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店長の内面が店舗運営に現れる!ダイニングカフェの変革 (下)

店長の内面が店舗運営に現れる!ダイニングカフェの変革 (下)

—前回店長の内面が店舗運営に現れる!ダイニングカフェの変革 (上)の内容)―

オーナーからの依頼を受け、ダイニングカフェを変革することになりました。現状調査もした結果、スタッフの心の模様替えが最優先のテーマと判断し、店を一週間閉め、リニューアルオープンをすることになりました。リニューアルオープンといっても、テーブルと椅子、ディスプレイ、備品などを替え、店内レイアウトを改めるだけのリニューアルです。店舗運営の方向性を明確にし、区切りをつけるためのリニューアルでした。

スタッフの気持ちをリニューアルするとともに、売上や来客状況などの現状分析をした上で、フードメニューとドリンクメニューを改善しました。お客様に多くの料理を楽しんでいただけるよう、一皿の単価を低くし、料理の単価を下げても、客単価は下がらない内容に改善しました。業務の負担を減らし、かつ、オーダーを増やすポイントについてお伝えしたいと思います。

 

お客様に喜んでいただくための「サービス勉強会」

サービススタッフは、気持ちのいいメンバーでした。仕事に対するモチベーションさえ高まれば、その魅力を引きだすことができます。そのために、一つひとつの仕事に対する目的と目標を明確にし、実現するための具体的な方法をトレーニングすることにしました。

サービストレーニングの内容は、一般的な内容です。あいさつ、見送り、オーダーの受け方、電話応対、予約の受け方、料理やドリンクの出し方、お客様のどこを見るか、食事中にはどこを注意して見るかなどです。

一つひとつの動作の再確認をし、一つひとつの行動の目的を明確にしました。接客の基本動作と一つひとつの行動の目的を学べば、仕事に対する取り組み方が変わってきます。自発的に応用し、さらにお客様に喜んでもらう接客を心がけるものです。そこに不可欠なことは、心です。喜んでもらいたいという心です。この、スタッフ一人ひとりの心が、前向きで、しかも元気でなければなりません。そのために、一人ひとりからじっくりと話を聞くようにしました。趣味や家庭・職場での不満や喜びなどです。

あるスタッフからは、旦那さんに対する不満の話がありました。「うちの人は、全然協力的ではないんです。何にもしてくれない。休みの日はゴロゴロ寝てばっかりでね・・・」「主婦と仕事との両立は大変ですよね。旦那さんのことで悩まないようにするには期待しないことですよ。期待するから、『やってくれない、やってくれない』と不満が募るんですよね。そして不満がある状態でいるから、旦那さんからも敬遠されたり、何もしてくれなくなってしまうんだと思いますよ」

「そうかもしれませんね。でも、私ばっかり苦労してるみたいで・・・」

「実は接客でも同じなんですよ」

「そうなんですか・・・?」

「たまに、接客するのが嫌になるようなお客様っているじゃないですか。傲慢(ごうまん)な人とか。すぐ怒る人とか。それは、お客様に平静な状態でいてくれることを期待しているからなんですよ。傲慢な人を基準にしたら、礼儀正しいお客さんにはものすごく感謝できると思いませんか」

「このお客様はいい人だ、と思いますね(笑)」。

「そういう心持ちで接客していきましょうよ。不機嫌そうなお客様も帰り際には笑顔にする気持ちでいきましょう」

「わかりました。やってみます」

現実は、口で言うほど簡単ではありませんが、心持ちしだいでお客様一人ひとりに対する見え方も変わることをわかってくれました。その後は、苦手なお客さんが来たときには、訓練のチャンスだという捉え方をするようになりました。

■ポイント

一つひとつの仕事の目的を明確にする

具体的行動を明確にする

同じお客様であっても、捉え方で接客が変わる

 

智慧を絞ること

スタッフ全員で駅前にビラを配ることにしました。ビラには自分が配ったと分かる印(スタンプ)を押しておきます。宣伝のためもありましたが、それ以上に、スタッフが喜びを見いだすためです。自分が配ったビラを見て、お客様が来店されることは喜びです。おのずとサービスにも力が入ります。いざビラを配ると、世間の冷たさも痛感します。受け取ってくれない。受け取ってもすぐに捨てられるなど、ほとんどは冷たくあしらわれました。快く受け取ってくれるのはほんの数人です。そこで、スタッフの一人が、ビラ配りの方法を変えてみました。方法はこうです。手当たりしだいにチラシを渡すのではなく、店の雰囲気に興味を持つ方かどうか(ターゲットかどうか)を判断したうえで声をかけます。ほんの些細な差別化ではあります。人を選んで渡すので多くの人にチラシを配れませんが、そのスタッフの印のついたチラシを持ってくるお客様が他スタッフのものと比べ、断然多い結果になりました。驚いたのは他のスタッフです。

「どうしてそんなに動員できるのですか?」「お客様に店に来てほしいと、本気で思っていたからですよ」「私たちだって、本気で来てほしいと思ってますよ。実際、何百枚と一生懸命チラシを配りました」。「確かに苦労して配ってましたよね。でも、チラシを配る工夫が少し足りなかったのです。来てもらちええるように、ほんの少しでいいから智慧を絞りましょう。絶対に来てほしいと本気で思えば、湧いてくる智慧も行動の結果も違ってきます」

