店長の内面が店舗運営に現れる!ダイニングカフェの変革 (上)

飲食店の運営で大事なことは何なのでしょうか?もちろんメインとなるのは料理や飲み物なのですが、それだけを改善しても、よい結果にならないこともあります。店舗運営には、店長(中心者)の考え方が色濃く反映されます。雰囲気、メニュー、味、サービス、値段とすべてに現れます。今回は料理の枠を越えて店舗の改革をし、半年で売上を150%UPした事例をお伝えします。
店長兼シェフとスタッフの状態
人口20万人ほどの地方都市に今回ご紹介する店舗はありました。オープンして1年。その地域では珍しいダイニングカフェ。新幹線が停まる駅前の目抜き通りに立地し、店舗も若者うけをする素敵な店舗でした。需要はあるはずなのに、オープンして1年が経ち、客足は徐々に減っていました。客席数40席の店に、店長兼シェフと2人のスタッフがいました。
低迷している店舗を何とかしてほしいとオーナーから依頼を受け、依頼のあったお店に訪問する日が来ました。店長兼シェフと女性サービススタッフの二名と、ピーク時に合わせてアルバイト数名で運営していました。シェフと二名の女性スタッフと話をした結果、次のことが分かりました。
●シェフは店長として頑張ってはいるが、店長としても料理長としても、現場を運営する能力が不足している
●人柄がよいシェフなので、スタッフからは好かれている
(店長の指示しか、私たちは聞きません・・・とまで最初は言われました)
●店長もスタッフも活きいきと働いていない。働く喜びがない
シェフを補佐する意味でも、私どもが関わって現場改革をする方向にしました。スタッフ二名に対しては現場で一緒に働くことで信頼関係をつくることにしました。
変革の取り組みのポイント
まず取り組んだことは、店長とスタッフの内面の変革でした。喜んで、あるいは楽しんで仕事にあたらなければ、さまざまな方法論を駆使しても結果には結びつきません。目指すものがない、したがって達成の喜びも見い出せない、仕事に対する姿勢が受け身で、惰性になっている、等々さまざまな状況がありました。
そこで〝心の模様替え〟をすることにしたのです。それは、リニューアルです。商圏を調べると、人口10万人。街並みはある程度栄えています。人口に対し、居酒屋が多いのですが、特徴のある飲食店が少ないので、ダイニングカフェとして二十代、三十代の若者をターゲットに、特徴のある店舗にすれば、需要はあると見ました。店舗のデザインは若者向けの素敵なものであったため、デザイン面でのリニューアルをする必要はなかったのですが、心の模様替えのために、テーブルやディスプレイ等を変更することにし、一週間ほど店を閉めて「リニューアルオープン」として打ち出すことにしました。
ポイント1-自分たちの店をつくる
スタッフには、「今までは、オーナーから与えられた環境や指示に従って頑張ってこられたことと思います。リニューアルオープンに向け、これからは自分たちの店を一緒につくっていきましょう」とメッセージしました。気持ちの変化はすぐには現れませんが、一緒にリニューアルに向けての準備をするなかで、徐々に前向きになっていきました。
≪リニューアル項目≫
店舗デザイン(店内のテーブルや椅子、オブジェの変更と、レイアウトの変更)
フードメニューの一新ドリンクメニューの一新
接客内容の改善広告宣伝の企画
備品のデザイン変更
ポイント2-フードメニューを一新
現状調査として、まずは売上を分析しました。
■売上の現状分析
①売上(ランチとディナーの割合)
ランチに比べ、ディナーが弱い
②売上(フードとドリンクの割合)
ドリンクの売上が少ない
③ランチとディナーの客単価
妥当だが、ディナーはドリンクの売上を伸ばし、客単価アップを狙う必要がある。一人が食することができる量は限られています。それに対し、料理の内容や店内の雰囲気によってドリンクの量は増やすことができます
■自己中心のメニュー
メニューを見ると、一品一品の商品の値段が高めで、品数が少ないと感じました。ドリンクの種類も少ない。おそらくディナーのお客様は、1皿+2ドリンクといったところです。そのままアドバイスするのではなく、先ずは店長にたずねました。
カウンセラー:「全体的に値段が高めで、品数も少ないように感じるのですが?」
店長:「ええ、確かにそうです。高級感のあるようにしています」
