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事業承継ー後継者にいつ・何を継承するのか?

事業承継ー後継者にいつ・何を継承するのか?

1.後継の第一要件

  今回は後継者の問題について申し上げたいと思います。後継者の問題といっても、各社、各組織によって様々なものがあります。いくつかの例を挙げれば、息子に跡を継ぐ気がないこと。 ≪関連コンテンツ:【事業承継問題】跡を継ぐ意志の見えない後継者への対応策 ≫

かといって、血縁者以外では、借入に対する保証等々、法人個人が入り混じり、現実的には難しいということも・・・。あるいは、後を継ぐ意思はあっても、身勝手であったり、弱々しかったり、しまいには逃げ出すようなケースも現実に見てきました。仮にトップリーダーとしての成長がみられても、会議を開けば親子喧嘩に発展してしまうこともあります。また、兄弟がいる場合には、どちらが適任かと迷ってしまうこともあるでしょう。あるいは、お互いに主張を譲らず衝突を繰り返すことが悩みの種になることもあります。他にも、会社は自分のものではないと頭では理解していても、自ら作り上げた会社を息子に継がせたいという思いが強いことや、代々続いた商売を自分の代で終わらせるわけにはいかないということもあるかもしれません。事業承継には、このように一言では言いきれない難しさがあるように思います。

こうした難しさを重々承知した上でも敢えて申し上げるならば、後継の第一要件とは、「誰に」ではなく「何を」、つまり事業を推進するうえで根本となる考え方・哲学の継承であると考えます。

概ね、わたしたちは誰にという「人」を先に持ってきてしまうように思います。中小企業の場合、血縁関係で後継者になるケースが多く見受けられます。息子を後継者として期待することは悪いことではありません。只、トップとしてリーダーシップをとれるだけの成長をするならば良いのですが、血縁というだけのことで後継者になったとしたならば、結果的に苦しい思いをお互いにしてしまうことが多いのではないでしょうか。周囲から『相応しい』、『相応しくない』などと言われてしまう場合が有ります。

申し上げたいことは、「人」よりも「根本的な考え方-経営哲学」が先ではないかということです。つまり、何のためにこの仕事をし、何を大事にして経営をしていくのかという「経営の目的」です。この経営の車軸となる考え方や哲学を本当に理解し実践もし『受け継がれてきた考え方を軸にこれからもやっていこう』という人が真の後継者ではないでしょうか。

 

2.経営の根本

継承すべきは「理念や哲学」であると理解するものの、そうは言っても、いざ現実になると会社資産や会社組織を引き継ぐという思いはぬぐい難いものです。ある意味、形あるものにとらわれてしまう。そこには利害や損得、あるいは自己感情が往々にして絡んでくるものです。そして、そのことが迷いや悩みを生じさせる原因ともなるのではないでしょうか。『担保や保証のことを考えると息子以外に考え難い、でも息子は……』、あるいは『ここまで築いてきた会社だから何とか親族に……』等々と。

 後継については、小説『運命の星』(現在当サイトに掲載中)のなかにも思いの一端を綴りました。生きるため、家族を守るためにと商売に人生のすべてをかけてきた社長が病床にて専務である息子に語る場面があります。

――「そもそも俺が始めた商売だ、俺の時代で終わりにしてもいい。無理してお前が継ぐ必要はない」。……「俺は経営の根本を知らないでやってきてしまった。だから、会社という形だけ、中身のない実体だけをお前に残してしまったようだ。本来ならば、その経営の中身こそ確かなものにして残し、後継のお前に引き継がなければならなかった」と――。中小零細企業の経営者の苦悩は表現し尽くせるものではありませんが、言わんとしたことは後継者問題の本質です。

結局、後継の問題を複雑且つ難しくしているのは「人間」です。感情や欲望・願望、あるいは、不安や悲嘆など、揺れ動く心に翻弄されてしまうものです。だからこそ、人やモノではなく、哲学こそが優先すべきことではないかと思うわけです。

 ≪参照:ビジネス小説「運命の星」

3.事業継承する「時」

 後継の問題について、経営哲学の継承を第一にすることを申し上げました。続いては事業継承する「時」について申し上げます。

 一般的には、年齢や経営的な諸条件などによって継承する「時」を考えることが多いと思います。また、経営者仲間や友人同士の「歳も歳だし、そろそろ息子に継がせたら?」というような何気ない会話を契機に事業継承を真剣に考え始めることも少なからずあるようです。

