聞くこと。

③奥さんについて

奥さんには奥さんの考え方や、あなたに対する不満があるから、少し時間をおいて二人の話し合いをしなさい。その時は相手の話を真剣に聞くこと、そして素直に謝りなさい。最後の結論は奥さんに出させてあげなさい。

④借金について

専務と社長にお願いして、銀行に借り換えて月々の支払いを少なく安定させてもらいなさい。しかし、あなたの生活の基本姿勢や仕事に取り組む姿に変化がなければ実現はしないよ。

 問題を書き出し、整理をして、対応を話し合う中でA君が少しずつ元気を取り戻しました。頭の中で考えているよりも書き出して問題がはっきりしたからです。次は仕事で専務と社長をはじめ社内の信頼を得るために、A君は行動をどう変えるかを、具体的に実践的な行動目標にしました。実行が必ずできるようにしたのです。

今後3ヵ月間は・・・

①出勤時間を30分早くし、毎日の行動予定を専務に確認し指導を受ける。

②自らの至らない点を社内の人にアンケート・取材をし、改善する取り組み状況を毎月の社内会議で発表する。

③新たな見込み顧客情報目標、成約目標を決めて事務所内に書き出し、進捗状況を共有する。などを提案、指導して本人の同意と約束を専務の立会いの下で確認しました。

その上で専務にA君の指導について説明とお願いをしました。

「借金の原因はA君が基本を守れない、自分で感情をコントロールできないからです。借金や夫婦問題を起こす多くの人に共通するのは、自己中心でだらしない生活の人が多いのです。自分で決めたことができない、守れないという弱い人なのです。自分が自己感情に勝つ経験をしなければ、自分で問題を解決する自分にはなれないのです。今回、具体的行動目標を設定しましたが、A君一人では達成できません。彼の今後を思うならば、専務が一緒に行動して達成させてください。自分との戦いに勝てるとA君自身が体感して、力強く仕事に取り組むようになった時には、彼自身の問題をできる限り応援してください。」

こうお願いをして実践していただきました。専務にとっても勉強になったようでした。

 A君は専務の協力の下、毎日自分と戦う中で目標をクリアしていきました。その姿を見ていた社長がA君の自らを変える力と成長に確信を持ち、借金問題では銀行と交渉をして2ヵ月後には借り換えが実現し、給料で計画的に返済できるようにしました。

人は変われるとの証明

 将来への希望と感謝がA君の姿勢を変え、営業成績は格段に上がりました。A君の変化を間近に感じていた社員達が影響を受けて元気になり、会社全体が活気づいていきました。A君は確かな手応えを感じ、自分の身の回りに起きる問題は、自分自身の変革によって解決できると学び体感したのです。家庭問題については、父親は1ヵ月ほどで退院し、奥さんともきちんと話し合って、もめることなく、最後は離婚することとなりました。

 その後も仕事に真面目に取り組み、借金問題にメドがついた2年後に子供との時間を大切にしたいとの考えから、勤務時間がより融通の利く職業へ転職していきました。その退職は、自分の問題を解決して、なおかつ社内に良い影響を残しての清々しい退社となりました。

 A君は新しい職場で元気に働き、周囲から信頼を得ていると専務の耳にも聞こえてきました。もし相談を受ける前の状態のままだったとしたら、不幸な人がたくさん出ていたかもしれません。離婚や転職などの状況に結果としてはなりましたが、一人ひとりの中に、マイナスを最小限にとどめ次へのスタートが切れた事例を今回はご紹介しました。

 

創立者・鈴木昭二曰く

人間の本来持っている力、生命の本来の力というのは偉大なのです。それを全員が平等に持っています。内在する普遍性は全員が平等に持っている。現実化するかどうかは、本人の問題です。

 

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