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同業他社への視察を活用して人材育成—カウンセリングの現場から

同業他社への視察を活用して人材育成—カウンセリングの現場から

「いや~、驚きましたよ。実は先月、姪の結婚式で○○市の××式場に行って、ビックリしましたよ。設備はうちとそれ程変わりなかったけれども、そこのスタッフが素晴らしかった!元気で明るくて、サービスも良いし、生き生きと働いていました。その姿に感動しましてね。披露宴後にそこの社長に会って、どうしたらあんなに良い社員を集めることができるのかを聞いたんです。その社長は『全部アンリミさんのお陰で社員が成長したのですよ』といわれまして・・・。さっそくご紹介頂いて今日来て頂いたという訳です。うちのスタッフをあの式場のように変えていただけないでしょうか?」と、その総支配人は初めて会った時に名刺交換もそこそこに、身を乗り出しながら一気に話されました。

いきさつ

その会社は大企業のホテル事業部の一拠点でしたが、地方にあることもあり、目を見張るような業績もなく、かえって地元の宴会などが少しずつ減少していました。特に婚礼は気になるライバルがあるわけでもないのに、毎年減りつづけていました。最高責任者の総支配人は、そのような状態を何とか改善したいと思って二年前に宴会場を改装しました。しかし、改装の時こそ婚礼も少し増えましたが、すぐに以前と同様に戻り、その後はまた減り始めていました。

そんな状況に悩んでいた時に、姪の結婚式に列席してカルチャーショックを受けたのです。その式場がアンリミテッドの指導を受けていることを知った総支配人は、さっそくアンリミの指導を取り入れることにしました。

方針の検討

契約の時に現状の問題点などを確認して、営業部のメンバーを教育して営業力の強化を図ることにしました。しかし、それには営業部のメンバー構成を変えなければなりません。当時の営業部は三人の平均年齢が四十五歳と、婚礼営業としてはかなり高齢でしたので、お客様と同年代で価値観が合う二十代の社員を加えてもらうようにしました。

若いスタッフは三人。それまではバンケットの料飲サービス担当でしたので、総支配人は彼らが新規対応などができるか心配していました。しかし、もっと不安だったのは若い当人達でした。

指導開始

新しいメンバーを加えての勉強会を始めました。最初にいままでの営業活動状況を確認したところ、先輩組の営業担当は案の定、営業活動とは名ばかりで、自らの仕事への責任感も工夫もなく、単に外回りを惰性的に繰り返して夕方の六時には退社していました。婚礼営業は夜七時以降でも打合せや対応があるのは当たり前ですから、あるまじき行動パターンなのです。その点を指摘すると、先輩組はそろって言い訳をして行動を正当化していました。

このような先輩組を勉強会で指導して行動を変えさせるには時間がかかります。この場合は、危機感を感じさせるのがいい方法になると判断して、営業については全くの素人である若いスタッフの成長した姿を見せることにしました。勉強会は若いスタッフを中心に指導をしました。更に営業部に刺激を与えるために若いスタッフの一人を、アンリミテッドの他のクライアントに研修としてひと月程行ってもらい、現場のノウハウを学ばせることにしました。その流れと変化を紹介します。

誰を研修へ?

勉強会のなかで若手の三人に取材をしました。

「君達はいままでの仕事から離れて婚礼営業の仕事を始めるわけですが、今後の仕事については何か心配事や不満、意見はありますか?」

A君「特別にはありません。いままでも上司にいわれたことはちゃんとやってます。しかし、自分は営業に向いてないと思います」と元気なく答えました。

B君「いままではサービスと後片付けと準備の仕事だけでしたから、お客様とあまり話せませんでした。これからが楽しみです」

C君「自分は話し下手なのでバンケット担当がいいです」

と、三人それぞれの答えでした。

A君とC君は営業という職種に不安を持っていることが分かりました。そこで総支配人と打ち合わせをして三人のなかで一人を研修に出すことを確認し、誰を出すのかという人選においてはA君を指名しました。

