組織を強くするための〝2つ〟の実践―会議と情報共有のポイント

強い組織力や固い団結力は、企業間競争において大事な戦う力となります。スポーツの世界では、体力面で海外選手に劣る日本人は、組織的な戦い方や協力し合っての戦術の進め方が上手いと言われます。経済活動においても同じことが言えるのではないでしょか。
今回は競争激しい経済界にあって、成否の重要なファクターとなりえる組織力について2つの角度から考えてみたいと思います。先ず一つ目は、どの会社でも行われている会議の有意義な行い方についてです。
集まりたいと思われる会議つくること
昨今のIT技術の発達により、いまでは遠隔地にいながらにして会議に参加できるようになりました。コロナ禍によってリモートでの取り組みが加速したともいわれています。リアルからリモートへの変化はあっても「人が集まる」という会議の本質は変わることはありません。
大事なのは「集まる/会えるのは楽しい」ということです。ところが実際には「また会議で難しい話か・・・」「また会議で絞られるのか・・・」と嫌な思いを覚悟して参加するケースが多いのも確かでしょう。それは会議の本質が、成果主義による『責める場』『問いただす機会』になってしまっている場合が多いからではないでしょうか。
会議のベースは信頼関係
では、「集まるのが楽しい」という会議にするには何が必要なのでしょうか。それには「仕事や業務の前に〝人間〟がいる」ことをリーダーがしっかりと認識することだと考えます。忙しい繁忙期であっても、業務の合間に部下の悩み事や体調を心配し気を配れるリーダーであれば、参加者も協力的な気持ちで会議に臨むものです。逆に、成果主義で努力の量や角度を追求し責めたてるような会議だと、皆は一見やる気を出しているようでも、本当のやる気は萎えていってしまうものです。
望ましい会議とは、皆が前向きに、且つ積極的に行動できるようにするための場です。いくつかの例をだせば、現場の問題点や改善提案が交わされたり、提案に対する率直な意見がでたり、新しい企画提案がだされたりとするのではないでしょうか。
そうした望ましい会議をするためにまず大切なことは、リーダーと会議に参加する一人ひとりが信頼関係で結ばれていることです。たとえば、議題に関して、自分の意見が通らなくてもリーダーとの信頼関係があれば、よほどのことがない限り、リーダーの意思決定に協力的になってくれるものです。
「集合」と「離散」
会議をより有意義なものとするには、会議という「集合」のシーンのほかに、会議の場以外でも個々人と話し合い、意見を聞く機会(離散)での行動が大切です。
たとえば、日本人的な気質からすると、上司や大勢の前で自分の意見を堂々と述べるのは苦手な人も多いでしょう。会議の後になって「実は自分は反対だった」という人が出てきてしまいます。それは組織上、良いことではありません。
そうした心の機微を分かっているからこそ、会議とは別の場での一対一の対話が重要になります。それが「離散」です。
議題に出そうと思っていることに関して、各人がどのような意見や思いを持っているかを知ったうえで会議に臨み、会議後には、決定事項や提案事項に対してどのような意見や思いがあるのか、つぶさに知るように務めることです。そうして、状況に合わせて説得をしたり、理解を求めたり、思いを受け止めたりとするのです。
また、会議そのものにも工夫が必要です。冒頭のアイスブレイクが全てと語るリーダーも居ますし、たまに茶菓子に凝って話題性を出したり、早めに切り上げて皆に仕事以外の雑談の時間を作ってあげるなど、ちょっとした工夫をするのも大事なことです。会議は決して苦痛でないと感じてもらうことも、本題の業務推進に影響があると感じます。一人ひとりが積極的になれる会議を実現してこそ、会社組織の活性化につながります。ぜひ、今日から実践してみてください。
次に、組織に大切なもう一つの視点として「情報の共有」についてお話したいと思います。
情報の正しい共有が組織を強くする
強い組織を作る上では情報の共有はキーポイントとなります。一般に〝仲間〟といえば、同じ組織に属している人を指すことが多いでしょう。しかし〝本当の〟仲間とは、同じ目的に向かいお互いに補い合い協力し合う関係であると考えます。そのためには、情報が正しく共有されていることが大切です。
同じ会社のスタッフであっても、情報の共有がなされていなければ、心が離れてしまうケースがあります。往々にして企業の内部では、「私は知らなかった」「聞いてない」「言ってなかったか、ごめん」等々と、共有されるべき情報を一部のスタッフが知らなかったり、現場の出来事をリーダーだけが知らされなかったり、あるいは、セクション間での情報交換がなされていなかったりと、情報の共有がなされていないことはよくあることです。
他にも、決して悪気はないにせよ「余計な情報を知らせると、かえってスタッフの不安が増す」など、もっともらしい理由をつけて情報を遮断することはよくあることです。
しかし、そうした些細なところから、人は疎外感や距離を感じてしまうのではないでしょうか。そして、結局は、都合の良い時は仲間で、都合の悪い時は労使関係や上下関係になってしまうという印象を持たれてしまうのです。
つまり、正しい情報の共有とは『仲間を仲間として遇し、同志を同志として待遇する』ということです。単なる方法論としての『情報の共有』ではなく、仲間を仲間として遇するリーダーの本気の思いが問われているのです。
優れたリーダーとは
『優れたリーダーは、敵をも味方にし、並のリーダーは、味方を味方として、敵を敵とする、そして、愚かなリーダーは、味方をも敵にする』。
たとえば取引先は、本来は仲間です。ところが、取引先に対して、業績不振を隠そうとしたり、業績に触れる話題を避けたり、あるいは食中毒などの事件や事故の情報を遮断しようとすることは、現実的にこれまでも見られたことだと思います。
ある社長は、支払を溜めてしまっていた仕入れ先に対し、経営状態をつぶさに公開した上で、今後の利益計画と支払計画を説明し、本気で目指している経営理念や信念、展望を語りました。経営状態は決して思わしくない状態でしたが、その誠実な対応に感動したその取引先はそれまで以上に協力的になり、最終的には、取引先の様々な協力のもと業績を伸ばすことができた企業様もありました。支払いの滞納も計画より早くに通常の状態に戻ったそうです。仲間として情報を公開し、尚且つ、誠実で真摯な対応が取引先を強力な仲間にしたわけです。
こうした『仲間を仲間として遇する』対応は、時として敵をも味方にすることがあります。地域の会合などで競合他社と顔を会わせることがあると思います。ある社長は、競合他社に、良い商品を扱う仕入れ先など様々な情報を教えたことがありました。それは、同じ業種で地域の方々のお役に立つことを目指す仲間としての対応でした。するとその競合他社は『共によくなろう』という社長の思いと隠し立てしない誠実な対応に『貴社にはとてもかなわない。人気があるわけだ』と感動し、その後、顧客の要望に応えられない時にはその社長の会社を薦めるようになったとのこと。
こうした事例は稀なことだとしても、せめて、今いる仲間に情報の共有を怠り、空しい思いをさせないようにしたいものです。
まとめ
今回は、強固な組織を作るためのポイントとして、「会議」と「情報共有」との2つの角度から考えてきました。
「会議」では、参加者との信頼関係と一人ひとりの状態や考えを知ることが大事になります。また、会議の目的でもある「情報共有」においては、上司と部下といった関係性を越えた仲間として遇する平等感とも言えるリーダーのマインドがポイントと申し上げました。
一人ひとりが前向きに目の前の課題や現実の厳しさに立ち向かって、結果として勝利できるよう、リーダーの配慮が最重要だと私たちは考えています。
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