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会社経営に影響を及ぼす「経営者のこだわり」

会社経営に影響を及ぼす「経営者のこだわり」

ビジネスに邁進する人の多くは、自分なりの〝こだわり〟を持っています。皆さんもそれぞれのこだわりがあるでしょう。特に、経営の陣頭指揮をとるリーダーには、これまで築いてきた独自の人生観、仕事観があり、これをこだわりと呼んでいる場合が多いと思います。

何にこだわるか

今回取り上げる〝こだわり〟とは「自分ならではの方法に固執する」、「自分流のスタイルに専念する」ことから、人によっては「自らの人生哲学を貫く」という深い意味にまでおよびます。経営者にはそれぞれのこだわりがあります。社員教育にこだわりを発揮するリーダーもいれば、経営方針や事業を展開するプロセスにこだわりを色濃く反映するリーダーもいるでしょう。

戦中戦後の混乱期などを身一つで生き抜き、企業を興した経営者達には、独特なこだわりを持つ方が多いようです。その年代の経営者達にはたくさんの素晴らしいこだわりがありますが、なかでも経験豊富な六十〜七十歳代のリーダーの多くの方に「労苦をしてこそ、お金を得る喜びがある」というこだわりがあります。かつては「若い頃の苦労は買ってでもしろ」と、よくいったものです。このようなこだわりは大事にし、承継しつづけたいものです。人は苦労を避けては生きられないし、厳しい状況を乗り越えた人にしか見えてこないビジネスの境地もあるのです。

けれども、最近ではこのようなこだわりはなかなか伝わらないことが多いのではないでしょうか。確かに、大量消費の豊かさのなかで育った世代では「結果が同じなら、楽な方法を選ぼう」と考えがちです。しなくてもいい苦労を若い人に強いるのは難しいことでしょう。しかし、そのようなこだわりを承継することの難しさの原因を世代間ギャップだと片付けてしまってよいのでしょうか。

実は現在のリーダーの姿にその原因が潜んでいることが多いのです。かつて、大変な環境のなかで苦労してきた経営者の方々は、その経験のゆえに危機管理として蓄財に熱心な場合が多くあります。また、これも経験智からその蓄財を会社ではなく経営者一族で行うことも珍しくはありません。そのようなリーダーがいくら「労苦は人を磨く」とメッセージしてもスタッフに納得性はないでしょう。

こだわりとは単にメッセージしつづけることではなく、本人の生き方そのものです。そのこだわりがスタッフから見て共感できるものになった時、こだわりは自然と社内に浸透するのです。独りよがりや、スタッフに理解されないこだわりは、かえってマイナスになります。

過去にどのような素晴らしい経験を持つ経営者でも、現在も経営の前線におられる限りにおいては、スタッフから共感を得られるこだわりを追求してほしいものです。リーダーには常に、スタッフのために尽くす人間主義の生き方が求められます。「自分さえ良ければ」という利己主義から、「共々の豊かさ」を追求する「利他主義」の生き方にこだわるようになればスタッフの共感が得られるようになるのではないでしょうか。「利他の精神」にこだわる生き方によって、苦労を重ねた経験を持つ経営者の「労苦は人を磨く」などのこだわりも輝きを増し、自他共々に豊かな人生をもたらすこだわりとなるのです。

ベースにある思い

何のための経営なのか。多くの経営者は「お客様のために」と言います。しかし、ベースとなっているその思いはいかがでしょうか。売上のために「お客様のために頑張ろう」と、なってはいないでしょうか。

ベースとなる思いの違いによって、経営の方向性は大きく変わってきます。その思いとは、大きく分けると、利己と利他になると考えます。自分のためなのか、お客様のためなのか。自社のためなのか、地域のためなのか。上司から評価を得たいためなのか、部下のためなのか。

社内においても社外に対しても〝思い〟というものは、実は隠せない、どこか伝わってしまうものです。経営難の根源は、この〝ベースとなる思い〟の誤りにあると考えます。

多くのリーダーが、スタッフとの関わりが大事だと様々な場面で学んでいることと思います。しかし、利己の思いをベースに、コミュニケーションだ、食事会だと努力をしても、スタッフのモチベーションは上がらず、ややもすると「部長のために頑張っているんじゃない」などとなってしまうものです。

トップを中心としたスタッフの思いを利己から利他へと是正することが大切です。これは口で言うほど簡単ではありません。何度も何度も自分を確認し、実践し、反省をする。その繰り返しのなかでしか思いを変えることはできません。

利他の方向性のもと、正しい角度の努力をしたならば、商品、価格、設備、スタッフなど一切を変更せずとも、結果の変革は可能になるのです。

売上が上がる〟

 企業である限り利益の追求は必要です。赤字で資金が枯渇しては、多くの方に迷惑をかける結果にもなりかねません。ここでいいたいことは、経営者としての利益の追求が悪いということではなく、利益や売上を根本目的にしてはいけないということなのです。

〝正しい〟根本目的が明確にあってこそ、利益を獲得できるのです。別な表現をすれば、〝売上げを上げる〟のではなく、〝売上が上がる〟のです。

 多くの場合、売上を上げるための施設をつくりたがります。こういう施設でこうしたならば売上が上がる、という方向性で設備投資をする。そうではなく、お客様に喜ばれるための施設をつくるのです。利他という明確な方向性のもと、地域になくてはならない存在意義のある会社を目指すのです。この目指す方向性によって、アクションや展開のすべてが変わってくるのです。

リーダーのプライド

この明確な方向性がスタッフのプライドともなるのです。先のブログにも有りましたが、職人がサラリーマン化しているといった話がありました。サラリーマンが悪いのではなく、問題は、仕事に対する誇りがなくなっているということなのです。他社の見積りや条件の駆け引きに対し、「うちも同じようにします」などと、プライドのない状態を露呈してはいないでしょうか。結局は、お金に頭を下げていることになるのです。「他社でやりたければ他社を使ってください。その代わり当社を使ってくれたら、間違いなく最高のものを提供します」といったプライドが大事だといいたいのです。

こういったプライドは、教えたり、語って聞かせて、伝わるものではありません。リーダーである経営者の状態がスタッフの状態なのです。リーダー自身の「このためにこの仕事をしている」という信念やプライドの強さが伝わるのです。社員教育には、会議や勉強会、研修なども必要ですが、リーダー自身の明確な目的観・人生観が不可欠の絶対条件なのです。

私たちは、油断をするととかく無意識に利己や売上中心の思いになってしまうものです。リーダー自身の思いはどこにあるのか。こだわっているものは何なのか。方向性はどちらを向いているのか。目指すべき理想に立ち返る場面をつくっていただきたいと考えます。

弊社はこれまで1000社以上の経営トップリーダーの方々とお会いし、各社の経営課題と向き合ってきました。ご自身の姿や思いは自分では見えていないことが往々にしてあります。ぜひ、客観的な視点から、自社を、そして自分自身を見つめる機会に、経営カウンセリングサービスをご利用いただけたらと思います。

サービス紹介:経営カウンセリング

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