総支配人はA君よりもB君の方がいいのではないかという意見でしたが、

「営業に対してやる気のあるB君は研修に出さなくても大丈夫です。C君ははっきりと営業は嫌だという意思を持っていますので、研修に行きなさいといえば会社を辞めるかもしれません。焦らずに、仕事を通して少しずつ営業の面白さを教えていきます。

A君は自分の価値観で自分なりに仕事をしてきたといっていましたが、その自分なりという価値観を変えないと、婚礼担当者として仕事に対する基本姿勢ができません。彼を研修に行かせて、お客様に満足の提供、お客様中心の考え方という価値観に変えさせましょう」

「本当に変わりますか?」と総支配人。

「大丈夫です、朱に交われば赤くなるといい、環境が人を創ることもあります。そしてA君が変われば残る二人も変わっていきますよ。更に、変わっていく若いスタッフをみて、先輩達が変わっていく可能性もあります」と確認してA君を1ヵ月の研修に送り出しました。

A君は研修に行き、ホテルに残るスタッフは勉強を続けます。残った現場のスタッフの成長と変化がないと、研修を終えて帰ってきたA君との間に仕事に対する考え方や取り組み方にギャップが出て、成長したA君がやる気を失いかねません。つまり総支配人はじめ研修に行かないメンバーのA君を上回る成長が大事なのです。それを総支配人と確認して、残ったスタッフに指導しました。

トップの変化が周りを変えていきますので、特に総支配人を指導してA君が研修に出てからすぐに動いてもらいました。

励ましの実践

総支配人には、研修先の責任者に連絡してA君の状況などを確認してもらいました。A君の状況を確認したなら、その様子を残っている全員に知らせることなどを実践してもらいました。しばらくすると総支配人の報告がありました。

「研修先に電話で聞きましたら、A君は慣れない場所で一生懸命頑張っているということでした。そしてA君に手紙を書いていたら、いままでこんなに社員のことを思ったことはなかったと気がつきました。いや、本当に自分のことを反省しました」と、社員に対する関わり方に新しい気づきがあったようです。

総支配人からの手紙に、すぐにA君から返事がきました。手紙には研修先の様子が書かれてあり、「こちらの様子を見て、いままで自分が自分なりに仕事をしてきたという考え方はいかに自分勝手な思い込みだったか、自分の仕事量が少なかった」など自分を見直す気づきが綴られていました。

総支配人は、その手紙の内容をすぐに営業部全員に伝え「A君はこのように見知らぬ場所で、慣れない人間環境のなかで頑張っている。残った我々もA君に負けないように頑張ろう。そして彼が帰って来た時にはA君もビックリするような結果を出していようじゃないか」との提案と激励をしました。

それからは総支配人にはA君の頑張りや、総支配人としてのいままでの反省や、今後の話をB君とC君にしてもらいました。仕事が一段落してからの定期的な懇親の場面は若いスタッフとの一体感を創ることに役立ちました。そのなかで、二人からもA君に激励の手紙を書くよう提案していただきました。二人はその提案を受けて、研修中に何度かA君に手紙を書いて送り、激励しました。

研修から帰ってきたスタッフの変化

総支配人に対するA君からの報告はその後も毎週届きました。その報告は営業部にすぐに報告されます。その報告を通してB君やC君は良いライバル意識を持ち、積極的に営業活動に励むようになりました。

総支配人はそのような変化を見て喜ぶと共に、自分がいままで社員の育成に真剣に取り組んでこなかったことを反省して、若いスタッフにそれまで以上に関わり、更には先輩組にも積極的に関わるようになりました。

やがて1ヵ月の研修が終わり、A君が戻ってきました。その仕事意識ががらっと変わったA君の成長に皆、一様に驚きましたが、A君も総支配人をはじめとした先輩やB君、C君が以前より明るく元気なことに驚いていました。その後、ホテルは営業部が活性化したことに伴い、婚礼の組数や売上は上昇していきました。

改装では変えられなかった結果が変化することを見た総支配人は「数字という結果を変えるには、具体的な方法や設備を変えるのが先ではない。まず人間という原因が変わらないと結果は変わらない」という確信を得たのでした。特に中心者である自分の変化が最も大事なことであると深く自分に言い聞かせていました。

アンリミテッド創立者曰く

人間は人間の中で磨かれていく!

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