お伝えしたいのは、やり方や方法が大事なのではありません。本気で成し遂げたいと思い、智慧を絞ることが大事なのです。思っているだけでは結果はでません。本気で思い、智慧を絞り、行動することです。本気でもなく、智慧も絞らずに、漫然と時間を過ごし、やり方だけ真似たとしてもよい結果は生まれません。

■ポイント

本気になり、智慧を絞る

やり方だけを真似ても、同じ結果にはならない

 

接客時間を増やせば売上はアップする

 ダイニング3.jpg

ポイント1-主体業務と付帯業務の取り組み方

メニュー改善や接客の改善に伴い、店長とスタッフの負担が増えることが予想されました。メニューにいたっては「こんなに種類が多く、オーダー数が増えたらとても現場が回らない」との訴えがありました。そこでアドバイスをしました。業務には、大きく分けると二つ、主体業務付帯業務とがあります。仕事が上手な人は付帯業務に比べ、主体業務が多い人です。主体業務とは、接客でいえば接客や料理出しなど、お客様と直接、接している仕事です。料理でいえば調理です。

付帯業務とは、テーブルセットの準備やメンテナンスなどの接客をするための準備や、調理をするための仕込みや盛り付けなどです。主体業務も付帯業務も、どちらも大事な業務です。付帯業務をおろそかにしていいわけではありません。しかし、うまくいっていない店舗を見ると、主体業務よりも付帯業務に時間をさいていることが多くなっています。

売上アップを図るには、主体業務に力を入れることです。繁盛している店ほどサービススタッフの接客時間が長い、また、客単価が高くなっている店ほど接客時間が長いというデータもあります。

つまり、主体業務に力を入れるには、付帯業務を効率化し、付帯業務の負担を減らす必要があります。これが料理やドリンクを素早く出し、接客時間と接客の質を向上させる方法です。もちろん、スタッフがお客様のためにと活きいきと喜んで働くことは、何よりも大切です。

ポイント2-接客面の効率化

■ポイント

作業の数を減らす

行う必要のない作業は省く

作業を同時に行う

作業場所、必要なモノを近くに置き、作業が同時にできるようにする

導線を短くする

関係性の強い場所やモノは近くに設置する(例:ドリンク、グラス、氷、ストロー)

導線を楽にする

収納や作業場の高さ・広さ・段差を作業しやすいようにする

スタッフアンケートを行い、「日々、非効率的に感じていること」について意見を聴く

接客以外の作業をできるかぎり短時間でできるようにする、できるだけ苦労しないようにすることです。そして、お客様の前にいる時間を増やすようにすること。物を置く配置と高さを変えるだけでも、効果があります。ほかには収納は蓋付きがいいのかどうか、器は洗いやすいか、片付けやすいか、掃除はしやすいかなどです。

お客様を見る時間が増えるだけで、オーダーは増えます。お客様はオーダーをする前に一度、スタッフが近くにいないかどうか周りを見てからスタッフを呼びます。時には、周りを見て近くにスタッフがいなければ、オーダーを後回しにすることもあります。呼ばれなくても、周りを見るお客様や目が合ったお客様がいたら、声をかけてもらいやすいように、そのテーブルの横を通るなどの心配大切です。

ポイント3-料理面の効率化

■ポイント

同じ料理に使用するものは、まとめて置く

使用頻度の高いものは、手の届く範囲に配置

冷凍・冷蔵庫内を区画化する使用頻度や料理カテゴリーごとに

オーダーが少なく、しかも仕込みが素早くできるものについてはオーダーごとに仕込む

オーダーが多く、しかも盛り付けに時間がかかるものは、あらかじめピーク前に準備

使用頻度の高い調理用具や皿の配置

百円ショップやホームセンターで購入した棚やボトルを使って作業を少しでも楽にする

仕込みの完成度を上げ、ピーク時の無駄な動きを減らす

ピーク中は、焼く・揚げる・茹でる・盛り付ける以外の作業を減らす

ピーク時に、素早く調理と盛り付けをできるようにすることです。カットした食材は一皿分ずつ小分けしておく、もしくは、カットした食材を料理ごとに一度に出せるようにしておく。作業工程数を増やさない盛り付けにする。さらに、一日の仕込みスケジュールを明確にする。

 

まとめ

今回ご紹介した飲食業に限らず、現場変革にはリーダーの変革が第一です。本気でお客様とスタッフを喜ばせたいと思っているのかどうか。この強烈な思いと行動があって、はじめて方法論が活きてきます。このダイニングカフェは、お客様に喜んでほしいとの思いはありましたが、それ以上に、売上が気になっていたのです。なんとかしたいという思いはあっても、智慧を搾りだすほどではありませんでした。そして、お客様の要望に応えるようにするための業務の効率化がなされていませんでした。

先ずは「スタッフの心を整える」こと。そして、一つひとつの目的を明確にし、身近な行動目標を作る。

次に「智慧と工夫を磨く」こと。

こうして、サービススタッフは接客をする喜びを今まで以上に感じるようになり、シェフは自身を省み、シェフとしての技量を鍛え、店長としての思いを強化しました。ダイニングカフェはリニューアルを機に、繁盛店へと変革を遂げました。

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