カウンセラー:「この値段設定だと、お客様は一人あたり、1皿+2ドリンクといったところですね。全体的な料金設定をもう少し低くして、オーダーが増えるようにできるといいかと思いますがいかがですか?」
店長:「う~ん。ちょっときついですね。今でも忙しいのに、これ以上注文が増えると、対応しきれませんよ。お客様を待たせることになり、かえってクレームにつながりませんか?それに料理原価も厳しく言われているので、大変さが増して、原価が上がってしまってはどうなんですかね?」
カウンセラー:「確かにいまも精一杯対応されてますからね。ですが、とにかく今は、お客様に喜んで帰ってもらうことが大切です。大半のお客様は、女性ですよね。女性が好むのは、何品もの料理を少しずつ楽しむことです。全体的な料金を落として、一人あたり、3皿+3ドリンクくらい楽しめるようにしたいですね」
必ず成功するとの確信と勢いで対話を続けました。また数字ばかりを気にして、お客様の実態を見ていないことが分かりました。
数字を気にしていると見失うもの、それはお客様の喜びです。お客様を売上という数字で見て、お客様のありがたみを忘れてしまう。そして、知らずしらずのうちに、売上中心、利益中心、手間中心といった自己中心的な判断を基にしてしまうのです。結果として、料理をつくる手間をできるかぎり省いて、売上を確保したいとの思いがメニュー構成に表れていました。お客様を待たせたくないとは、正論のようにも聞こえますが、大事なことは、待せないようにする工夫をすることです。もしくは技量を上げることです。
≪ポイント≫
自己中心的なメニューを、お客様中心のメニューに改善
全体の料金を下げて、客単価は下げない。結果的に品数が多く注文できるようにする
品数多く楽しめるように、料理数とドリンクの種類を増やす
メニューのデザインを変え、売りたい料理とドリンクに目がとまるレイアウトにする
メニュー改善
≪メニューを改善する時のポイント≫
①安心を売る商品があるかどうか
②驚きを売る商品があるかどうか
③口コミで広がる商品があるかどうか
④見た目を売る商品があるかどうか
①安心とは、定番料理のことです。誰もが味をイメージできる料理
②驚きとは、味のほかに、イベン性や料理の演出などです
③口コミとは、ついつい人に話をしたくなる話題性です
④見た目とは、デザインのよさや特大、器、盛付け、演出です
これら四つのポイントを考慮に入れ、料理とドリンクのメニューを考えます。オーダー数と売上の分析の結果は、オーダー数、売上ともにパスタが圧倒的に多い。メニュー構成としては、中心メニューであるパスタ料理の質を上げました。
サイドメニューは、注文したくなる演出料理、アルコールを飲みたくなるおつまみ系料理、種類豊富なデザート。料理メニューを二十種類から五十種類に増やしました。
ドリンクは、ターゲットと調査結果を基に、カクテルを中心にドリンクメニューを増やしました。以下改善ポイントをまとめてみます。
【ランチメニュー改善ポイント】
野菜をふんだんに使用したヘルシーランチ
期待以上のボリューム
大盛り無料サービス
スープバー四種
三百円でセットメニュー
温かパン・あつあつスープ・新鮮サラダ
百円ドリンクバー
夜メニューも注文可
【夜メニュー改善ポイント】
小皿料理・アルコール類が飲みたくなる料理オール二八〇円
生ビールには一皿無料
ピッツァサイズを大きくしてアピール
大盛りパスタの量を、特盛りにする
デザートは手作り。量は少なく、味は本格的に
イラスト入り黒板メニュー
【サービスのポイント】
お客様との会話を増やす
オーダー時に、推しの商品への説明をする
ディナーでは、特にドリンクのオーダーを増やしたいところです。オーダーを増やすには、お酒を飲みたくなる料理がある、滞在時間を長くする、いつでも気軽にオーダーできることが必要です。やり方、方法はさまざまですが、お客様と同じ時間、同じ空間にいることを共に楽しむ気持ちで接客をすることが肝要です。
【繁盛する飲食店のポイント】
安心を売る商品
驚きを売る商品
口コミで広がる商品
コストを管理する仕組み
スマートな仕込み
見た目を売る商品
サービス・制服・料理・内装に統一感
―後編:店長の内面が店舗運営に現れる!ダイニングカフェの変革 (下)に続く―
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