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ビジネスに「信念」や「理想」は必要なのか?

ビジネスに「信念」や「理想」は必要なのか?

ビジネスの成功と「信念」「理想」などのマインドとはどのような関係性が有るのか?果たして必要なのか?と疑問を持たれる方がいらっしゃいます。結論から言えば、勿論必要です。不可欠と言っても過言ではありません。なぜならば、ビジネスの成功とは、信念や理想の実現と同じ意味合いになるからです。

信念とはどういうことなのか?

「信念」を辞書や各種情報で調べると「行動の基礎となる固く疑わない心」とあります。ビジネスの世界で成功する、結果を出すためには、様々な戦略を組み、戦術を打っていくことが求められます。DXをはじめ、世の中にはあらゆる手段、手法が日々アップデートされていきます。そのような競争の世界にあって、今やっていることは果たして結と果につながるのか?このまま続けても上手くいかないのではないか?と目の前の現実に、思いが揺らぐことも有ります。では、Aというやり方ではなく、今流行りのBという技術を導入すれば・・・と目移りしてしまいます。そのような時に行動の基礎となる固く疑わない心が有るのかどうかは、手法の選び方よりもっと重要なことと考えます。

もちろん、優れた技術や手法は大事です。しかし、それらを活かすには主体となる行動する人の「信念」の有無こそが結果に反映されていきます。

日々変化の激しい経営や仕事の現場において、私たちがとる行動の基礎には、固く信じて疑わない心・・・信念が必要であり、信念を貫くことは非常に大事なことです。また、一方で難しいことでもあります。

不信が生み出した欺隔(ぎまん)と混乱

近年、世間を騒がせた事件のキーワードは信念の正反対、「不信」にあると思います。大手メーカーによる不正検査や品質不正、だいぶ前になりますが、老舗料亭でも起きた食品不正。ゆうちょ・かんぽの不適切販売や建物の耐震偽装や医療ミスなど、様々な不正や問題が繰り返されてきました。それまで信じられてきた食品製造や建築・設計者、さらにはゆうびんや医師、病院にも不信の眼が向けられました。残念ながら、これまで安心と考えられていた産業やプロフェッショナルも信じられない時代になってしまいました。また、日本大学・前理事長の所得税法違反での有罪判決及び元理事の背任事件での逮捕・起訴という一連の役員による不祥事もありました。ここでも、日本を代表する学府であり、また教育者としての信念の欠如が指摘されました。売れる、儲かる、自分のところが良くなれば、後はどうなろうが我関せずという自己中心的発想ともいえるかと思います。

多くの企業や組織が経営理念や指針を掲げていると思いますが、問題なのは、どのような状況にあっても、そこに込められた考え方の根本(哲学)に対し、信念をもって貫き実践できているかどうかが問われるのではないでしょうか。だからこそ信念は必要なのです。

信念は貫いてこそ信念

いざという時にこそ、信念や本音が表れるものです。信念を欠いていたり、分かってはいても実践できていない経営者やリーダーに接すると、周囲の人たちはすぐに感じ取るものです。経営状態が悪化したり、逆境や難しい状況にあっても、正しい信念を貫くことが経営者やリーダーには求められます。

「信念」の人は「希望」を胸に「理想」を掲げる人です。信念の人の周りには多くの人が集まり、皆がついてきます。そして団結が生まれ、信念の人を中心にして勢いと感動が存在するのです。

正しい人生観を持ち、理想を掲げ、それを信念として、常に実践に移そうと挑戦していく。「信念は貫いてこそ信念」です。いまこそ確固たる信念を持ち、実践することが求められています。

 

理想とは

「理想」は時として自分を苦しめるもの、だからあまり大きな理想は持たない方が良いという人がいます。先の信念についても同じことが言えますが、人間の行動の原点は、その人の〝心〟の内にあります。見てきた通り信念に裏打ちされたものだからこそ、行動に対し結果もついてきます。『理想』についても同様で、それは他人から与えられるものではなく、自分の本心からの思いとして願い考えるものです。そうして発見する理想だからこそ、人は自らの理想に向かって突き進んでいくことができるのです。

一方、人から「いい考えだ」、「素晴らしい目標だ」、「素敵な理想だ」と評価されることばかりを期待して立てた計画や行動は、結果的に断念や諦めで終わることが多いものです。自分の〝理想を発見〟するには、本気で何かに取り組もうという素朴な意欲を、自らが持つことから始まります。「こうしたいからやり遂げてみせる」という本気の感情(熱願)を心の内に持つことが必要です。なぜなら、人は本来的に「自己実現欲求」という自ら実現したい理想を欲するものだからです。

企業で言うならば経営理念がその会社の理想であり信念ともなります。そこに説かれている内容を現実化することがその会社の目的となり、実現させるプロセスに社長から新入社員に至る一人ひとりの取組み・普段の仕事が存在します。つまり、その一人ひとりの理想、信念に裏付けられた実行、行動が会社の掲げる経営理念(企業の目的)と方向性が一致したときに、その人が人財ともなります。しかし、それは誰かから与えられるものではなく、自らが「固く疑わない心」で自らのものとして捉えられているのかどうかが、非常に大事なこととなります。今よく言われる、エンゲージメントもモチベーションもここに行きつくところだと思います。

理想の持続には仲間が不可欠

人間はこうした感情を、一人で持ちつづけることは簡単にはできません。時として揺れ動くものです。それゆえ仲間が大事になります。自分の理想を信頼できる仲間に常に語っていく。自分のことをよく理解している仲間からは、思わず弱気な発言をしても、「あの夢はどうした。夢に向かって頑張れ!」と叱咤激励で奮い立たせてくれます。

こうした仲間は、自ら求めない限り出会うことはないでしょう。私たちは率先して前向きな人間空間を作る、あるいはそこに身を置く努力が必要です。自らが本音を語り、心を開いて接していけば、逆境の時に助けてくれる仲間も必ず現れます。

ところが往々にして、自分の周りの人間空間を、気の合う相手だけ、イエスマンだけにしてしまっているケースもよく見られます。それでは当然、どんなに優秀な人でも事実認識を誤り、暴走することもありえます。ですから、厳しい意見を自らが求め、あえて苦言を呈してくれる存在を身の回りに置くことも、自分の理想を忘れさせないためには必要なことです。

理想に向かうプロセスを重んじる

また、自分の理想にこだわるあまり、結果のみを追求する方々もいます。私たちの意味する『理想の実現』とは、『結果』を追い求めることではありません。実現を目指してどのように頑張ったのか。そのプロセスが重要なのです。もちろんそれだけを重んじて結果は問わないというのでもありません。

先に見たような、昨今、企業・組織の様々な不祥事。それはプロセスを軽んじて、売上や利益といった結果(自利)だけを追求したからに他ならないでしょう。そうではなくトップが自分の理想を実現するには、会議や打ち合わせなどあらゆるミーティングの場で、また普段の言動や何気ない触れ合いの中で、自分の信念や理想を自然に伝えていくことが大事だと考えます。

理念教育など、そのための専門的な社員教育を施すのではなく、まるで家庭教育のように、日頃からトップリーダー自身が常に理想に向かう自分の姿を見せていくことです。どんなに大きな組織であろうと、最小単位なら五人、十人のグループの集合体です。まず、トップが発信する信念や理想が各リーダーに伝わる。各リーダーたちは、家庭でいうところの『家長』となって、波紋が広がるようにスタッフの最後の一人にまでトップの信念や理想を浸透させる。これが会社・組織において「理想」を実現する理想的なプロセスではないでしょうか。

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