 後継者育成や会社資産の問題等々、計画的な準備は必要なことだとしても、敢えて、事業継承の「時」の条件を言えばポイントは三つあると思います。

一つは、継承することによって後継者が以前にもまして生き生きと輝くのかどうか。二つ目は、生涯を通して共有する哲学(単に経営という側面以外…例えば人生哲学)を持っているのかどうか。三つ目は、自分と後継者のことをよく知る人で、いわば指導者(後見者)が賛同しているのかどうか。

 一つ目については、自分が一切の責任を担っていくことになれば、勢い、後継者は頑張ります。しかし、その心意気が使命感にまで高まっているならばよいのですが、経営現場の様々な問題に追われるなかで、責任感が苦しみになってしまうことが少なくありません。

そこで重要なのが二つ目の哲学です。哲学があるからこそ経営現場で起こる問題や自らの課題に正面から向き合い、尚且つ主体的に理想へと立ち上がることができるのではないでしょうか。

三つ目については、自分としては『そろそろ』と考えていても、二人のことをよく知る人から見れば「もう少し時間をかけた方が」とか、「まだ社長として現場の指揮をとった方がいいのでは」ということもあります。自分一人では客観的に判断することは難しいものです。また、この三つ目のことが二つ目の哲学の共有と実践がしっかりできているかどうかを客観的に見ることにも繋がります。

つまり、年齢や経営上のことが条件なのではありません。平易な言い方をすれば、「哲学を軸にするようになった。これからもこの方向性で頑張ってくれるだろう。そして信頼者も賛同してくれている」となった時が継承する時だと考えます。

 

4.継承時の大きな課題

 三つの条件が整ったうえでも、実は大事な問題がもう一つ。それは、一線を退く時には、その一念を委譲しなくてはならないということ。会社に人生を賭けてきた経営者、特に創業者にとってこれが最も難しい課題かもしれません。

代表権や諸々の責任を委譲したといっても、会社への思い入れは多分にあります。それ故、継承後も会社の状況を確認したり助言や忠告をしたり、遂には自分で舵を取るのと同じ状態にしてしまったりと、継承したのは形ばかりという事例は少なくありません。それでは、後継者にとっては『一切を担っている』という充実感も手応えも感じることができず、窮屈で苦しいだけのプレッシャーに苛まされてしまうのではないでしょうか。たとえそのつもりはなくとも、先代の存在感は思いのほか後継者や現場に影響力を持っているものです。

つまり、退く時に一念の委譲ができないのであれば、継承する時ではないのです。事業継承で上手くいっている会社の共通点は潔い引き際があります。それはこの一念の委譲があるからこそ、道を譲る方はある種の爽やかささえ感じさせるものです。

詰まるところ、問題の本質を別な角度で言えば、人を大事にするという視点がどうしても抜け落ちてしまう。「お前らしく」ではなく、後継者の時々の判断や考え方を責めたり否定してしまったり、あるいは、「俺がせっかくここまでしてきた会社なのだから」と結果を中心に考えたり、自分の思いや感情を先にもってきてしまったりと。

そこで是非とも、後継者にはあって自分にはない長所や可能性を見出す角度、いわゆるヒューマニズムの視点を大切にしてほしいと思います。乱暴な言い方かもしれませんが、「後は任せた。哲学を基軸にしてお前らしくやればいいんだ」と腹を決めることです。その結果として、ニューリーダーに相応しい成長を後継者にもたらすのではないでしょうか。

 弊社アンリミテッドでは、30年以上の長きにわたりご縁いただいている会社様が多くあります。ご契約当初の経営の主体者である社長は、既に会長職などになり、後継の人材に経営の中心が移っている会社も多数ございます。先代経営者の方にお会いする度に聞かれる言葉は決まって「ちゃんとやってますか?」といった後継者を心配されている心情です。幾つになっても、何年経とうとも、先代として、また親としての心配心は無くならないようです。「大丈夫ですよ」との私たちの言葉には多少安心していただけるようです。事業の承継、後継者の育成は社会問題化してきています。少しでも信頼を寄せていただいている会社様のお役に立てるよう、今後とも簡単ではない承継問題に尽力していく覚悟です。

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