人材の確保、定着のためにリーダーが気を付けたいポイントとは?

人材確保そして定着は少子高齢化の進む日本の企業において最重要課題となっています。多くの企業がよりよい人材を集めるために、また定着してもらうために、いろいろな施策を必死に取り組んでいます。しかし、募集しても期待した人材がこないという声はよく耳にすることです。すると求人広告をした媒体が悪かったのではないか、募集の条件が大手と比べて良くないので希望者が集まらないのではないか等々と考えることもあることでしょう。また、ウェブ上の専門サイトや人材サービス、或いはハローワークなどに条件面で魅力的な募集をだしたところで、実際の仕事現場の実態(雰囲気、人間関係等)が悪いとしたならば、スタッフの出入りが激しくなるばかりで結局は定着しません。どうしたならば、採用、定着と有効な手が打てるのでしょうか?
採用フェーズにおけるポイント
企業側から見ると働いてもらいたいスタッフを選ぶ・・・との見え方になる訳ですが、一方で、相手(働く側)も会社を選んでいるという事実に気が付かなければなりません。募集をかけても人が来ない、または、来たとしても定着しない現実が続いているとしたならば、もしかすると本質的な課題があるからではないでしょうか。
よきリーダーのもとによき人材は集まるということ
ここでいう本質的な課題とは、企業としての『魅力』です。そして、どういうところに魅力を感じるのかは、人それぞれです。〝類は友を呼ぶ〞ということわざがあるように、一つの考え方として、謙虚で向上心溢れるリーダーの周りには、そのような人たちが集まり、自分勝手なリーダーのもとには会社のことよりも自分のことを優先する人たちが集まる傾向があります。端的に言えば、よきリーダーのもとには、自然とよき人材が集まってくるということを、まず最初に認識しておきたいと思います。
先ずは人間性を最重要視した採用を
次に会社側とすれば、どのような人材を求めるのがよいのでしょうか。結論からいえば、人間性あるいは人格を最重要視するべきと考えます。キャリアも能力もあり学歴も申しぶんない人でも、たとえば、人に不快な思いをさせる言動が多かったり、極めて自己中心的であったり、自分の欲望のために不正を働いたりと、人格的に欠落があったならばどうでしょう。むしろ平凡にみえてもやる気があり、何事にも誠実に取り組む人物の方が長い目で見れば大きな貢献を果たすのではないでしょうか。
そして大事なことは入社後の育成です。社員は資産であり、会社の売上と利益のために頑張ってくれる存在という考えがベースにあれば、与えた仕事に対する能力で一面的な評価となりがちです。そうではなく「この社員はどんな個性をもち、何が得意で、どのような長所があるのか」との一人ひとりの特質や長所を大切にする視点でスタッフを見る。そして、それを活かすには自分(リーダー)はどうあるべきか、企業はどんな体制をつくる必要があるのかを熟慮するのです。
それができてこそ初めて、よい人材が採用でき、育つ地盤ができて、よい人材がよい人材を呼ぶという好循環が生まれてくるものと考えます。
定着フェーズに気を付けたいポイント
トップリーダーが、新手や改善点などスタッフに指示を出す。ところが、スタッフはなかなか動かない、あるいは、期待通りにいかないことがあります。どうしたら、スタッフは自分の意を汲み取り、思うように動いてくれるのか・・・と多くの場合、スタッフの能力不足や価値観の違い、信頼関係等々を問題として捉えるのではないでしょうか。
人は思い通りには動かないものとの捉え方
そもそも人を思い通りにすることは出来るものでしょうか?一番身近な家族でさえ思い通りにするのは難しく、その手前の自分自身すら思うようにできないことが多いのではないでしょうか。まして、スタッフを思い通りにすることは極めて難しいことです。
仮に、スタッフ全員がリーダーの指示通りに動くとしても、それは、言われたことしかしない、余計なことはしない、等々の消極的な考え方に通じ、また、些細なことでもリーダーの決済を仰ぐといった、受動的な姿勢にも繋がります。
ある優れたリーダーの方に話を聞いたことが有りますが、その方は、方向性と大事なポイントだけを教え、「あとは自分でよく考えてやりなさい」というのを守っているそうです。それに対し、「考えを教えて欲しい」と聞かれるそうですが、「○○は○○らしくやりなさい」とそのリーダーは答えるだけでした。結論から言えば、理想とする組織は、スタッフ一人ひとりが、リーダーの指し示す方向性(目的やテーマ)に向かい、それぞれの発想や感性を活かし、多様性に満ち、それぞれの個性が発揮される組織だと思います。つまり、一人ひとりの〝らしさ〟や〝個性〟を重んじる人間尊重の哲学です。
(合わせて読みたい:若手社員を早期戦力化を実現ー中小企業が取り組むべき新入・若手社員育成の方策とは)
リーダーは人間尊重の考え(哲学)を持とう
とはいえ、現実現場を見て、リーダーとしては首をかしげたくなることも多々あります。スタッフの意向を確認し、方向性に間違いがあれば修正することも必要ですし、スタッフを尊重したうえで、様々な形で気づきを促すことも必要です。大事なことは、スタッフが思い通りにいかないと嘆くよりも、今一度、人間尊重の哲学に立ち返ることです。
人間尊重の哲学とは、長所・短所、向き不向き、成長の遅い早い等々があるにせよ、スタッフに優劣はなく、一人ひとりが偉大な可能性を持っていると信じる哲学です。スタッフ一人ひとりが、その人でなければ発揮できない素晴らしい個性や役割を持っていると考えます。
けれども実際問題、「あとは自分で考えて自分らしく実行しなさい」と指示したところで、なかなか知恵を出せず実践に結びつかないスタッフもいます。また、的外れな発想のスタッフもいます。
危惧するのは、一人ひとり違うと承知しながらも、スタッフをできる・できないで色分けしたり、それぞれの個性を比較してしまうことです。色分けや比較は、決して、スタッフの定着、成長を育む要因とはならず、かえって、組織の躍動を停滞させる因ともなります。
梅は梅らしく、桜は桜らしくというように、梅と桜とでは、咲き方のみならず、咲く場所、咲く時期も違います。梅と桜とを比較してどちらがよいということではありません。梅は梅で、梅の持ち味を活かし、桜は桜で、桜のよさを楽しむことが大切です。桜に、梅のように早く咲きなさいと言ったところで、無理なことです。
本気のリーダーの元に人材は育まれる
そうした一方で、「そんな悠長なことは言っていられない」という意見もあります。もちろん、経営現場では、優しさだけでなく、厳しさも必要です。問題は、人間尊重の哲学がベースにあるうえでの、優しさや厳しさなのかどうかです。
ただ言えることは、個性を尊重するリーダーのもとに個性豊かな人材が集まり、本気のリーダーのもとに本気のスタッフが集まるようになっているということです。そして、結果として、多様な個性に満ち溢れつつも、リーダーの示す方向性のもと一体となった組織がつくられていくのではないでしょうか。
人間尊重の哲学で大事なことは、長所・短所、向き不向き、遅い早い等々、自分とは違うスタッフの個性を積極的に受け入れる強さです。そして最終的には、スタッフ一人ひとりが個性を発揮して花開くと信じる。それが、一人ひとりを尊重するヒューマニズムの成功哲学です。
≪人材確保・定着に関する参考記事≫
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